難しい仕事ほど・・・断れないしがらみがあるもんですよね? 65
第一章 六一話
皇帝との謁見より数えて2日後、アルバ地方領都グランヴィアへと転移した僕等はアローナ達と合流した。
アローナ達は主の逃げ出した領主館を接収して使用している。エントランスの警備兵に事情を話し、サロンに通して貰うと、そこにはグラブフットとアローナを始め、ロアナとローランドの親子や、ライモンドとサブリナ、その仲間達と思われる壮年の男性が幾名かいた。グラブフットが僕を見つけて、
「よう! その様子だと、どうやら話はついた様だな!」
「・・・ええ、トライセン王国とグローブリーズ帝国からは、なんとか今回の件について承認を得ました。グローブリーズ帝国についてはグラム神聖国との話し合いが終わるまで公表は出来ませんが・・・・」
「ふん! まぁグローブリーズの連中にしてみれば当然か・・・・で、そちらのお嬢さん方は?」
そう彼が言ったのは、この場に現れたのがミネルヴァと僕だけではなかったからだ。
「いや、男性も居るのは見えているでしょう・・・・まあ、いいです。こちらの方はトライセン王国のヒルデガルド・フォン・ビットナー伯爵令嬢と同家筆頭魔法使いのシドーニエさんです。」
「お初にお目にかかる。この度の仕儀を見届ける為、国王陛下の命によりコーサカ殿に同行させた頂きました。どうぞよしなにお願い致します。」
そう言って自己紹介をする。シドーニエに至っては無言のまま黙礼するに留まった。今まではさほど気に掛からなかったが、どうもシドーニエは人見知りする質のようだ。そこでアローナがスッとヒルデガルドの前に進み出る・・・・
「この度の紛争、トライセン王国にも無用の心労をかけた事、申し訳なく思っております。私はギルムガン王国国王セルディック・ド・ギルムガン四世が末娘、アローナ・ド・ギルムガンです。」
そう言って深々と頭をさげた。ヒルデガルドの瞳が、少し驚きをたたえ僕の方に向けられる。その視線に静かに頷くと、ヒルデガルドは改めてアローナに話しかけた。
「お顔を御上げ下さい殿下、コーサカ殿から事情は伺っております。」
「いえ、元は私共の国がしでかした事です。それに・・・・私はセルディックの実子ではありますが私自身には王位継承権はありません。ですので殿下などと敬称を頂く必要はないのです。これから暫く時を共にするのです。是非アローナと呼んで下さい。」
へえ、アローナの丁寧な言葉使いなんて、セルディック四世との会話以外では初めて聞いた。それに継承権を持っていないというのも初耳だ。
{ミネルヴァ? 知っていたのかい?}
{はい、ギルムガンで集音分析にて情報収集していた際、その情報を確認しています。どうも自身の身分が低く、長引く権力闘争で身の危険を感じた彼女の母が、早々に娘の継承権を放棄したそうです。その後、また権力闘争に利用される事を防ぐ為に、継承権放棄を大々的に公表したため、彼女は王宮ではなく市井で養育されたと聞いております。}
{ああ、なるほど・・・・確かにアローナのお転婆振りは、お姫様って感じはしないな。}
「もったいないお言葉です。それでは、是非私の事もヒルデガルドとお呼び下さい。」
なんだか良く分からないが二人が仲良くやってくれるなら特に僕としては文句は無い。そして残りの二人については、アローナとグラブフット以外の人間には改めて説明を必要としないだろう・・・・いやロアナだけは知らないか・・・・そこで一人の女性の前にサブリナが進み出て、
「・・・・お嬢様、この度の失態、申し開きのしようもごさいません。」
「いえ、サブリナが力を尽くしてくれた事はコーサカ様から聞いています。苦労をかけましたね。」
そう、マレーネ・フォン・ワーレンハイト子爵令嬢こと、本名はマルグリット・フォン・グローブリーズ大公令嬢だ。護衛としてヴィルヘルムも同行している。勿論、今回同行しているのは帝国の預かり知らない事だ。
本当は領地で大人しくしていて欲しかったのだが・・・・同行すると言って聞かなかった。アルバ地方に残っていた仲間達とひとしきり再開の挨拶を済ませると、ヒルデガルドとの挨拶が済んだアローナが改めて進み出て来た。
「マレーネ子爵令嬢・・・・とお呼びすれば良いでしょうか? 」
少し堅い感じでアローナが話しかける。
「はい。昔はともかく今の私はマレーネとして生きていますので・・・・ヒルデガルドさんと同じく私の事もマレーネとお呼び下さい。それに改めての謝罪は無用です。大義名分の為とはいえ、実際に亡命した領民を保護して頂いた事は聞き及んでおります。」
「・・・・承知致しました。マレーネ様の事情は“秘匿”を誓ってカナタから伺っております。この上は是非もありません。共に力を合わせ、アルバ地方の自由を勝ち取りましょう!」
その言葉を聞いたマレーネとヒルデガルドが・・・・ほんの少しだけ、本当に微かに驚いたような様子を見せた・・・・なんだ?アローナのセリフに何かおかしな所でもあっただろうか?
「・・・・ええ、宜しくお願い致しますね、アローナさん・・・・それで・・・不躾ですが、一つお聞かせ下さい・・・コーサカ様とはエルグラン山脈で初めて会ったとお聞きしましたが・・・・」
うん? なんだ、さっきアルバ地方に戻って来る前の道中で“大まかな説明”はしたのだが、何か疑問でもあったかね? って?! 何故かヒルデガルドまでマレーネの隣に陣取ってアローナと向き合っている。
「ええ! そうです! カナタとは初対面でしたが、思いっきりやり合ったんですよ・・・・ まぁ結果は私の・・・いやだ、察して下さいな。」
・・・・何となく嫌な予感がする。
「へ、へぇ・・・・そうですか・・・それでアローナ殿は・・・随分コーサカ殿と親しげですが・・・・」
「そうですわね。とても仲良くされている様子ですね・・・」
ヒルデガルドとマレーネが、何故か奇妙な所を気にしている。いったい何を気にしているんだ?
「ええ、その後も父の治療や謀反人のあぶり出しなど、短い間でしたが随分助けて貰いました!」
ヒルデガルドとマレーネの二人が顔を突き合わせて驚いている。その様子を黙って見ていたシドーニエとサブリナが、そっと僕の後ろにやって来て・・・・
「コーサカ様! 随分とアローナ様にご助力されているんですね! ( ^ _ ^ #) 」
「あんた・・・・ お嬢様の、“あの態度”はどういう事なの?( ̄□ ̄#)」
などと責めてくる。なんだ? 随分と理不尽じゃないか? そもそも僕がアローナを助けたのは、“アルバ地方への言質”を取る為にした行動で半ば成り行きだ。
アローナがセルディック四世の実子と知ったのも、ギルムガンでの活動が終わる間際だ。別にアローナやギルムガンをひいきした訳ではないのだか・・・・
「そういう事では無いのですが・・・・ハァ・・・コーサカ様は相変わらずですねぇ。」
「全く・・・・お嬢様もこんな朴念仁のどこが・・・・」
理由は良く分からないが、理不尽に罵倒されている事は分かる。
「・・・理不尽に耐える魔法を誰か教えて頂けませんかねぇ・・・・」
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