難しい仕事ほど・・・断れないしがらみがあるもんですよね? 71
第一章 六七話
奏多がグラブフットの“生い立ち”を聞いていた丁度その頃・・・・
グラム神聖国との国境にある平原では、駐屯している約2000名の兵士達が、一糸乱れぬ姿で整列していた。
彼等の前には、即席で組み立てられた簡素な台があり、そこには白銀の全身甲冑を纏った男が立っている。
その姿を言葉で表すなら・・・・“でかい”その一言に尽きる。恐らく身長は2mを超える。だがでかいのは身長だけの話ではない。身体全体を構成する全てのパーツが悉く大きいのだ。
今回の紛争鎮圧の為に、グラム神聖国が送り込んだ部隊の指揮官、“絶対なる光を纏う者”ことフェルディナン・ド・クレオールは、兜もとらずその台の上に立ち、眼前の一糸乱れぬ整列を見せる兵士達を一瞥すると・・・・おもむろに声を挙げた。
「神の秩序を保つ者達に告げる・・・・」
全ての兵士にハッキリと伝わる“凄まじい声量”であるにも関わらず、その言葉は驚く程“穏やか”に響いた。
「今まさに、我々は戦に赴く。我等の行いこそが約束された神の祝詞であり、理不尽に奪われた神の地に秩序を取り戻す楔となろう! 聞け! 神の子らよ! 今こそ民の祈りが正しく届き、“あらゆる理不尽が長く存続する事”は不可能であると証明するのだ!!!」
「・・・・ウオオオオオオオオオオオオォォォーーーーー!!!!!」
一拍の後・・・・全ての兵士から歓声が上がる。指揮官の能力として、求められる資質は数多くあれど『士気を上げる』事に関して、彼程の人間はグラム神聖国にも二人と居ない。
そして・・・・兵士達の背後で“その様子”を眺める数人の男女がいた、全員がローブ姿で騎乗して“絶対なる光を纏う者”の姿を眺めている。その中でも“一際小柄”な、紫の刺繍が入ったローブ姿の人物が、誰に聞かせるともなく声をあげた・・・・
「相も変わらず、デカい声ですわね・・・・」
「まあ、『声がデカい』事は頭首には必須の技能ですから・・・・」
「ちょっと待てよ? それじゃ兄ィは『声がデカい』事で頭首に収まったみてぇじゃねぇか! 」
「そうは言ってませんよ。まあ・・・もしそうだとしても驚きゃしませんが・・・・」
「何だと?」
瞬間的に、濃紺の刺繍を纏ったローブ姿の男から“濃密”で“鋭利”な魔力が漂い始める。
「やめんかガスパール! 心配せずとも頭首の事は皆が敬愛しておる。サルダン! 貴様も余計な軽口を叩くでないわ! 全く・・・・お主等と来たらもう少し落ち着く事は出来んのか・・・・儂は子守に来た訳ではないぞ!」
そう言って全員を諫めたのは、“暗赤色の刺繍”が入ったローブを纏う男だった。その姿はローブに隠れて確認出来ないが、絶妙に“枯れた雰囲気”を漂わせた声は、相当な人生の年輪を感じさせる。
「だけどよ師匠! サルダンの野郎ときたら普段から頭首に対する・・・・」
「・・・・ガスパール、師の仰る事が聞こえませんでしたか?」
「ちっ・・・・分かったよ。」
「サルダン、貴方もです。」
「勿論、異論ありませんぜ姐さん。」
「・・・・貴方とは一度ゆっくり話あう必要がありますね・・・・師よ? 戦場の想定は予定通りで宜しいのですか?」
「うむ・・・・フランソワーズの言うとおり戦場の想定は変わっておらん。我等は先んじて戦場に赴き、準備をせねばならんのは全員分かっておるな?」
全員を代表して・・・・フランソワーズと呼ばれた、紫刺繍のローブを纏った女性が答える。
「ええ、委細承知で御座います」
「・・・・ならば行くがいい! 行って成すべきを成すのだ!」
「「「おう!」」」
師と呼ばれた男の号令を受けると・・・・その場に集っていたローブ姿の者達は、それぞれ馬首をめぐらしてその場を離れていく。
その後ろ姿を見送った後、兵士達の方に向き直った男は・・・・早ければ数日後には戦を控えているにも関わらず、今回の一連の件の裏に見え隠れする・・・・“アルバ地方に居座る者達とは違う勢力”について思いを巡らしていた・・・・
「47年・・・・か、既に50年近くもの時を費やしてなおヤツらとの決着も着けられず、かような些事にかまけねばならんとは・・・・やはり私には貴方様の残したお言葉は重う御座います・・・・メルローズ卿」
