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君はあるがままに なるように  作者: 風神RED
第七章 サムニウムの後始末
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事始め

アイン・モルディシュ、14歳。サムニウムの娘、しなやかな肢体、加えて薄赤い肌。髪は腰まで掛かる長髪、ケープを羽織るのはサカエの里の風習か。それ以外は下半身を隠すレギンスのみ。やや小振りの胸はあらわになっている。羞恥で肌を桜色に染めているが、言葉は発さない。


「さぁぁぁぁあ! 20ゴールドからの開始だ! この娘はサカエの良民。スキル持ちだが、誰の手も付いていない、正真正銘の初物だぁ! 」


ここは薄汚れたキャンプ。大きめの幕間で区切られた、吹きさらしの大型テント。

有体に言ってしまえば、仮設の奴隷オークション。


サムニウム族は、カンタナ高原手前での敗北以来、四分五裂した。何となれば、率いていた絶対指揮者のイルミダ・リンデン・サカエがヒストニア王国に捕らわれた事。魔法を忌み嫌う風習にもかかわらず、ゴルツの鏡が割れた事によって、一族中に魔法スキルが散らばって定着してしまった事。それはサムニウム族を色分けしてしまった。


神器の選択によって穢れし者は不浄。


曰く魔法に犯されたのは神に見放されし証、それ神の意志による、よって奴隷に落とすべし。

そう標榜して勢力を広げた者達。かつての、部族単位の統治や因習はあっというまに形骸化した。


イルミタニアには比較的、人が持つスキルの類をのぞき見ることが出来る手段は限られているのだが、例外は何処にでも存在する。サムニウム族の秘宝、『ゴルツの鏡』と対を成す『アリオテの鏡』は魔法系スキルを見分けることができたのだ。新たに勢力を増した集団は『前世回帰パーシィルメイ』と名乗り、魔法スキル持ちを奴隷に落とすべく狩りまくった。


元より、魔法スキルに対する嫌悪がある。自ら奴隷に落ちる者、絶望して逃亡するのはまだよい方で、そもそも生きようという気力すら無くした者も多かった。


カンカンカンカン


銅鑼が鳴らされ、何者かがアインを競り落としたようだ。かつてはサムニウム族を統治し、権勢を誇ったサカエの一族の勢力範囲に含まれる集落での出来事。やがて彼女は屈強な肉体を誇る男に連れられ、陣幕の内に消えた。





集落のはずれの家、周囲を囲む塀は所々崩れ、扉もない入り口をくぐるとすぐ左手にかまどがある。

その奥には、囲炉裏を囲んで草で編んだ簡素な敷物が敷かれていて、光が通らないせいか薄暗い。


「んん、嫌ぁ、んんんぅ……?! 」


小柄な少女が大柄な男に襲われていた。少女は体力的に抗う術もなく、ただただ腕を振るうだけ。やがて男の太い脚が少女の脚の間に割って入り、少女は嫌々をするように首を振るう。だが、次の瞬間に彼女の瞳は見開かれ、やがて抵抗は止まる。


「へへ、……どうした? 」


そう言い放ち、上唇を舐めた男のすぐ背後から声がした。


「邪魔するぜ?! 」


少女に馬乗りになっていた男の脇腹を、蹴り飛ばし、薄暗い中で悲鳴が上がる。首をめ、そのまま投げ放ち、容赦なく蹴りを浴びせていく。


「ひぃ、ひぃぃ?! 」


「おら、立てよ」


ふらつく男を無理矢理立たせ、更に顔面に拳と肘を入れる。男は悲鳴を上げて、意識を狩られた。


「よお、大丈夫か? 」


横たわる少女の傍らにひざまずき、声を掛けるが返事はない。いや、言葉にならない言葉で彼女は返答した。


「あ、ぅあ、あ……」


「お前、しゃべれないのか? 」


少女は少しの間、逡巡したものの、頷いた。


「そうか」


彼女のいでたちは薄紫色のサーキュラースカートに上半身はベールしか巻いていない。恐らく、陽の光の下に出せば、上半身は透けて見えるだろう。首には銀色の首輪が巻かれている。


「彼女は恐らく奴隷だな。失敗したかもしれない」


いま一人、女の声がして入り口から狭い室内に入って来た人物の表情をうかがい知る事は出来ない。何となれば、彼女の顔はイスラムのブルカのようなもので覆われ、さらに背中、腕、胸をぐるりと垂らすようにケープが張られて首元で固定されている。下半身は比較的動きやすそうなスキニーパンツだが、腰のあたりはケープで隠されていた。


「この村で間違いないんだよな? 」


「オンゴロの話では、この村はいまだサカエの一族の勢力圏内の筈よ。取りあえず、村長むらおさと話をすれば、何か判るかもしれないわ」


それを聞いて、男は少女に向き直る。


「お前、ここの村長むらおさを知ってるか? 」


いきなり、少女は立ち上がるとすそをはらい、両手を前に差し出してとどめるようにすると、止める間も無く屋外に駆けていった。


「おい?! 」


残された二人は顔を見合わせる。


「イルミダ、面倒な事になるかもしれないから、ここで刻印マークしてくれ」


「判ったわ、『地の理に感謝して精霊の吐息を我に与えたまえ』 刻印マーク


青色の光が立ち、丸石ルーンに刻印が刻まれる。これでこの丸石ルーンにゲート魔法を唱えると、刻印マークしたところに飛ぶ事が出来るのだ。


「知っている人だといいけれど……」


ブルカで顔を隠した、その中で、彼女はつぶやいていた。






























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