第1話 二度寝のススメ
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すごい夢を見た。
加藤鷹が国の無形文化財に選ばれてた。
日本は加藤鷹のテクニックを認めたんだ。
その授賞式で実演すると言って女性司会者を自分の方へ抱き寄せる鷹。そしてまんざらではない表情の女性司会者。
なにかが始まってしまう!
そう思った瞬間、目が覚めた。俺が出てないじゃないか。
「まだこんな時間か。眠い、寒い。」
携帯の時計を見たら5時半、あと一時間は寝れるじゃないかということでまた寝た。夢の続きは別にいらない。もっと他のシチュエーションを見せてくれ。次はちゃんと俺が出てくるやつを頼む。
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「やっべえ!寝過ごしたっ!」
二度目の睡眠があだとなった。顔洗って歯磨いて制服着て母ちゃんにおはよう。
これまでに所用時間10分もかかってない。髪型とかにも無頓着な俺は朝の身仕度が早い。
俺は姉ちゃんが作った弁当を持ってダッシュで家を出た。
「ドンッ!」角を曲がったおれは急いでいたせいか前方不注意で誰かとぶつかってしまった。
「いったーい!あぶないじゃない!」
よりにもよって女の子とぶつかってしまったようだ。それにしてもこの子、トーストをくわえたまま家を出てきたのだろうか。彼女の足元には食パンが落ちていた。
「おまえだって食パンなんか食いながら走ってるからぶつかるんだよ!」
「うるさいわねっ!朝、食べる時間がなくてしょうがなかったのよ。ってもうこんな時間!学校に遅れちゃうっ!転校初日なのにー」
女の子は走って行ってしまった。なんて足が速いのだろう、もう見えなくなっていた。おれも学校に遅れてしまう。おれも急いで学校にむかった。
朝のホームルームにはぎりぎり間に合った。おれが自分の席に座った直後担任の菅井先生、通称スガさんが教室に入ってきた。
「早く席にすわれよ。転校生の紹介をするから」
教室内がこれ以上ないくらい騒がしくなった。スガさん、当日まで俺たちに転校生の事なんて黙っていた。
生徒達に素敵なサプライズを!
そんなつもりだったのだろうが、その発表の声の抑揚の無さハンパねえよ。盛り上げたかったらもうちょい頑張ろうな。
スガさんは不器用な奴だ。かわいらしいっ!おっさんやけど。
そして廊下で待機していただろうその転校生が扉を開け教室にはいってきた。女の子だった。そしてみたことがあった。さっき。
「今日からみんなと勉強することになった山崎さんです」
「山崎香織です。よろしくおねがいします」
そう言ってクラス全体を見渡した彼女はおれと目が合った。
「あー!あんたはさっきのっ!なんでここにいるのよっ!」
おれも負けじとと言い返す。
「おまえこそなんでこんなとこにいるんだよ!」
ギャーギャー不毛な言い合いを続ける俺たち。
「なんだ、おまえたち仲良いな。だったら山崎の席は野田の隣でいいな』
おれ達はいろいろ反論したが結局俺の隣に山崎は座ることになってしまった。
・・・・・・・・・・・・照れだよね、照れ。うれしくないはず無いじゃない。スガさん、まじ粋計らいだぜェー!
山崎香織さん!教科書なら見せてやるぜェー!
弁当忘れたときも俺のやつ見せてやるぜェー!
おかずはやらないけどなッッ!
浮かれまくってました。
夢でした。
やばすぎだろ