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君はあるがままに なるように  作者: 風神RED
第一章 ユメとカスミ編
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初めての客

バンドー、お前はもうちょっとエロくなりなさい。こいつはなかなか作者の言うことを聞かない。一体、どうしてくれようか。

陽が落ちかけている。自分の家の庭先でしばし呆然としたバンドーだったが、


「まあ、その何だ。お前ら、今日は疲れてるだろうから俺の家で寝ちまったらどうだ? 部屋はあるから用意してやる。水を使いたかったら台所の水槽か庭の井戸を使っていい。お湯が欲しかったらカスミが作ってやれ。」


無事に地上に帰ってきて気が抜けたのか、二人はへたり込んでいる。迷宮の中は常に緊張するからな。しかも仲間を失った後だ。


「ギルドへの報告とかは明日でいいだろう。」


それぞれに個室を用意しようと思ったバンドーだったが、二人一緒がいいというので、Wベットのある客間をあてがうと、二人は部屋に消えた。


まあ、同じパーティにいて、戦闘中に仲間が死んだんだ。今夜は二人一緒にいたいんだろうな。


「だあぁ、疲れた・・」


ひとりになると、やはり本音が出る。取りあえず装備を外して肌着だけになると、庭先の井戸に降りて水を汲み、二度三度頭からかぶる。


バンドーの家は迷宮都市デスパレスの比較的郊外にある。15部屋はある間取りの2階建て。邸宅といってもいいだろう。ここから、街の大通りにある冒険者ギルドまでは歩いて30分くらいかかる。

バンドーにはゼノ式のスキル「飛足」があるので10分もかからないだろうが。


「・・・・どうすっかねぇ・・・・? 」


欠伸をうち、昇り始めた青い月を見上げながら、バンドーはつぶやいた。この世界、ネクストワールド・イルミタニアでは夜になると、赤い月と青い月が交互にあがる。



翌朝、バンドーは早めに起きると朝食の用意をするために台所に火を入れる。とはいえ、一人暮らしの男、まあバンドーは身体は16歳だが、特に何か食材のたくわえがあると言う訳ではない。


火を入れた中華鍋に、短剣を使って干し肉の塊から削りだした肉を落とし、卵を加える。それを3人分だ。

後は野菜と骨を煮込んだスープに黒パン。


(充分だろ? )


「バンドーさん、おはよ~。ごめんな~、世話になっとんのに、うち遅れて。」


ユメが肌着姿で現れる。この世界、皆わりと無頓着というか、現代風にいえば肌着は水着扱いと言おうか、ようするにそんなに服の種類が無いので、大事なところが隠れていたらOK的なところがある。


「お前らは一応、お客さんだからな。しかも初めての。」


「ほぇ? 」


「この家、建てたばっかで、まだ誰も呼んだ事なかったんだよな。」


皿にハムエッグもどきをのせながらバンドーは説明する。


「カスミは起きてんのか? 」


「それがなぁ」


何やら盛大に落ち込んでいるらしい。

昨夜、部屋で落ち着いていろいろと今までの事を二人で話していたらしいのだが、壊滅したパーティ

「希望の光」で一番の新人だった事、みんなが死んだ戦闘でファイアーボールをキャンセルさせて失敗した事。二人の死体をそのままにした事などが一斉に思い出されて、泣き止まなかったとか。


「そう言や、お前は案外普通だよな。」


バンドーさん!また余計な事を口にしていますよ?


「うちはな~、これでも落ち込んでんねんで? 」


なぐさめてや、と付け加える。聞くとユメは比較的新しく「希望の光」に参加したらしい。以前はゴールドパーティと組んでいたこともあったとか。だが、男女関係のしがらみがわずらわしくなって抜けたんだとか。


「まあ、うちマイペースやから。がっつり来られたら、引いてしまうんよ。」


ひらひらと右手を挙げてユメは言う。


「とにかく、カスミを連れてきてくれないか?メシを食い終わったら、話したい事がある。」


パーティの後始末の事やんね? OK了解と言い放ちながらユメはカスミを連れに部屋に戻る。


開け放たれた食堂の扉の先には庭が見え、干し肉の汚れていた部分を削り落して撒いた場所には小鳥が数羽、舞いおりて啄んでいる。テーブルに右肘を付き、顎を乗せて、その様子を見続けるバンドー


(そう言や、最近、潜ってばかりで、こんなぼーっとした時間なかったよな~。)


「・・バンドーさん、おはよーございます・・。」


カスミが来たようだ。泣きはらした赤い目をしている。とにかくメシだ。人間、お腹がすいているとネガティブも進む。何か腹に入れれば状況も変わるかもしれない。


「よっ、待ってたんだ。食おうぜ? 」


バンドーとしては精いっぱい気を使ったつもりの言葉。さあ、一日を始めようじゃないか。



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