第121話 ぼんやり
まさかの展開が楽しいのですが……
名前まだわかんないよ。
皆と別れて彼女を家まで送るとこですが……
「へぇー、高橋くんの趣味ってアニメなの……」
「うん、はっきり言ってオタクですね俺」
「うわ〜、なんか初めてオタクっての見た。イメージでは違う人種の方って想像してたけどそんなことないんだね〜」
「俺は見た目フツー?」
「言われてみれば細いし長いし……オタクぽいね」
「マジかい。引き締まってると思うんだけど」
「アハハ。でも問題無し!私に問題が無かったら心配無しっす。でも見た目フツーなくせにオタクなのがこの世にひっそりと蔓延ってると思うとこわいね〜」
「なにそのオタクに対する間違った困った解釈」
名前呼ぶことの無いように、自分の事ばっか話してる訳ですが……もうそろそろ違和感出てきてね?
まあ、ぶっちゃけ家に着いたら表札出てるからわかるだろうからいいんだけどね。
とりあえずこれまで一緒にいてみて、この子はやはりあまり頭の賢くない方だと分かった。
そして、ズレてる。というかちょいと不思議ちゃんであるということ。
でも友達ができないような、困ったちゃんではないと思うんだけども。
女子ってわからんね。こわいね。
こんなに可愛い子が俺の彼女か。凄いな。
名前知らんけども。
いや、もう恋人同士なのか?
この子が俺の事を好きらしくて、それが嬉しくて……だって初めてだったんですもの。
でも俺は好きなのか?
嬉しかったら好きなのか?
ぼんやりしまくってるぜ俺!
彼女には悪いけどぼんやりしまくってるぜ!
モヤモヤがモヤモヤしてモヤモヤだぜ!
野田は馬鹿だしその相方も同じレベルですし、加藤なんて論外だろ?
武さんは興味持たないだろうし島さんは不必要に面白がるだろ?
まあ町田に相談するかな。
「あ、私ん家ここ」
彼女が立ち止まった先は…………マンション。
マンションじゃないですか。
「じゃあ後でまたメールするからね〜」
「うん」
「今日はありがとね〜」
「どういたしまして」
「じゃあね〜」
「うん。じゃあ」
表札ないじゃん。
ダメじゃん。
「また遊びに行こうね〜」
「だね」
「次は二人でいこーね〜」
「ねー」
「海行きたいね〜」
「そうだね」
「花火大会とかもいいよね〜」
「いいねえ」
「私のバドミントンの試合も見に来てよね〜」
「ぜひとも。てかまだ喋る?」
「まだいたいな」
「正直やな」
「じゃあうち入る?一人暮らしだし」
「そうなの!?う〜ん。今日はやめとくわ」
なんかおっかねえし。
平気で裸で生活してそうだし。
「わかった。じゃねー!」
「じゃーねー」
あっ、家まで入れば名前分かったんじゃね?
……まあいいか。
いや、けっこー大事な事じゃねえか?
……まあいいか。
………………
「次はカラオケにでも行きますか?」
「いいね。加藤くんの歌声なんて聞いてもしょーがないけど、私も大声出したい」
場所は変わって近所のファミレスで。
いちいち暴言吐くよな、この町田。
文句なんて言わないけど。
そりゃ泣き顔見ちゃったらねぇ。
「あっ!高橋からメール来た!」
「ホントに!?」
「うん!」
急に覇気が出たな。
「きっと町田さんの方がいいって分かったんだよ!俺はこうなることが分かってたね!だってこのタイミングだよ!?」
「そうかなぁ」
やば、今一瞬可愛く見えた。
そんなキャラじゃないだろ町田!
俺は町田のケータイを一緒に見た。
高橋[さっき家に入るよう誘われたんだけど、断って良かったかな!?入った方が良かったかな!?いやー、彼女ってば一人暮らしらしいんですわ!どうなんですか?一応同じ女性としては!?]
……は?
「もうコイツ死んじゃえよ」
「俺もそれが一番いいと思う」
「あ」
……また来たよ。
高橋[もう寝ちゃったか!?では今後とも俺の恋の悩みの相談役としてよろしくね!]
「カラオケ行くのやめてマンガ喫茶にしようか。コナンとか金田一読んでトリックの勉強したほうが今後のためになると思うんだ」
「私もそう思う」
そして俺と町田は立ち上がり、ファミレスから出た。