不測の事態への対処で仕事の出来は変わるってもんですよね? 92
一応この話を含め、あと9話で第一章を締めたいと思っておりまして....残す伏線と回収する伏線、必要な辻褄合わせと、あえて残す矛盾など....悩みまくっております(汗)
第一章 八八話
「外の男も、あなたも....よほど“ギドルガモンの神獣核”が必要な様ですね?」
男は表情を変えずに....
「その理由を君が知る必要は無い。かの“神獣核”がどういう力を象徴しているか....はな。あれをただの“獣の元”程度と思って貰っては困る。それに...あれはもともと我らの同朋が残した物だ。“時期の良さに助けられてたまたま入手出来た”君が好き勝手にして良い物では無い」
なるほど....ある程度コアの内情も知ってるワケだ....勿論ある程度知ってるとはいえ、コアについてのデータを直接閲覧した僕から見れば、彼等の持つ知識では“コアの内情をそれなりに知っている”程度だろうが....こんな輩を真面目に応対するつもりはないし....とりあえず準備はしておこうか....
{ハァ...ミネルヴァ、魔法構文を構築して待機。座標は....}
{命令確認.... 魔法構文構築、予定転移地点確認、簡易発動回数10、全設定を完了しました。発動可能状態で待機中!}
そして....勝手な事ばかり言う男に、少しばかり皮肉を込めて言い返してやる。
「まったく....アレにどれほどの価値があろうと、あなた方がやっているのは、“盗人が居直った強盗”でしょう....もったいぶって大物ぶらないで下さい。図々しい」
男は....少しだけこめかみを震わせた。今までは殆ど表情を変えずにいた男だが、流石にここまで露骨に皮肉ってやると少しは堪えるらしい....
「それは見解の相違に過ぎん....大人しく引き渡せば、この聖堂の中にいる領民達に危害は加えないと約束しよう。まぁ断って貰っても一向に構わんがね....私の方の結果はさほど変わらんのだから」
やはり居直り強盗と変わらない....そこまで黙って聞いていたヴィルヘルムが、
「黙って聞いていれば! 何を勘違いしてるのかは知らんが、あれはコーサカが命がけでギドルガモンを仕留め、手に入れた物だぞ! お前にも出来たと言うなら、何故そんな重要な物を放っておいた!」
「放っておいたから何だと言うのだ? そちらが勝手に荒らしに来たとは考えられんのか? その上....“老いた鯨”を狩れたからと言って“海を手に入れた”と思うのは浅はかに過ぎると思わんかね? 恥をかきたく無ければ、たまたまギドルガモンが弱っている時期に討った程度でいい気にならん事だ」
言いたい放題言ってくれるな。だが....やはりおかしい。口調も少し違うし、それに...
「....あなた? 確かに姿形は外で見た方と同じに見えますが....さっきの人ではありませんね? 例え同じ人間だとしても....全く同じ記憶を持った人格とは思えません」
「外で今の私を見たと? ....いや、それよりも外の私とこの場にいる私....何故別人だと思うのかね?」
「あなたらしき人が僕を認識したのは、グラム神聖国の軍隊が、グランヴィアの城壁の外に来た時が初めての筈です。その時の会話から、僕が“ギドルガモンを討伐した事”を知ったとしても....あなた何故ギドルガモンが討伐された時に“弱っていた”と知ってるんです? それを直接知ってるのは、その場にいた僕とグラブフットさんだけです。かろうじて知りえた可能性があるとすれば....アローナさんかギルムガンの討伐隊にいた人間位でしょうか....」
男は表情を変えない....だが、先ほどまでと違う....そう、言うなれば“意識して変えない努力をしている”ように見える。
「あなたは確かに僕の結界に侵入しました。でも....ここには、元々あなたが居たのではないですか? いや、恐らくここだけではなく、あらゆる場所にあなたの分身とも言える人間が入り込んでいるのでは? そしてスキルを使用出来る....仮に“魂とも言うべき物”だけが、無数の分身間を移動していると考えれば....」
そこまで話した時....男が、こちらを指差したかと思うと、その指先から“鉛筆大の何か”が渦を引きながらこちらへ飛んで来る!
『パァーン!!』
僕の額に向けて真っ直ぐに飛んできた“何か”は、その軌跡の半ばでヒルデガルドの振るう剣に阻まれ、ハデな音を立てて弾け飛んだ。男はそれ以上の追撃はせず、こちらの緊張感も一気に高まるが....掌で味方を制して彼を見据える。
「正直に言うと....私は君の存在を軽んじていたよ。たまたま“希少なスキルが発現した”だけの男が、少し調子にのって大それた事に首を突っ込んでいるだけだ、と....だが少し認識を改めよう。君には“神獣核”と共に我等のもとへ来てもらおう」
「謹んでお断りしましょう。周りの人間が騒々しいせいでなかなか時間が取れないのでね。こう見えて忙しいのですよ」
そう言って男の目を静かに見据える....男には目に見える変化はないが....明らかに数瞬前とは違う....まるで視認出来ると錯覚しそうなほどの“濃密な殺気”が溢れ出して来ている....
ヴィルヘルムとヒルデガルドが、いよいよ臨戦態勢になる。僕らと男の周囲は、少しずつ領民の輪が広がり、不穏な空気が刻一刻と広がって行き、“神獣核”の傍らにいるマレーネには、既に2匹のオルトロスを従えたサブリナが付いてマレーネへの警戒にあたっていた。
「ならば....もう話す事はないな.... 」
一瞬の沈黙が訪れた....が、呑気に次の展開を待ってやるつもりはない!
{ミネルヴァ、発動する!}
{了解!}
「“オートアクティブ”」
「“?!”」
男の背後に転移して肩を掴む。恐らく警戒はしていただろうが....こちらは殺気を醸し出していた訳では無い。その事が、男の反応をほんの一瞬遅らせ、更に“ただ肩に触れる”事だけを想定して転移したので、流石に反応するのは無理だったようだ。そのまま“連続帯同転移”で結界内から強制的に連れ去る! 結果、男と僕は二人きりであるところで対峙する事に成功した。
「......思った以上に思いきりのいい男だったようだな。少し驚いたよ....で、確認したいのだが....ここはグランヴィア....なのか?」
男の顔色が少し悪い....連続帯同転移の影響で内臓をシェイクされたせいか....もしかしたら高い所が苦手なのかもしれない。
「ええ、ほんの上空7000Mほどです」
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