表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
自殺日記  作者: Sii
1/2

これまでのあらすじ





その女の目は死んでいる。

この女には心がないのだ。


いや、正確に言えば、その女は心をなくしたのだ。元々なかったわけではない。




~これまでの人生のあらすじ~


この女はいつも幸せだった。

女はひとりっ子で両親の愛情に恵まれて育った。それはそれはすごい可愛がりようだった。幼稚園から学習塾に行き、本人も勉強が苦ではなかったので、同級生の中でも群を抜いて頭がよかった。先生や両親は彼女をたくさん褒めた。友人も彼女を尊敬した。彼女はいつも愛されていた。


愛されていただけではない。彼女はいつも人を愛していた。彼女は両親が大好きだった。毎年夏に三人で遊園地へ行くことと冬に三人で温泉に行くことがとても好きだった。父親は大工で、家の床を張り替えたり便利にするための台を作ったり彼女の工作の宿題を手伝ってくれた。なんでもできる父親が大好きだった。母親はとても料理がうまかった。世界で一番母親の料理がおいしいと思っていた。また、母親が髪をいつも結ってくれた。母が結ってくれる髪型はいつもとても可愛かった。なんでもできる母親が大好きだった。


彼女はあるアイドルグループのアイドルが好きだった。小学生の時に好きになったのだが、子どもなのでコンサートには行けず、いつもコンサートのDVDとアイドルグループの番組を見ていた。そのアイドルに会いたくて枕を濡らす日もあった。しかし数年経ったある日、やっと母の許しが出て、何年越しの想いを実らせコンサートに行った。好きなアイドルが現れた瞬間涙が止まらなかった。しかもコンサートの途中にトロッコという乗り物で客席を回る際、自分の目の前に来たのだ。そのアイドルとの距離は1メートルもないほどだった。彼女は自分の目の前を通る時にアイドルの名前を叫んだ。彼は振り返り、とびっきりの笑顔で彼女に手を振った。彼女は一瞬だけ、愛されたと思った。その時だけはそこがふたりだけの空間になったような気がした。


彼女はペットのミニチュアダックスフンドが大好きだった。珍しい柄のミニチュアダックスフンドで、気の優しいおっとりした犬だった。どんな時でもそばにいてくれて、いつも一緒に遊んでくれて、彼女の大切なきょうだいだった。老犬のため目はよく見えず家のあちこちにぶつかっていたが、それもまた愛おしかった。


彼女は母方のおばあちゃんが大好きだった。おばあちゃんなのに他のおばあちゃんとは違い背が高く、バリバリ働いていて、なんでも好きなものを買ってくれる、彼女にとってはかっこいい女だった。


彼女は親友のふたりが大好きだった。中学の同級生で、学校ではいつも三人で一緒にいた。休みの日も三人で遊びに行った。ある日、同級生に◯◯姉妹、とトリオネームをつけられて、本当の家族になれたような気がしてとても嬉しかった。三人で「おばあちゃんになってもきっと三人でいるね」なんて笑いあっている日常も大好きだった。


彼女には好きな男の子がいた。彼女は恋多き女で、いろんな男を好きになった。同級生、先輩、後輩、学校の先生、塾の先生。いろんな人の素敵なところばかりが目に入り、一度に何人も好きだった時もある。彼女は恋愛をしているのが大好きだった。



彼女の人生が狂い始めたのはいつのことだっただろうかーーーー。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