第103話 その後
感慨深いものがあります
「あぁ〜〜北海道に帰りたい」
ただいま、本州。
ただいま、学校。
ただいま、勉強。
どうも、野田です。
「『我が家が一番』なんて、そんなこと思うわけねぇな」
高橋もいます。
「重度のホームシックですわ。北海道に帰りたい」
「野田、いつからお前の故郷は北海道になったんだよ」
「田舎に残された家族が心配だ…ちゃんと飯食ってるか?」
「テルマの相方かよ」
「『こきょう』と『ふるさと』同じ漢字、同じ意味だが俺はあえて『ふるさと』と言いたい」
「なにそれ?」
「ニュアンスの違いだ。よりカントリーでノスタルジックでスローペースなシンパシーを感じるじゃあないか」
「それっぽいカタカナ並べただけだろ」
「まあまあ。とにかく俺は故郷に戻りたいんだって。でもそれは叶わない。俺が都会で金を稼がなきゃ家族はどう生活していけばいいんだよ」
「お前はそんなにベタでドラマチックな主人公じゃないだろ」
「妹よ、安心しろ。兄ちゃんが必ず大学まで進学させてやるからな」
「さっきから俺のツッコミ無視してね?」
「そのためには俺は勝ち続けなければならない。勝ってファイトマネーを手にしなければ…この裏のルールで」
「負け=死ってやつか?いかにも中学生が好きそうな設定だな」
「でも燃えるだろ?」
「あぁ、正直大好きな展開だ。できればそんな小説の主人公に生まれたかった」
「この作品でさえサブキャラなのに何を願う?」
「野田みたいな主人公にはなりたくないけどね」
「うっせい。てか干渉してはいけない世界の事を口にしている気がする。話題を変えよう」
「そうすべきだな。…………帰りは大変だった」
「飛行機な。山崎さん超嫌がってたな。『泳いで帰る!』とかマジで言うから可愛かった。うちのリトルマーメイドは怖がりやさんだからね」
「そこじゃねえだろ。またキップ足りなかった事だろが!無能な旅行会社がまたやらかした事だろが!」
「そういや高橋いなかったね」
「何でそんなに俺に無関心なんだよ!」
「高橋なら大丈夫だって絶対的な信頼があるからだよ」
「違うだろ。お前ら『高橋でいいじゃん』みたいな感じだっただろ」
「ご名答!」
「おいコラ。また数時間土屋先生と会話し続けたんだぞ?それがもたらす精神的疲労わかるか!?」
「修学旅行楽しかったな〜。週一ぐらいで行かないかな」
「会話の主導権が取れない……週一で行ったら絶対飽きるだろ」
「勉強するよりマシだろ」
「比べようもないな。でも毎回北海道は嫌だろ?」
「だね。次は京都だな」
「いいねぇ〜。週一で行けるんならめっちゃ色んな所行けるな!敢えての島根とか」
「三泊四日砂丘の旅!……ぜってーつまんねー!」
「アハハハハ。逆にいいじゃん!」
「埼玉とか栃木とかもよくね!?」
「そこもかなり渋いッッ!……じゃあ、もっと究極は市内!」
「もう旅行する意味ないじゃん!修学旅行なのに現地集合だよ!」
「ここが俺ん家です。そこが野田ん家です。みたいなことを三泊四日!」
「ハハハハハ!もうカオス過ぎる!馬鹿馬鹿し過ぎる!」
「野田、高橋うるさい!」
ごめんねスガさん。授業中だったね。
「廊下に立ってなさい!」
俺と高橋はスガさんに言われ、廊下に出た。
「水張ったバケツとか持つ?」
「いいねぇ野田。なんか凄いベタじゃん」
「でも自主的にやるところが新しいだろ?」
「反省してると思われねぇだろうなー」
馬鹿馬鹿しい会話が止まらねぇ!
彼らの物語はまだ始まったばかりです