第39話 諜報活動
今晩の夕食は独りぼっちのおでんでした。
「増田ってどうなんだろうな」
昼休み、俺、加藤、高橋で弁当を食ってると高橋が藪から棒にそんなことを言ってきた。
増田はトイレに行ってて今この場にいない。
「何が?」
俺は何のことかわからず聞き返した。
「増田ってさ、口下手だけどスポーツ万能だし勉強できるし顔もいいだろ?あと性格もいい。絶対にモテるだろ?・・・なのに彼女とかいないのかな?」
高橋の言う通り増田はさわやかなイケメンだ。三年生が引退してから剣道部の部長もやってる格好良い男だ。山崎さんと話をしても増田は結構モテると聞く。しかし中学から一緒だが浮ついた話は一切聞いたことが無い。
「そういえばそうだな、どーなんだろう・・・・なんかいるような気がしてきた」
加藤もそう言いだした。
・・・さて、今、目の前に増田のケータイがあります。
「野田、お前見ろ」
高橋から命令された。
「イヤだ!」
「汚れ役といえば野田だ。やれ」
加藤からも来た。
ぜってー加藤の方が俺より遥かに汚れてるだろ!
しかしこーゆー事は最初に標的にされたものは逃げられないようになっているんだ。
“自分以外なら誰でもいい”そんなときに発動するチームワークを俺は嫌いだ!
「ばれたとしても俺たちは共犯だからな」
「そこらへんは保障はできないが安心してくれ」
高橋からいいかげんな一言を聞いて、実行に移した。
高校生の“その時楽しけりゃいいじゃん”のテンションなめんな!
増田のケータイを開き、メール画面を開く。
・・・・
えりちゃん
えりちゃん
えりちゃん
えりちゃん
えりちゃん
・
・
・
なんと!?
えりちゃんという女性とのメールのやり取りが大量にあった。
どっかで聞いたことあるような名前だな・・・何だったかな。
「隊長!女っ気を発見しました!」
すぐさま高橋と加藤に報告した。
「本当か野田二等兵・・・いや、屯田兵!でかしたぞ。詳細を求む!」
高橋、なんで二等兵から屯田兵に言い換えたんだよ!なんか超ショボそうだろ!
「えりちゃんと登録してある女性とのメール多数アリ!大変仲の良い模様!」
「屯田兵!内容求む!」
加藤まで屯田兵って言いだしたよ。
「無理です!これ以上は私の良心が痛みます!」
「口答えするなあああ!上官の命令は絶対である!」
「私は加藤の部下になった覚えはないであります!」
「そうだ加藤!出しゃばるな!野田の上官はこの私だ!」
「高橋の部下でもないであります!私が仕えるのはこの世で唯一山崎香織さんだけであります!」
「「どさくさに紛れてノロケてんじゃねえええええええ!」」
怒られた・・・・てへっ。
「何俺のケータイ見てんだ?」
増田がトイレから帰ってきた。ケータイはまだ俺の手の中にあった。
「なぜか急に勝手に開いたと思ったら次の瞬間なぜか俺の手のうえに乗ってたんだよね。増田のケータイすげえな!」
考えることもめんどくさくなったような嘘をついた。もう嘘というか戯言だな。
「バカかよ。なんか見たか?」
「何も見てないっす。なあ?」
高橋と加藤に同意を求めた。
「いや、俺はしらんよ?見てたのは野田だけやし。なあ加藤?」
「そうやで、俺たちはまだメシ食ってたし。野田が増田のケータイいじってたのも今気付いたし」
コイツら俺を助ける気ぜんぜんない!
なんなのコイツら!
「まあいいや、見られて困るもん入ってないし」
俺は増田にケータイを返した。
「そうだよな!加藤みたいにエロ画像、エロ動画まみれじゃないもんな!」
「野田、俺は別に見られて困ったり恥ずかしかったりしないぞ」
「加藤の意見は聞いてねえ!」
えりちゃんって誰なんだろう?結局わかんなかったな。
「えりって誰?」
って!うおおお!なんてこと聞くんだ高橋!ストレートすぎるだろ!
それに対する増田の答えは・・・・
「・・・妹だけど?知らんかったっけ?」
そうだ!妹だ!だから聞いたことある気がしたんだ!
「妹のことなんて呼ぶ?」
「えりちゃんだけど。なんで急に?」
「なんとなく」
妹の名前、えりちゃんで登録すんなよ。
とりあえず増田に彼女はいねえ。
奴はレベルの高いシスコンだ。
「うちの学校にいるよ」
「「「マジで!?」」」
そういえばフルネームの男キャラ誰もいないな・・・・どうしよう。名前付けるのいまさらかな?