難しい仕事ほど・・・断れないしがらみがあるもんですよね? 70
また会話劇場になってしまいました・・・orz
第一章 六六話
「なる程・・・・大筋は理解できました。が、まだ分からない事が幾つかあります」
「ガキの頃に一族を離れた俺がなんで“今の一族の事を知ってるのか?” って事か?」
「・・・・他にも有りますが、まずはそれですね。」
グラブフットの話を信用するなら、彼が一族の元を離れたのは40年以上前になる。今のグラム神聖国と繋がりが有るとは考えづらいが、グラブフットの言動からは完全に没交渉とも思えない。
「もう10年も前になるか・・・俺のオフクロがな、死んだのさ。オフクロとはギルムガンに落ち延びて暫くは一緒に暮らしてたが、俺も成人してからは家を出てな、各国を放浪してたんだ。まあ、そうやって放浪しつつ何年か毎にギルムガンに帰っては、オフクロの所に顔を出して・・・・また放浪の旅に出る生活をしてた。」
なる程グラブフットにもそんな多感な時期があったのか・・・今は完全におっさんだが・・・
「そうやって何度目かの帰郷を果たした時、久し振りに会ったオフクロが赤ん坊を抱いてるじゃないか! しかもよくよく話を聞くと王の子だと言うし・・・・流石の俺も面食らったぜ」
「・・・それは、まぁそうでしょうね。」
「まあ、そこら辺のいきさつは、俺も詳しくは知らんが・・・息子の俺から見てもオフクロは権力になびく様な女じゃなかったからな・・・セルディック4世に何か響くもんがあったんだろうよ。それに・・・そもそもいい歳の男がオフクロの色恋なんぞ知りたいと思うか?」
確かに・・・その件については完全に賛成だ。
「まぁ・・・・それはこの件には直接関係ない話だ。俺はそれからも放浪生活を続けていたんだが・・・・丁度10年前、久し振りにギルムガンに戻ると、オフクロが病に伏せってた。驚いたぜ、なんせ俺らの一族は体質的に殆どの病に強い抵抗力がある。事実、俺は生まれてこの方病気に掛かった事がねぇ。」
「へえ、それも始祖の影響ですか?」
「そう言われてる。当時俺の知っていた治療方法は片っ端から試してみたが、オフクロの病には殆ど効果がなかった。オフクロ曰わくどうも一族の女特有の病らしいと目星はつけたんだが、更にタイミングの悪い事にグローブリーズとグラムとの間でいざこざが持ち上がっていてな・・・・」
「七大国大戦の発端になった小競り合いですか?」
「ああ、そうこうするうちに伯父が死んだってのが耳に入った。俺は、オフクロを救う方法を求めてグラム神聖国に赴いたよ。まず確認しに行った俺の実家は、案の定お家騒動でてんやわんやだ。当然、顔なんぞ出せる筈もないんでな、考えた末に幼なじみを頼ったのさ。」
・・・・そりゃあグラムで12歳まで過ごしたなら、そういう人物の一人二人いてもおかしくないが・・・・10年前、グラブフットが49歳、12歳で国を離れたとして・・・37年も前に離れ離れになった人物を良く見つけられたものだ。そんな風に思っていた僕の表情を見て取ったのか・・・
「おいおい、忘れてるのか? 俺たちの一族は極端に老化しにくい容姿をしてるってさっきも言ったろ? それに奴は12の枢機卿家族の中でも重要な役職を担う家系なんだ。見つけるのはさほど難しくはなかったよ」
「なる程・・・・そうやってグラム神聖国に入り込んだ訳ですか・・・・」
「ああ。その後、結果的にはオフクロを救う事は叶わなかったがな・・・・その病は一族の中でも希有な病で、確実な治療方法は一族にも確立されてはいなかった。結局オフクロの死に目にも会えなかったが、治療方法を見つけるまでは帰る訳には行かなかった」
「それはまた・・・・何故です?」
