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君はあるがままに なるように  作者: 風神RED
第七章 サムニウムの後始末
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状況把握

イルミダとバンドーはデッドウィン山脈のふもとにある集落に来ていた。イルミダはブルカのようなもので顔を隠し、バンドーはと言うと黒革の鎧にブーツカットタイプのレザーパンツ、荒れ地に適したスパイクの付いたパラブーツを履いている。そして肩から腰に掛けてはイルミダのようにケープを巻いていた。腰には『血濡れのテュルフィング』を帯剣している。


イルミダが、いくつか丸石ルーン刻印マークを入れたところで人の気配がする。


「アインが世話になったようだな、訪問者よ」


「余計な事をしてくれた」


二人、扉もない入り口に立っていた。呼ばれるままに表に出ると、他に村人が何人かいる。


「私の名前はマノク、マノクでいい、訪問者よ。この村の長という事になっている」


予想よりも若い。恐らく20代後半くらいの屈強そうな男である。髪はダークブラウン、後ろで弁髪のように束ねている。腹に皮を巻いているが、胸から肩にかけては何もつけてない、むき出しだった。腰にはいくつかのナイフを指しているのが見える。


「私はガッサ、相談役じゃ。それにしても余計な事をしてくれた」


再び、否定的な言葉を口にするこの男は60台も半ばというところか。


「そいつはどうも」


顔を隠したイルミダが、何か言いだそうと足を踏み出したのを抑え、肩に手を回して引き留めながらバンドーはそう言うと、先程ぶちのめして転がっている男を指差して言葉を続けた。


「悪かったな、豚野郎を転がして」


室内を確認するなり、マノクはやや笑い、肩をすくめた。


「気持ちは判る。俺も許されるなら、そうしていたさ」


「そいつは徴税官じゃ! 」


言い放ったのはガッサである。


「 『前世回帰パーシィルメイ』から派遣されとる。もしも戻らねば兵士が何人か捜索に出されるじゃろう。お主のせいじゃ! 」


じい、とはいえ徴税官の乱暴狼藉には皆、頭に来ていたではないか。現に、両親を失って一人残されたアインすら手込めにしていたわけだからな」


「なればこそじゃ、そこまで我慢しておったというのに全て水の泡ではないか」


マノクは頭を振り、バンドーをかえりみる。


「すまないね、訪問者よ。君は襲われていた娘を助けただけだ。別に罪には問わないさ。ただ、最近は状況が複雑でね」


聞けばこの集落全体が、異端認定されているらしい。つまり、この村に住む全員が魔法スキル持ちという事か。オンゴロの説明を思い出し、バンドーはいくつかプランを考える。


「なあ、戦う気はないのか? 」


それを聞いてマノクは笑った。ひとしきり笑い、片手を頭にやりながら諭すように答えた。


「いいかい、少年。戦いとは、終わりを考えてするものだ。サムニウムの禁忌に触れた我々がここで歯向かったところで、正義は無い。そもそも、誰も応じんよ。まあ、今回の事も何か貢物でもしてうやむやにするさ」


「いいひとだな、あんた。なあ……今回の事は全て俺のせいにしてくれていいよ。村人は何も知らなかった。だから、何もかかわらなくていい」


「どういうつもりだ? 」


そこまで言ったところで、不意にバンドーの右隣りに人影が浮かび上がる。


「いまだ、周囲に不穏な動きはありませんな」


現れた男はバンドーにそう告げるとひざまずいた。


「オ、オンゴロ様? 」


「よお、マノクか。百人隊を束ねていたお主が、村長とはな。ところで何だ、この村は。しばらく来ないうちに覇気が無くなっているではないか」


イルミダが、また何か言いたそうにバンドーの肩をつかむ。


「まだだ」


バンドーはイルミダの耳元で、そう囁いた。二人のそんな様子にマノクは全く気付いていない。


「何処へ行かれていたのですか? 負け戦以来一体、それと彼は」


「まだ気づかんのか、お前も見ただろう? 私が血闘でこの少年に敗れたところを」


マノクはそこで改めて、バンドーの顔をのぞきみる。


「あ、ああ?! お前はあの時の冒険者?! 」


それがどうしたと言わんばかりに、バンドーは何も答えない。


「マノク、失礼だぞ。彼は血闘で私に勝った。サムニウム最強の戦士である私に、しかも魔法スキルを封じられてな」


むしろ、それが勝機だったのだが余計な事は言うべきではないだろう。ここにきて、ようやくバンドーは話を続ける。


「はっきり言っていいか? お前達にはもう、ここに居場所は無いんだろ?だったら俺が居場所を作ってやるよ。精神的支柱もな。王国で受け入れてもいいし、ここで反旗を翻してもいい」


だからまずは、今回の事は任せてみないかと。


「ようはやる気が出ないんだろ? 今まで信じていたものをぶち壊されて。だったら、俺がそれを取り戻してやるよ」


実は出発間際にカタリナ姫の来訪を受け、サムニウム族の始末は任せる、好きにしていいとの言質は取ってある。カタリナにとってもそれは渡りに船だったのだが。


取りあえず、半信半疑のマノクらを引かせ、転がしていた徴税官を縛り上げるとイルミダに命じる。


「お前はゲートで戻って新型銃の制作を頼む。回転弾倉とかいらないから、早く作れるやつがいい。数はそうだな、200で。金は好きに使ってくれていいし、それとヘルミットとユメをこっちによこしてくれ」


それで当面何とかする。たかだか徴税官がひとり戻らないくらいで、いきなり大人数は寄こさないだろうし、オンゴロもいる。


「三日で頼む」


結局出番が無かったイルミダは不満げだったが、それを察したバンドーはイルミダの耳元で囁く。


「お前には最後にまとめてもらう。サカエの里を落としたらな」


村人にゲートを見られない方がいいだろう。イルミダを家の中に戻し、何事もなかったかのように腕を組む。


「まさか、こうも正面から事を始められるとは思いませんでしたぞ」


とはオンゴロの弁だが、実はバンドーも同じであった。本来は、隙を見てイルミダの妹を救い出して、それで終わりにするつもりだった。


「なるようになるだろ。お前、サムニウム族で最強なんだろ? 」


イルミダを見せるのは最後でいいと思っている。下手に見せると身内を人質に取られる可能性もある。


「まあ、そうですな」


さて、どうなることやら。





























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