第123話 野田くん
運動音痴、方向音痴、音痴(歌下手)。見事、音痴三冠王。
しかも勉強が出来る訳じゃないし、忘れ物多いし、だらし無い。
馬鹿だしエッチだし口だけ達者。
顔が良いわけでもなく、背が高いわけでもなく…………ちっちゃいし、ほとんど無毛だし。
でもね、そんな君に魅力されまくってるんだよ、野田くんっ。
『チューしていいかい?』
いやんっ。
『チューしていいかい?』
いやんいやんっ。
『チューしていいかい?』
いやんいやんいやんっ……
私って変な奴。
でも浮かれて良いよね?
別に野田くんのあの台詞、復唱しまくってもいいよね?
なんか凄く唐突だったなぁ。
それが野田くんっぽかったけどね。
『私、野田くんのこと羨ましく思ってるんだよ?』
『何で!?夏休みの宿題がもう既に終わってるような君が何で俺なんて羨ましくなる!?』
『……野田くんはすぐに思ったことを口にするよね。そーゆーところがいいなぁって』
『何で!まだ一ページも宿題初めてないんだよ俺!』
『いや、宿題は関係ないから……』
こんな会話もしたなぁ。
野田くんは自分の事を情けない、だらし無い、カッコ悪い、ダメな奴だと思ってるけどそんなことないよ。
私は君のイイトコ見つけまくってるよ。
本当に私は野田くんの事を尊敬してるんです。
確かにカッコイイ人じゃないかもしれない。何をやってもビシッと決まらない人かもしれない。
長所は?と聞かれたらパッと答えられないかもしれない。
現に私も、女友達に野田くんのどこが良いのか聞かれても上手く答えられない。安易に『優しいところ』と言ってしまう。
でもそんな、妙チクリンで弱っちそうな君はいつも皆の中心にいる。
人気者というわけでも無いのに、カリスマ性があるわけでも無いのに、です。
それは野田くんはとても魅力的な方だからです!
みんなは野田くんの魅力に気付きません。気付かず魅了されちゃうんです。
それが出来る人なんです。
そして、野田くんの魅力に気付いてるのは世界で私だけ。
勝手に思ってるだけだけどそれってとても素敵な事だと思う。
野田くんに選ばれたって感じがしますもん。
ふふふ……私は今、世界で一番野田くんを理解している人間だと自負しているよ。
てれっ……
私ってそーいや野田くんに愛の表現をぶつけた事ってあんまりないよね?
野田くんの方はしょっちゅう超好き、だとか超ビューティフル、だとか恥ずかしげもなくバンバン言ってくるけどね…………
私はこのまま野田くんと結婚したいとか思ってるよ?
気持ち悪いかな?
出会ってまだ半年も経って無いのに重過ぎるかな?引いちゃう?
言うのはやめておこう。
「ママ、野田くんと結婚するかもしれない」
でもママには言います。
「結婚が決まったらまた言いに来てね。どうせ勝手に思ってるだけでしょ?」
ママ冷たい。
ママに見切りを付けて自室に戻った私は机の引き出しの鍵を開けた。
……野田くんの写真も増えたなぁ。ほとんどが加藤くんから買い取った物だけど、何枚か自分で撮ったのもある。
これを知ったらどう思うのかな?気持ち悪がられるかな……いや、野田くんは喜びそうかなっ。ちょっと変態だって加藤くん言ってたしっ。
まあ、秘密にするけどねっ。
会いたいな。
明日暇かな。なんだったら今からでもいいですけどもっ。
電話来ないかな。
次話でラストになる予定です