現場の事情は・・・偉い人には分からん物なんですよね? 49
第一章 四五話
「そんな事かい? それは単純にヤ ツが守護している宝石・・・いや鉱石である地母神の涙を手に入れる様に命令されたからさ!ギルムガン王国にな。」
うん? どういう事だ?この男、どうも言動がちぐはぐで真意が読めない。ガイアラドライトなる鉱石がどういう物かは知らないが、侵略行為に対しての正当な理由になるとも思えない。ギルムガンは事が成っても成らずとも、国際間で完全にその立場を失うだろう・・・エクスチェンジでガンディロスナイフを手元に戻しながらカマをかけてみる。
「・・・先程から何かと違和感があると思っていましたが・・・あなたは、ギルムガン王国の人間では無いのですね?」
「・・・あんたよく見てるな? 確かに俺はギルムガン王国に所属している人間じゃあない。まあ、今回のギドルガモン討伐に当たって雇われた・・・外部コンサルタントってところか・・・」
「そのガイアラドライトなる物は一体どういう代物で、なぜあなたがコンサルティングを引き受けているのですか? それに・・・ギルムガン王国はどうやってこの事態を収めるつもりなんです・・・」
「・・・まぁ、いいか。地母神の涙はギドルガモンが住むここにしかない特殊な鉱石でな、あらゆる魔法の質を底上げする触媒として機能するんだ。 俺がコンサルを依頼された理由は・・・そこの嬢ちゃんにも話したが、俺の一族が太古から“三柱の神獣” を “監視する役目を負う一族”の一人だからだよ。」
随分と新しい情報が出てきたが・・・こいつわざと核心を話さない気だな・・・
「僕が知りたいのは、なぜギルムガンが “魔法の底上げ効果を持つ鉱石を欲しがっているのか?” ですよ。それに話を聞く限りでは、あなたは監視する役目を負う一族の出自なのでしょう?そのあなたがギドルガモンにちょっかいをかける理由も分かりません。」
「慌てなさんなよ。ギルムガンが欲しがっている理由は簡単さ。現国王が死病に侵されててな、余命幾ばくもないから助ける為に欲しているのさ! ギルムガンって国は、長い間王族が多数の派閥に別れて血みどろの主導権争いをして来たんだ。それを現国王が力でまとめ上げたんだが・・・今、現国王が死ねばまた元の木阿弥に戻ってしまうだろうよ。それを懸念した現国王の側近達が、まだ影響力を行使出来る間に国軍を動かした。それが今回の侵攻の真実だよ。」
「なるほど、動機は分かりました。ですが・・・グラム神聖国や他の国に対する大義名分は何です?まさか国王の病が理由になるとは思っていないでしょう? 」
「・・・簡単だよ、“アルバ地方からの難民が、酷政を訴えている。難民を受け入れた以上、その言に耳を傾け、人道に乗っ取って救出する”ってのが表向きの理由だよ。・・・そんな顔すんなって、馬鹿馬鹿しい理由だけどよ、そもそも戦争なんぞ正当な理由が有る方が稀だろうよ?」
どうも無意識に辟易した顔をしていたようだ。
「・・・まあ、いいでしょう、続きを。」
「俺が自分の一族に背いて迄この侵攻に参加したのは・・・詳しい理由は省くが、ギルムガンの現国王に借りがあるのと、俺にもガイアラドライトが必要な理由があるから・・・だな。理由は聞くなよプライバシーだ。」
人のプライバシーはホイホイ喋る癖に勝手な事を言う男だ。だが、なぜか話を聞いてしまうのは何故だろう?
