小休止
土曜日なので2度目の投下
ちょっと書き足りなかったので付け足し気味に、短いです。
夜、バンドーはアインの家の囲炉裏を囲んでメンバーを労いつつ、アンに釘を刺していた。
「みんなよくやってくれた。アンはちょっとやり過ぎたけどな」
実はすごくやり過ぎたとバンドーは思っていたが、口には出さない。
「そう? 」
「この作戦は、相手に有利だと思わせることが重要なんだ」
オンゴロやマノクの話では、『前世回帰』の首魁であるコンコードは常識的な男だという。用兵も正攻法。そんな相手に、自分たちは有利だと思わせ、戦力を小出しにさせる事をバンドーは望んでいた。だからあえて負けない程度に一人でアンに戦って欲しかったのだが……
「20人もいたのよ? 最初にドカンとやらないとこっちが危ないでしょ? 」
まあ、それもそうなんだが。もうひとつには、アンがバンドーの予想以上に強くなっていた事だった。
「判ったよ、今度から手加減する」
アンは、そう言うなり膝を抱えて下を向く。囲炉裏の中の小枝がパチパチと音を立てている。
実は戦いが終わってから、アンもやり過ぎに気付いていた。本音をいうと、バンドーに期待されて無意識に突っ走ってしまった。
「おう、期待してるからな? 」
バンドーも昔のバンドーではない。昔なら、激高していたかもしれない。
「今夜は敵も来ないだろうが、一応、念のために夜番はオンゴロにやってもらう。頼んだぜ? 」
「お任せあれ」
先の戦いでオンゴロを出さなかった理由は、夜の警戒をしてもらうためだった。
「それで次、何だが。ヘルミット、お前は何人までならやれそうだ? 」
「ご主人様、その問いは何人までなら殺れるかということですか? 」
一瞬考えたバンドーだったが、程なく口を半開きにする。
「違~よ、別に殺す必要はない。俺はお前に殺しは求めたりしない。結果的に殺っちまうのは仕方が無いが、何人までなら叩きのめせるか聞いてるんだよ」
(……中途半端な、そもそも暗殺を生業にしていたタウリに対して、殺さずに何人まで相手にできるかなど、聞いていい事だと思っているのかしら。そもそも考えた事もなければ予想も難しい、とは言えご主人様のおっしゃる事だし、ここは是非考えなければならないわ。せっかく正装できたのだし、今の私のできる事の最大限はご主人様にお仕えする事なのだから、まずは手足の1本でも切る事で済ますとして、でもそれなら薬で昏倒させることもありかしら?…… )
ヘルミットが何かぶつぶつ言っている。自分に言い聞かせているのだろうか。まあ、彼女の出自であるタウリは元々、暗殺を請け負う一族なので殺さずに済ます事に抵抗があるのかもしれない。
「……100人くらい? ううん、もっと? 」
取りあえず、注文も付ける。
「もちろん、私の出自がばれていないという前提ですが」
あ、ご主人様みたいなのは駄目ですよと、言いながらにこりと笑う。
「そ、そうか」
バンドーの口は再び半開きになっている。
「ほえぇ」とユメが声を出し、アンは黙して語らないが、その瞳は笑っていない。
「じ、じゃあ明日はヘルミットに出てもらう事にする。ユメは今度は後方を警戒してくれ。アンはサカエの里方面の丘陵で隠れて敵の様子を知らせるように。ヘルミットは以心伝心は使えるのか? 」
「問題ありません」
そう言えば、いい機会だから聞いておこう。
「ヘルミット、これは有名な話なんだがタウリは何故、お前ひとりになったんだ? 」
有名というくだりでヘルミットはやや首を傾げる。
「そうですね、父が最期に言っていましたが、タウリの持つ特殊な力故ではないかと。私自身はくだらない迷信だと思っていますが」
タウリの里を襲ったのはアルシャンドラ以下の魔法使いであることは間違いない。何故かヘルミットは生かされて彼女の下僕にさせられていたのだが、それ以外はことごとく殺されたという。そこまで説明しながら、ヘルミットは肝心な事は言わない。
「言えば、ご主人様にも害が及ぶかもしれません。でもヒントは、そうですね。タウリは目標を暗殺する前に呪言を唱えるのです」
それ以上、彼女は語ってはくれなかった。




