第110話 ウルトラソウル
映画化してほしい漫画とかアニメってありますか?作者はバガボンドを見たいですねーあとガンツ…………てかソラニンが宮崎あおい主演で映画化らしいです!絶対見なきゃ!……本編とは死ぬほど関係ない事書いてます
「あ、いいこと思い付いた。田中ちょっとこっち来なさい」
今はホームルームの時間、スガさんが田中くんを呼び付けた。
「嫌です」
断った。
「いいからちょっと来なさい」
「嫌です。僕にとって間違いなくいいことでない事はわかってます」
「でも先生にとってはいいことなんです」
「そうでしょうね。なおさら嫌です」
「田中にとってもいいことだと先生は思うぞ?」
「万が一にもそのようなことはないです。今までスガさんと関わって、僕に利益が生まれたことはありません。絶対です。両親の命を賭けてもいいです」
田中くんの高すぎる精神力は何だ!?
てかスガさんのこと虚仮にしすぎだろ。
「じゃあいいです」
スガさん、心折れちゃったよ。
「せっかく手相占いしてあげようと思ったのに……」
ナニソレ?動機が想像を超えてかわいらしいんですけど。
てか田中くんのこと好きすぎだろ。
「生命線の場所教えてやろうと思ったのに……」
程度が低すぎる!
誰だって知っとるわ!
「よし、残りの時間は自習にしなさい。明日から夏休みだ。クラスメート達と思う存分喋ればいいんじゃあないか?会うのが今日で最後になるかも知れないんだから。不幸な事が起きて九月にまた再会することができないかもしれないんだから……」
嫌な事を言うなよ!
「お前達に聞いておかないといけないことがある。どーしても夏休み前に聞かなきゃならんことだ」
加藤が男子を教室の隅に集めて、そう言った。
今回は一応女子も教室にいるんだからえぐい話題はあんまりするなよ?するとしても騒ぐなよ?
「正直に答えろ。お前ら全員……童貞だよな?」
なんで今?
「出会いと誘惑の夏休みが過ぎたらどーなってるかわからんだろ?だから今聞いておかなきゃな」
なるほど。
「見栄張って嘘つくなよ?そんなの自分が悲しいだけだからな。逆に童貞じゃないのに黙ってるのも許さんからな?それは俺達を侮辱する行為だ。正直に答えない者には法を犯すほどのペナルティを受けてもらう」
超怖ぇよ!
犯罪者になる覚悟が出来てるのか、この男は!?
「ちなみに俺は既に完全犯罪を思い付いている。一人っ子なら自身に降り懸かるが、姉や妹がいるならそっちに気をつけたほうがいいだろう」……加藤に逆らう気のある奴なんていない!
てかどんだけ知りたいんだよ!
「では改めて聞く。童貞でない者は手を挙げてくれ」
天に向かって二つの腕が生えた。
マジでぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!
「「「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」」」
みなさん、仲良く叫んだ。
侮っていた。いくらここが田舎の高校だと言っても流石に高校生ッッ乳繰り合い経験者はいたか!
そうだよな……零ってことはないよな。それはそれで問題だよな。
天に昇っていった神々しさすら感じられる腕の主は……水野と、田中くん!?
「水野、そうなのか?……いつ?」
加藤は恐る恐る聞いた。
「日時まで聞くのかよ加藤!」
「あぁ、そうだな。悪い、そこまではいい。でも相手はあの彼女だろ?」水野の彼女って、トゲトゲの実の能力者だろ?見たことないけど。
「はい、そうです……っ」
照れてるな。そりゃそうか。
「よしっ、水野は後で皆で殴るとして……田中くんもそうなのかい?」
水野は後で殴るとして、田中くんがそうであるのは意外だった。
今まで一ミリも女っ気のある話は聞いたことがない。
「うん」
肯定した。……どこと無く元気がないようだが?
「よかったら聞いてくれるか?実はずっと話したかったんだ」
田中くんは自分からそう言って、話し出した。
田中くんのその様子から、俺達は全員静かに話を聞いた。
「僕の相手は……僕は中三だったから五歳年上だね。
その女の人は大学生で僕の家庭教師だったんだ。
そのころの僕は全く勉強が出来なくて、母親が雇った個人の家庭教師だったんだけどね。綺麗で優しくて教え方も丁寧で僕はその人が好きになったんだ。
でも、ある日の勉強中、急にその人が僕を襲って来たんだ。
僕の上に乗って、僕の服を脱がして、自分も服を脱いで……その時、わかったんだ。僕がその人に抱いていたのはただの憧れであって、本当の意味での恋心ではないってことを……
僕は色んな感情がぐちゃぐちゃになって頭が真っ白になって動けなくなったんだ。
初めてのセックスは全然気持ち良くなかった。
その後、その人は僕の前から去っていきました。これが僕の初体験の話です」
どう反応すればいい?
「マ、マジかい?」
おっ、加藤が聞いた。
流石の加藤もビビってやがる。そりゃ同級生から逆レイプの話聞かされたら誰だってビビるわな。
嘘であれ!嘘と言ってくれ!
「本当です。先月にも『あなたの子供がこんなに大きくなりました』って書いてある手紙が写真と共に送られてきました」
…………重過ぎるだろ。
病んでるじゃあないか。
「だから僕は一生懸命勉強して、いい大学入って、そこでも頑張って勉強して、一流と言われる企業に就職して、その人と子供と幸せに暮らすんだ」
…………え?
「その人のこと許したの?」
俺は思わず聞いた。
「その人とは僕が十八歳になったら結婚する約束をしてるよ。その人は異常だけど僕と僕達の赤ちゃんに対する愛だけは絶対だから。僕の事は絶対に裏切らない。物凄い愛だってことがわかったんだ。そう理解出来たら、僕にとってもその人は掛け替えのない人になったんだ。その人じゃないと僕も駄目なんじゃないかと思うんだ。だから僕の方から求婚したんだよ」
この圧倒的な精神力は一体なんなんだ!?
田中くんは何者なんだ!?
「このクラスの皆になら喋ってもいいかな、って思ったんだ。聞いてくれてありがとう」
嬉しいこと言ってくれるが……俺達には刺激が強すぎたぜ。田中くんと俺達とでは次元が違うんだな。
子持ちの同級生ってどうよ?
今まで“軽くドラマチック”を意識して物語作ってきたのに……“この程度の事なら現実にも起こる”な話を書いてきたのに……