仕事の準備を怠らないのは・・・大人として当然ですよね? 73
第一章 六九話
「なんてこった....」
これまで....“生まれ育った一族”が特殊だった事を別にして....自分が“同世代の仲間”よりも『激しい戦闘』や『希有な体験』をしてきた事は間違いない。
封印された“六翼の神鳥”を目覚めさせようとした、ライリング王国の精鋭魔法使い100人余りを一人で撃退した事もあったし、一人では無かったがサルバシオン首長連邦を襲った“八脚の神獣”と直接対峙した事すらある。
自分が一族の中では若輩者である事も、世の中には“想像の埒外”に属する魔法使いやモンスターが存在する事も十分に承知している。
それでも....今、目前で起こった“人工の巨大建築物が一瞬で現れる”などというのは....“魔法の基本的構造”を把握する者なら信じ難い事だった。しかも、それが“今から一戦交える相手”が引き起こしたとなれば.....
「....なる程な! 三首の神獣を討ったって噂はこっちにも入ってたが....てめえだな?」
目前の....モノクルをかけた黒髪の男に問いただす。男は胡散臭そうな表情でこちらを一瞥すると....何故か“ゲンナリ”した声で言い放った。
「....そんな情報を簡単に教えるとでも?」
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「ちっ! 減らず口叩きやがって....ネタは割れてんだよ!」
どうも眼前の男には“会話における思慮”が足りていない様だ。この手の“せっかち”な人間とは含みを持たせた会話は期待出来ない。
「まあ、アナタが“どこの誰か?”はこの際かまいません。アナタを見れば“アナタを寄越した者”の程度も知れると言うものです。」
「なんだと!!! てめえにフェル兄貴のなにが....」
「やめい!!!」
男が口を滑らそうとした直前、鋭い語気で制止の声が響く。同時に、僕らと男との丁度中間に、全高3mはある巨大な猛禽類が音も無く舞い降りてきた。
見た目は鷹に近いが....奏多にはこちらの世界の鳥の種類までは判別出来ない。だが、人間の言葉を喋る鳥など“この世界”でも聞いた事がない、必然的に相手側の使い魔と見て間違ないだろう。
「ガス! 何をしている?! お前の役目は偵察だけだった筈だぞ?」
さっきと同じ年配の男の声が響く。
「だが師匠!! コイツは....」
「だまらんか! お前を与し易いと見た相手が情報を引き出そうとしておるのがわからんか!!!」
どうもこの鷹は、目前の男よりは会話が成り立ちそうだ。
「そこの鷹を使役している使い手の方? えー“師匠”さんですか? そんなに構えて頂く必要はありません。こちらのガスさんとは会話が成り立っていませんから」
「なんだと!!!」
「やめいと言うとるのが分からんか!! さっさと引けバカ者!」
やはりガスと呼ばれた男よりはよほど冷静だ。それに鷹の使い魔を通して会話出来る所を見ると...グラム神聖国の人間の中でも“かなりの使い手”と見て間違いなさそうだ。
「そこのモノクルの男よ。そなたが何らかの魔法を行使したのは分かった。どんな魔法かは分からんが“これだけの規模の魔法”を行使したんじゃ。魔力の消耗も激しかろう? ここでいきなり始めるのは本意ではない筈だ。お互い素直に引いたほうが懸命だと思うが?」
「ほう? それはお気遣い痛みいります。ですがご心配は無用ですよ。僕が働かなくても、こちらには“僕以上の魔法使い”が居ますから....」
そう言ってヴィルヘルムに視線を飛ばす。ヴィルヘルムは小さくため息をついて....
「ふん! 仕事なら是非もないがな、そんな若造位、今のお前でも全く問題なかろう?」
「そうですね....ガスさんには色々お聞きしたい事もありますし....」
ほんの少し....軽口程度の挑発だったのだが、ガスには効果覿面だった。
「好き放題言ってくれるじゃねーか!!! 丁度良いぜ、てめえをその邪魔な城壁ごとふっとばしてやる!!!」
目深に被ったフードをプルプルと震わせたガスの周囲に、可視化出来る程濃密な魔力が吹き上がる。
「ガス!!! やめん....」
「爆砕破裂!」
ごく短い詠唱が終わった瞬間....こちらに向かって広げたガスの掌の前に魔力が収束し、次の瞬間....
{指向性爆発魔法です。回避します!!!}
ミネルヴァの通信が終わった時には、僕らは出来たばかりの城壁の反対側に転移し....
「ーーードォンンンンッッッッーーー!!!」
壁の向こう側から盛大な衝撃音と振動が伝わってきた。
{ミネルヴァ! 城壁の上に転移してくれ!!}
{了解!}
即座にヴィルヘルムの肩を掴み、ライモンドはその場に残して城壁の上に転移する。凄まじい粉塵が舞い上がっていたが、ヴィルヘルムが即座に風魔法で吹き飛ばすと....既に彼等の姿は無かった。
「ふん、あの程度の爆発魔法なら俺の結界で十分だ。次は俺を連れて回避する必要は無いぞ」
「頼もしい限りですが....用心にこした事はありませんよ。この城壁を見て下さい」
ガスの爆発魔法が直撃した城壁は....半径10M近くがえぐり取られたように無くなっていた。見た所、あと数十センチで貫通していただろう。
「ふう、せっかく作った所なのに....早速修理しなきゃいけませんね」
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「このバカモンが!!! 貴様は何を考えておる?!!」
魔法を打ち放った後、即座に巨大な鷹の背に乗ってその場を離れたガスパールは、城壁から5km程にある鬱蒼とした森の中で師と対面していた。
「だがよぉ師匠? あの“馬鹿げた出力”の魔法を見た限りじゃあ、ヤツが“三首の神獣”を狩ったってのはあながち間違いじゃないかもしれませんよ? それならほぼ単独で動いていた今は絶好の機会だと思ったんすよ」
弱々しく反論してくる。ガスパールは確かに若い、それに多少短慮な所もあるが、考える頭が無い訳ではないのだ。
「ガスパールよ、お前なりの思慮が無かったとは言わん。だが....わしの固有感知魔法が間違い無ければ....ヤツはおかしい」
「???何がっすか?」
「ヤツは....前提としてあの城壁を出現させたのがヤツの魔法だとすると....ヤツの内在魔力量の変動が無さ過ぎる。仮に、我らのように周囲の魔力を収束しているとしても変化が無さ過ぎるんじゃ」
「そりゃあ一体....」
「軽々には判断できんが...まるで“無限に魔力を生み出す体”を持っているかの様じゃった....なんにしてもすぐ判断出来る様な事ではない。急ぎ本陣に戻って頭領に報告をせねばならん」
そういってガスパールに視線を向けた時、初めて彼の後ろに人影が居る事に気づいた!!!
「馬鹿な!! この距離でわしが気づかんなど....何者だ?」
「あー...えっと....驚かすつもりは無かったんですけど....何者かって言われたら....なんて言ったらいいんだろ? えっと...親戚? みたいな....」
そこにいたのは一生と又三郎だった....
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