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第105話 黄金の精神

すっげぇグダグダな…

「ライオンの赤ちゃんはライオンではない!そうは思わんか!?」



汗と制汗スプレーの充満した教室で加藤が声を上げた。

今は体育後着替えの時間、もちろん女子はいない。

久しぶりの……エンペラータイム発動!


今回は加藤、なんだか哲学的だな。やることは結局いつもと一緒だろうけどね。



「それはとんちか何かか?」

俺はそう尋ねた。が、加藤がそんなもん言う訳無いことなどわかっている。


「愚問だな。俺がそんな質問すると思うか?野田、テメェはくだらねぇ事しか言えねえのか。黙ってろ。教室の隅にでもいってろ」

ほらみろ。でも言い過ぎじゃね?


「ライオンってのは何だ?ライオンとは“百獣の王”。最強だ。強さそのものの象徴みたいな奴だ。見るからに強靭そうな四肢。全てを引き裂き屠り去るであろう凶悪な爪と牙。そしてそのプライドの高さを現したかのような威風堂々たるタテガミ。強さの塊みたいな存在だ。そうだろ?」


「まあ、そうだな」

俺は答える。他の奴らもうんうん、と頷く。


「それがライオンの赤ちゃんはどうだい?くるくるとした大きな瞳。汚れの知らないふわっふわの猫毛。目まぐるしくころころ変わる表情。全てが愛くるしいじゃあないか!テレビの動物番組でも可愛がられてるのをよく見るだろ?どうだ?ライオンの赤ちゃんは前述したライオンの荒々しさ、雄々しさなど少しも感じられない。これでも赤ちゃんはライオンだと言えるのか?」


皆、言ってることの八割はわかってないような顔をしてる。俺もわかんねぇ。


「生物学的な話をしてるわけじゃないことはわかるよな。生物学的に言えばライオンの赤ちゃんはライオンだ。それは間違いねぇ。さすがの俺でもその事実をねじ曲げることは出来ん」


さすがの加藤でも出来ないらしい。さすがの俺でもそんなことはわかってる。


「俺が言ってるのは概念だ。精神で理解するんだ。知識や脳みそで理解するもんじゃねえんだよ。心で感じるんだよ!」


加藤は自分の胸をグーで叩き、叫んだ。

不思議とライオンとライオンの赤ちゃんは別物に思えてくる。そんなわけないのに……これが加藤なんだよな。


「さて、前置きが随分長くなっちゃったな。つまり俺が言いたい事は、心の持ちようで物事は違う視点で見れるって事だ」


「ちょっとまだ言ってる事の意味がわかんないんだが?」

俺は正直に聞いた。多分他にもわかってない奴がいるだろうし。


「しょうがねぇな。じゃあ実例を出すぞ。めちゃくちゃわかりやすいからな。これでわからんかったらもうしらん!……お前らは“女”と“母ちゃん”を全くの別物として見てるだろ。完璧に、だ。お前らの中には“母ちゃん”という人種があるだろ?この精神というのはそういうことだ。……どうだ?」



なるほど!まさしく精神論!

まさしく違う見方だ!

「理解できたぜ!」




「よしっでは、この黄金の精神をつかいこなせれるように頑張ってもらいたい。もうちょっと具体例を言ってやる」

「よろしくたのむ!」



「“ワイシャツ”だ。これを聞いて何を思い浮かぶ?…………俺が思うに、二つの見方が出来ると思う」


「エロと萌えの二つか?」


「水野、大正解だ。ではどういうことか野田言ってみろ」


俺かよ。まあ簡単な質問だけどな。

「『パッツンパッツン』したワイシャツ着た女の子がエロくて、『ブカブカ』なワイシャツ着た女の子が萌えるって事だろ?」

これしかねーだろ。


「エクセレント!素晴らしい。大正解だ。…………『パッツンパッツン』はAVとかの巨乳の教師がイメージ出来るはずだ。『ブカブカ』は華奢な女の子が一枚だけ着てるのをイメージ出来るはずだ。どっちも一度は見たことあるだろ?」


「俺は『パッツンパッツン』が好きだな。巨乳×ワイシャツ×眼鏡はエロ過ぎる!」

「俺も!エロ教師はロマンだよな!『二人っきりの課外授業よ』……堪らん!」

「僕は『ブカブカ』だね。設定は同級生な。突然の雨でずぶ濡れになってる同級生を見つけて、仕方ないから我が家に招くんだよ。そんで僕の男物のワイシャツを貸してやるんだよ」

「ベタやな〜『風邪引くからコレに着替えろよ』とか言うんだろ?『○○君のブカブカなんだけど』……堪らんな!」

「俺はそんなにエロに飢えてねえから『ブカブカ』で」

「『ブカブカ』に一票!」

「なんか『パッツンパッツン』派が性欲丸出しみたいじゃねえかよ!」

「そうじゃねえの?やっぱ痴女より清純でしょ」

「乳のラインとか楽しみたいだけだ。痴女とか関係ねぇ!」



こいつらスゲェな。ワイシャツだけでどんだけ討論できるんだよ。


「うちのクラスの『ブカブカ』代表は断トツで武さんだな。そんで『パッツンパッツン』代表は山崎さんかな?でもあの人、背がないから……島さんだな!」


人の彼女がこんな話題に出て来るのはまことに遺憾だが。



「どうだ?同じはずのワイシャツが違うものに見えてくるだろ?こんな広い視野で物事を見ることが出来るようになるんだ。黄金の精神とはこれほど素晴らしいもんだ。皆も普段から使えるようになれば世界が楽しくなるぜ!広い視野で見るんだぞ!……では、精進あるのみ!あばよ!」



今日の講義はこれで終了らしいです。

お付き合いありがとうございます。


来たコメントを見て、それをいっぱい肉付けして作ったお話……ネタがないわけじゃないんです

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