誰にも聞こえない声でそっと呟いた男は・・・・自らも馬首をめぐらすと、現在の主である白銀の騎士と合流するべくその場を離れていった。
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グラム神聖国には、その裏の任務の都合上、周辺の国に比べて優秀な魔法使いが多くいる。
これは“出自が一族”である者とは別に、『実務上の問題として』事情を知らない者でも“裏の任務”には優秀な魔法使いが必要である為で、必然的に今回の軍にも200名近い魔法使いが帯同している。
その中には、当然・・・・先程この場を離れていった様な“超越者級”は別としても・・・・手練れが多数いる。当たり前だが軍が駐屯している以上、周辺の警戒は必須であり、その任務は“広範囲の索敵を魔法によって行える”彼等が担っているのだが・・・・
彼等の索敵範囲の中に居るにも関わらず、その姿を捉えられていない存在が複数存在していた。
一つはミネルヴァが放ったミニミネルヴァ達で、彼等は索敵魔法を認知した瞬間に、その存在自体を“簡易発動”出来る様に設定した“テンプオーダー”内に転移する事で敵の索敵を逃れていた。
そしてもう一組・・・・駐屯部隊の北側、彼等を見下ろす位置にある丘の上に居たのは・・・・この世界では、ごく一般的な旅装に身を包み、一匹の黒い猫を連れた若い女性である。
「ねぇ、又三郎? さっきの大勢の前で大声を張り上げてたのが“先代”の子孫達なわけ?」
「ああ、あそこに居るのは、極一部ではあるが・・・・先代“原初の守護者”の子孫に間違い無い」
それを聞いた一生は・・・・心底ゲンナリした様子を見せた。その様子を見た彼女のお供、“生態補助機械の又三郎”は、
「先代の子孫はそれこそ“世界中に散っている”んだが・・・・俺達の『調査対象』が居る可能性が高い“アルバ地方”と敵対してるとは少々予想外だったよ」
「その“調査対象”とやらは・・・・えっと、三首の神獣だっけ? そのモンスターを撃破したんでしょう? また何でわざわざそんなのと“対決しよう”なんて思ったのかしらね?」
「うーん・・・・正直な所、この世界に生きる存在達にとって『エボリューションクラスのモンスター』と関わってトクになるような事って殆どない筈なんだよ。確かにそれぞれのモンスターを倒した時に付与される“討伐特典”は、個体に対してとても“大きな力”を与えてくれるが・・・・そもそも『エボリューションクラスのモンスター』を倒す様な技量を“元から持っている”としたら・・・・この世界で成せない事なんて、ほぼ無い筈なんだよなぁ・・・・」
確かに私にも想像がつかないけど・・・・
「まあ私が言うのも何だけど・・・・前に居た地球じゃさ、私なんかには想像も出来ない様な“大金”を持った人達が居たよ、それでさ、私から見たら“使い切れない程の大金”を手に入れたら・・・・さっさと仕事に見切りをつけて遊んで暮らせば良いじゃない! って思うわけよ。でもね、そんな人程・・・・お金持ちになればなる程、余計に仕事にのめり込んでた気がするなぁ」
「・・・・つまり僕らの調査対象は、“欲望の対象”が、“力を得る事そのもの”になっている可能性が大きいと?」
「まあ、決めつけるには“相手の事が分からな過ぎる”し、“可能性の一つ”くらいに思っとけば良いんじゃない? 所で話は変わるけどさ? えっと・・・・三首の神獣だっけ? スゴい名前よねぇ・・・・正直センスを疑うわ! 名前を付けるとき誰も反対しなかったのかしら? 」
「俺からすれば・・・・君が“他人のネーミングセンス”にケチを付けるのは・・・・どうかと思うけど?」
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アジャはなろう基準で、まだまだ底辺の近くをウロウロしている駆け出しですが、期待していただいている皆様に後悔させない様、これからも精進していく所存です。
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