第52話 いざ決戦の地へ
「勝ちが決まった状態で俺に回せ」
そう言って加藤は1試合1ゲーム目のダブルスペアを送り出した。
見事な他力本願発言だな。
まあ、加藤は強えから偉そうなこと言ってもいいんだけどね。
いや、やっぱむかつくからダメだ。
「負けが決まった状態で出ることになったときツライからそーゆーこと言うのやめときな。多分、高確立でそうなるんだから」
「「今から試合なのに嫌なこと言うなよ!」」
ダブルスペアに怒られた。
今、俺はどこにいるかというと、選手ベンチにいる。
ホントは選手以外はいてはいけないんですけども、一人で応援席にいるのが淋しかったんですもん。
今日は高橋でも連れてこうと思ってたのに、アイツ断りやがったんですよ。
『お前と休日過ごすくらいなら千羽鶴折ってたほうが楽しいし。しかもバドミントンの応援だろ?勘弁だわ』
なんて言いやがったんですよアイツ。
とりあえずむかついたので
[前略。一目惚れって本当にあるんですね。
放課後、体育館裏で待ってます]
って手紙、下駄箱に入れといた。
わざわざ姉ちゃんに書かせたなかなか完成度の高いやつを。
そんなことより試合だ。
「頑張れよー勝てるように頑張れよー」
「「どんだけいいかげんな応援だよ!?」」
「そんなことねーよ。それなりに勝てば良いかな〜って思ってるよ」
「「応援する気ねえだろ!?超薄っぺらな気持ちだろ!?野田はもうテンション的なもんが下がるから黙ってろ!」」
「いや、俺のおかげでテンションは上がってんじゃん。元気じゃん。騒がしいじゃん」
「「・・・じゃあ試合に向けての集中力とかが減るんだよ!」」
「集中力は“減る”じゃなくて“散る”だろ?」
「「うっせい!揚げ足を取るな!」」
「そんなことより試合だろ?早くいけよ」
「「・・・・戻ってきたら縛ってやる。もがけばもがくほど締め付けが強くなるやつをかけてやる」」
ダブルスペアはコートに入ってった。
・・・・縛ってやる・・・だと?
「その通りだ。お前も一度縛られたことあるだろう?(第何話か参照)やつらが我の忠実なる部下“縄師”だ」
加藤が発言した。
あいつらが縄師だったのか。
あいつらのシンクロ率の高さはなんだ!?
マナカナみたいだったぞ!
まあ、キレの悪いツッコミだったけどな。
「でも縛りの技術は一流だぞ?俺も数えきれないくらいお世話になってる」
なんの世話だよ!
自分が縛ってもらってるのか?
誰かを縛らせてるのか?
「どっちもだ!」
詳しくは聞かねーがやべーだろ!
てかさっきから加藤、俺の心読んでね?声に出してねえぞ?
もしかして俺ってサトラレ!?
「大丈夫だ。野田はサトラレなんかじゃない」
・・・・やっぱ心読まれてるって!
こえーよ!
あ、縄師ペア勝ったようだ。