第36話 どうせなら魚人より人魚
土曜日なのになんで学校あるんだ!
ついにこの日が来た。
志してから一ヵ月、ビミョーに短い道程だった。あんまり努力とかしなかったな。
要領がいいんだな。天才だから。
プール開きだ!
プールは一週間愚民共(運動部の連中)を働かせ、隅々まで綺麗になった。
天気もいい、六月に入ったということで水温もまあまあ。絶好のプール開き日和だ。
「高橋、なんかやる気感じられる水着だな」
「そうか?」
「うん、ビンビンと」
俺と高橋は女子より先にプールサイドに行って準備体操中。
高橋は太ももまであるピチピチの水着を着ていた。
なかなか本格的でこれから水泳部として頑張っていこうと言う心構えが感じられ、部長としてはうれしいかぎりだ。
「それより野田はなんで海パンなんだよ。俺が恥ずかしいじゃねえか」
「いいじゃん、いかにも『俺速いですよ』って感じがして」
「そーゆー言い方やめろ!もっとハズイだろ。野田だってなんで海パンなんだよ!遊ぶ気満々ですか!?」
「だってまだ買ってないもん、だってどんなの買えばいいかわかんないんだもん」
俺はレジャー用の半ズボンタイプの海パンを穿いてきた。
これでも部長やってます。
やっぱ女子は着替えに時間がかかる。いっそのこと男子と同じ水着にすれば着替えも早くなるんじゃないか?
ぜひそうすべきだ!
そんな全男子が一度は考えたことのあるような逆転の発想を頭の中で思ってたら山崎さんたち来ました。
「やっと泳げるねー!うれしーね」
競泳水着を着た低身長ロリ顔巨乳さんが言ってきた。すっげえうれしそうだ。
「うれしーね」
それにしてもやっぱボインちゃんだ。
しかもお肌が・・・乳もヤバいが脚も相当破壊力もってるぞ。太ももってすげーなっ。
気を抜いたら俺の息子がウソップみたいになっちまうよ。
「高橋、やる気感じられていいね〜。」
町田の声で我に返った。
「そういう町田だってしっかり競泳水着じゃん」
「せっかくだから香織に聞いてちゃんとしたやつ買ったんだよ」
町田は細い長い。さすが大林素子だ。
「俺もそうだよ。てかそれが普通だよな、野田はいいかげんすぎるんだよ」
「そうだよ!野田くんは遊びに来たのかい?」
「しょうがないじゃん!俺みたいなのが競泳水着買うなんて店員に内心バカにされそうで恐くてどんなの買っていいか聞けなかったんだから!」
「被害妄想だろ」
「ひっどい被害妄想だね」
そんなことより
「武さんはスクール水着なんだね・・・」
武さんは胸の辺りに白い布で“3ーC武”と書いてあるスクール水着を着ていた。
定番中の定番、これぞスク水だと言わんばかりのキングオブスクール水着だった。
これはそーゆーフェチには堪らないんだろうな。って感じだ。
それほどに武さんのスク水姿は違和感がなかった。
「昨日、中学の部活で使ってた水着探したら見つかんなかったの」
「そうなんだ」
いかん、笑える。期待を裏切らねえ。武さん、スク水似合いすぎだろっ。
「笑ったら殺す。家族共々殺す」
こわっ!
その後顧問の土屋先生来て指示を出した。
今日はとりあえず皆がどれほど泳げるか見るようだ。
聞いてはいたが山崎さんすっげえ速いな。他のスポーツはダメなのに本当に水泳だけは得意なんだな。クロールなのが惜しいけど・・・バタフライが見たいな〜。
マーメイド山崎って二つ名はどうだろうか?
武さんも華奢な身体でスイスイと泳ぐ。かなり速いんじゃないかな。
この二人は素人目からしても超速いってことはわかる。
高橋と町田は今まで特別に練習をしてなかったわりにはかなり泳げる方だと思う。これはやっぱりもともとの運動神経の良さだろう。
練習すればグンッと速くなると思う。
「君は泳がないのかね?」
隣で土屋先生が聞いてきた。
「そのつもりですが」
「ダメです泳ぎなさい」
「なぜ泳がないといけないのですか?」
「水泳部だからです。しかも君は部長でしょう?こんなことありえないと思うけどもしかしてカナヅチってことはないよね?」
「それはないです」
「では泳いで来なさいよ」
「俺は皆に比べてしょぼすぎるからイヤです。今日は皆の様子を見ていたいです。」
「ダメ。それに君の実力も知っておかないといけないでしょ?」
「・・・わかりました・・・先生は泳がないんですか?」
「私は結婚して夫以外の人には肌を見せないって決めたからだめなの」
「なんすかそれ?」
「いいから泳いで来なさい」
「はーい。アイちゃん、行ってきますっ」
俺は妙に貞操意識の強い人妻教師に見送られプールに飛び込んだ!
・・・・・
人妻いわく、山崎さんと武さんは県ぐらいなら上位入賞の実力らしい。
すげーな!
高橋と町田もなかなかこれから期待が出来るらしい。
俺はというと、とりあえず泳げないわけではないということでホッとされた。
どーゆー意味だ!俺は部長だぞ!
水泳の後って眠いねぇ。