「・・・話を聞く限り、あなたはこの二人を解放してもギドルガモンとの接触を諦める積もりは無さそうですね?」
「・・・まあな、コレばっかりはギルムガン国王の件だけじゃなく俺個人にも引けない理由が有るしな。勿論最初はその嬢ちゃんがいない事が前提で話を進めて来たんだ。居なくても何とかする手だてはある。そもそも嬢ちゃんには魔力を込める役目をお願いしただけで、それに付いても、見返りにガイアラドライトを分けるからって事で話は付いてる。」
視線をサブリナに向けるとゆっくり頷いた。どうも、こう素直に話されると調子が狂う。まだいくつか疑問があるし、この男の話の信憑性が未知数なのだが・・・
「そもそも、ギドルガモン討伐を成す事が出来るとは思えませんが?」
「・・・ああ、仕方ねぇか!コレは俺達一族に伝わってる極秘事項だが・・・そもそもギドルガモンはこの火口が巣の筈だろ?だが見渡す限り何処にもそんなもんいやしねえ、じゃあヤツはいったい何処にいると思う?」
それはここに着いた時から不思議に思っていた。見渡す限り遮蔽物も無く、今は満月の月明かりと、ギルムガン兵が設置した相当数の篝火で、大部分が見渡せるが何処にもギドルガモンらしき姿など見当たらない。それにここは生き物が住んでいるにしてはそういった痕跡が無さ過ぎる。
「さあ?さっぱり分かりませんね。」
「素直なヤツだな、問い掛けた俺が馬鹿みたいじゃねえか・・・まあいいさ。ヤツはな、普段は特殊な魔法で封じ込められて居るんだよ。この空間とは別の空間にな。」
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特殊な魔法・・・別の空間・・・どうも、話がきな臭くなって来た。
「どういう事です? 」
「どうも何も、そのまんまの意味だよ。俺達の一族が管理する古文書曰わく、ギドルガモンは太古にあって魔法その物を創造した国 “大魔法帝国” が生み出した物なんだが・・・当時の奴らも“想像上の怪物”を生み出したはいいが上手く扱えなかったらしい。それで奴ら時空間魔法を使ってギドルガモンを封じ込めたんだよ。ただし奴の力が強過ぎて完全には封じ切れなかった様だ。たまにギドルガモンが外に出て暴れるのは、封印空間がヤツの魔力に耐えられなくなる前に一時的に解除されるせいらしいぜ。」
「それはおかしいのでは? なぜギドルガモンは解放されたなら逃げ出さないんです?」
「古文書いわく、ギドルガモンはこの火口にある封印空間の中に居ないと魔力を吸収出来ず、長くは活動出来ないらしい。だから封印が弱まるタイミングで外に飛び出すが、力を使い果たすとここに戻って来ざる得ないんだ。ここにある封印管理立体魔法陣からの情報によれば、まだヤツは外に飛び出す程の魔力を蓄えてない。なぜなら魔力の供給元はこの山脈の地下にある溶岩帯なんでな、火山活動の強弱によって魔力の供給速度は変わるんだよ。」
「・・・呆れますね。それが本当なら、あなたにもここに来るまでギドルガモンの状態は分からないという事でしょう? そんな不確かな情報でここまで大それた事をしでかしたのですか?」
「それに付いては・・・賭だったのは否定しねえよ。まあ他に手がなかったのは事実だ、流石に本調子のギドルガモンと勝負出来るとは思っちゃいないが・・・これで見るに、ヤツは良いとこフルパワーの2割って所だ。やるなら十分見込みがあるだろうよ。」
「どれほど本調子からは遠くとも、あなた方の勝手でそんな不安定な化け物を解き放つ訳にはいきませんね。」
「引く気はないと?」
「当然でしょう。」
そう答えて男を見据える。不意に男は目深に被っていたローブを下ろした。現れたのは黒髪を短くした四十がらみの男だ。どういう訳か目を閉じている様に見えるが・・・
「まあ、簡単に説得出来るとは思っちゃいねえさ。そっちの嬢ちゃんと違って、あんたは俺達に捕まってる訳でも無いからな。だが・・・」
ヤツの目蓋が少しずつ上がっていくと、そこには・・・黒い眼球に金色の虹彩が浮かんでいた。
「あんたも相当なもんだってのは分かるがな・・・俺も普通じゃないんだよ。」
そう言った途端、グラブフットの周囲に暴風の様な魔力が渦巻き始める。
{いけません! ヤツの魔 力が急速に増大しています。広範囲魔法の可能性が有ります! }
まずい、ヤツのペースに引き込まれて油断した。このままだと自分はともかくサブリナとローランドが巻き込まれる!
{エンター2形成!}
{了解!}
「ムーヴ!」
二人の背後に転移する、同時に二人の目前に扉サイズの黒いゲートが現れる。
「暫く避難していて下さい。」
そう言って背中を押す。
「「 え? 」」
二人は抗う間もなくゲートに入りこんだ。と、同時にゲートその物も消え去る。その間にもグラブフットの魔力は増大し、
「随分と余裕じゃないか?人の心配をしている場合か?」
「あなたこそ、どんな魔法を使うつもりかは知りませんが・・・それだけの魔力ですと、部下やアローナさんでしたか?その方達まで巻き込むでしょう?良いのですか?」
「クククッ、お前の心配する事じゃねぇだろよ。」
ヤツがそう言って右手をかざした瞬間、凄まじい光が視界を貫いた。




