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第37話 学級文庫に潜む罠

部活が休みなので暇です。

「ではホームルームをおわります。さようなら」


そう言って教室からスガさんは出てった。

よっし、今日も部活だ。

水泳は他のスポーツと違って汗の不快感がなくていいね、楽しいし。俺が一番ダメそうだし頑張って泳ごう!


俺は高橋と一緒にプールに向かった。

「俺も連れてってくれ!」

教室を出る瞬間、不意に肩をつかまれた。まあいいや、早くプールに行かなきゃ。

「シカトすんなよ!今日部活ないから俺もプールで泳ぎたいんだよ!」

後ろで何か言ってるが絶対振り向いてやらねー。無視し続けてやる。高橋もそのつもりみたいだ。目線を遠くの方に向けてる。

「準備は出来てるんだ!水着はすでに家から着てきた!ホラッ」

何見せようとしてんだよ。絶対連れてってやらねえからな。

・・・・教室内が騒がしくなった。

「何で上まで脱いでるんだよ!」

「すげー水着だな」

「ちょっと加藤!女子もいるんだから教室で水着一枚になるなよ」

「そんなことよりすげー水着だな」

どんだけすげー水着なんだよ!超見てぇ。

「キャー!加藤くん何で脱いでるの!?」

「気持ちがいいからだ。どうだい?君も脱ぐかい?」

「恥ずかしいわ・・・」

「そんな恥ずかしがるこたぁない。さあ、脱ぎ給え」

「でも・・・・」

「まだそんなことを言っているのかね?君の魂はそんなこと望んではいないだろ?身も心も解放させるんだ。裸とは自由そのものなんだ。完全無欠のフリーダムなんだ。そのクソみたいな羞恥心など捨てなさい。さあ」

「・・・アタシ脱ぎます!見ててください!」

「それでよろしい。なかなかいい身体をしてるじゃあないか。なあみんな」

「あぁ、最高だせ」

「まるで女神さまを見てるようだ」

「陶器のように白い肌だ。なんて綺麗なんだ・・・」

「OH!ジーザス」

「見て!もっとアタシを見て!あんなところやこんなところも隅々まで見て!今までのセコイ考えや価値観が全てぶっ壊れたわ!」

「嫉妬しちゃうなっ、あんないい身体っ」

「うらやまし〜」

「みんなっありがとう!加藤くんのおかげでアタシ変われたわ!」

ヒューヒューとかブラボーとか聞こえる。

カオスすぎる。

でもマジなのか?

マジだったら見ないと一生悔いるぞ。だって裸だぞ。

加藤には圧倒的なカリスマ性で話し相手を洗脳する力を持っている。俺のいなくなった部活がいい例だ。

だからウソだと断定できない。いや、むしろウソであるな!マジであれ!

確認したい・・・めちゃくちゃ振り向きたい。

こんなの生殺しだ。

高橋にアイコンタクトを送るとコクッと頷いた。

よしっ、見るぞ!


せーの!


俺と高橋は同時に凄い勢いで振り向いた!


・・・・・はい、わかってましたよ。裸の女神なんていませんよ。

加藤が黒板に書いたセリフを役にわけて言っていたようだ。

「野田と高橋は振り向きました。皆様ご協力ありがとうごさいます。特に島さんはすばらしかったですよ、書いた自分が言うのもなんですが女の子があんなセリフなんの抵抗もなくよく言えましたね、すばらしい役者魂でした」

「お褒めをいただき光栄です」

裸になる女の子役は島さんだったのか。

島さんすげーな!

島さんは垢抜けたノリのいい女の子で町田や山崎さんと仲がいい。

ノリ良すぎるだろ!

それとこのクラスのチームワークの良さは一体何なんだよ!即興にしては抜群すぎるだろ!

すげーな!



「裸とかそーゆーので振り向いて欲しくなかったな・・・しかも凄い勢いで・・・ちょっとありえないよ」

山崎さん怒ってる?

ヤバい?


「高橋サイテー、マジ幻滅だわ」

高橋も町田に責められてる。


「「だってしょうがないじゃん!」」


俺と高橋は同時に叫んだ。そうだ、しょうがないんだ。裸がいたら見る。これは脊椎反射と同じだ。熱いものを触ってしまい急いで手を引っ込めるのと同じことだ。


「「サイテー!」」


「「ごめんなさい」」


俺たちは弱い。

俺たちの詭弁など彼女らの怒りの前ではなんの意味も持たない。逆に火に油を注ぐようなものだ。


「「ごへんなひゃい」」


「「ちゃんと聞こえない!」」

俺は山崎さんに、高橋は町田にほっぺたをすんげえ引っ張られている。

「「ごへんなひゃい」」

「「ちゃんとごめんなさいって言いなさい!」」

無理だ!マジ理不尽だ!


それに耐え切れず高橋は町田の手を払い反論した。

「山崎さんはわかるよ。彼氏があんな行動したら怒りたくなるよ。でもなんで町田が俺に怒るんだよ!」


高橋ッそれを言っちゃダメだ!

町田は高橋の両頬をつねりあげた。

超痛そーだ、つねられてるとこが赤を通り越して白くなってるもの。

痛みに顔を歪めてる高橋に町田はこう言った。

「学級文庫って言って」

「・・・学級うんこ」

「ふざけないで!真面目に言うまで続けるから」

「学級うんこ」

「違うでしょ!」

こえー!鬼畜だ!




いつのまにか山崎さんは俺のほっぺたから手を放してた。罰は済んだようだ。山崎さんは握力が弱いのか、全然痛くなかった。

「先にプール行こうか」

「そうだねっ」


学級うんこを続けてる高橋と町田をおいて先に行くことにした。



後ろから加藤がついてきてるのは無視しよう。


友人にからくりサーカスを否定された!ありえん!最強に大好きなマンガなのに!

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