「アローナがいたからな・・・・俺がオフクロの元を離れる決断をした時、恐らくオフクロは自分の死期を悟っていた。そして自分の娘であるアローナが同じ病に冒される事を半ば確信していたんだ」
「あなたの母君は何故そう確信していたのです? 一族でも希有な病という事はさほど発症した者が多い訳では無いのでしょう?」
「お前さん、アローナの容姿を知ってるだろう。あいつの白髪と瞳の色はな、オフクロに瓜二つなんだよ。そしてオフクロが死んだ病を発症するのは・・・・決まって白髪、紅眼の女なんだ」
!? 一瞬絶句して、思わず問いただす。
「では? アローナさんも既に病に?」
「いや、今はまだその兆候はない。だが、恐らく・・・・いや間違い無くアローナにもあの病は訪れるだろう。オフクロが死を覚悟しながらも俺のグラム行きを止めなかったのは、アローナの事を託せるのが俺しかいなかったからだろうな。俺はオフクロが死んだ報せを受けてからもグラムに留まり、病の治療方法か、もしくは発症を抑えるすべを探した。幼なじみである“絶対なる光を纏う者”は幸い義理堅い男でな・・・・秘密裏に長に繋ぎをとって話をつけてくれた。俺を自分の部下として七大国大戦に従軍させる事で改めて一族として認知させ、俺はあいつを助けつつ、必死で病の治療方法を探し続けた。そして可能性として行き着いたのが・・・・」
僕はその後の言葉を引き取った。
「地母神の涙という訳ですか・・・」
「ああ、そのとおりだ。残念ながらそれは思っていた形の物では無かったが・・・・俺がお前を助ける理由が理解出来たか? アローナに迫るであろう“死の病”を退ける為には・・・・こんな戦でお前に死なれる訳にはいかん。お前がどれほどの力を持っているかは計り知れんがな、人には未来は見えない、そしてどれほど用心していても死ぬ時は呆気なく死ぬ。それはどれほど大きな力を持っていようとも変わらん」
「・・・・なる程、あなたの行動の意味がやっと分かりましたよ。ただ、それにしては僕や三首の神獣と戦っていた時はアローナさんを随分危険に晒していたように見えましたが?」
「ふん! その前にお前さんがギルムガンの兵達をのしてるのは見てたからな。お前、やろうと思えば簡単に奴らを皆殺しに出来ただろう? あれを見てアローナが負けても命までは取られないと確信したよ。それにアローナは俺の妹だぞ? そう簡単にくたばるようなたまじゃねぇよ! ギドルガモンのブレスの時は、たまたま俺より先にお前が助けちまっただけだしな。」
全く困った男だ・・・・だが、とりあえずこの男の行動原理は理解出来た・・・・か。それにしても“亡き母の願い”とは・・・・思い出させてくれるな。
「いいでしょう。あなたのチグハグな行動の理由は理解できました。しかしいいのですか? このまま行けばグラム神聖国だけでなく、あなたの恩人である“絶対なる光を纏う者”とも矛を交える事になりますが?」
「それこそ今更だぜ?! 俺は、“何を置いてもアローナを守る”とオフクロに誓ったんだ。その日からやってきた事を考えれば・・・・グラムと落とし前は、俺が背負わにゃならん責任ってやつだろうよ。それにな、短い付き合いだが、何故か俺は・・・・お前さんならきっと上手くやるって思っちまってるんだよ」
グラブフットの様子はいつになく真剣だ。いつもは、なんにつけても軽いこの男が、何故かそんな事だけ真剣に話すのはどうも居心地が悪い。
「・・・・僕は“自分に出来る事”以上の事は出来ませんし、そんな大それた人間でもありませんよ」
そう言った僕を見て・・・・グラブフットは苦笑する。
「それで構わんさ! お前の“出来る事”以上の結果なんぞ、めったに有るもんじゃないだろうよ!」
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