あんのジジイ
ちょっと中途半端ですが投下。ぼちぼち更新していくつもりです。
祭りは往々にして人々を熱狂させるが、真に大変なのは後片付けである。
バンドー邸を襲った兵士達は無力化された後、あっさりと解放された。身元を確認したところ、全てハーフポート家の私兵であった。総勢にして150名あまり。彼らは告げられるがままに解散した。
主を置いて。
さて、件の首謀者エミリア・ハーフポートはというと、ぐるぐる巻きにされて頭から袋をかぶせられている。ご丁寧な事に、首には呪文の詠唱を防ぐために、沈黙の首輪が付けられていた。
「どうすんのよ、これ」
とはティアの談なのだが、一同言葉も無い。場所はバンドー邸内の応接間。荒事は得意だが、事後処理が苦手な面々である。総勢にして20名余りが詰めかけている。
ややあって、このメンバー内の良心ともいえる『音速』のナカジマが意見を述べる。
「とにかく代表者だけ残って、一旦解散しましょう。パーティメンバーは取りあえず、結論が出るまでは守秘義務を課すという事で。皆さん、よろしいですね? 」
残った面子はというと、『星屑の光』はティアとヒミカ。『鉄騎』はリーダーのグランツ。『紅蓮』からはカトルとカササギ。『音速』はナカジマである。あとはバンドーを筆頭に『銀翼の華』のメンバーが揃う。
「まず状況を整理しましょう。この・・」
ナカジマが指差す先はエミリアである。
「エミリアさんは現デスパレス冒険者ギルドのギルド長で、間違いないですよね?」
「そう言ってたな。レイ教授はどうなったのか知らねーが、俺が出したパーティ申請書を持ってたから、信憑性はある」
「なるほど、そしてバンドーさんに対して、パーティメンバーの引き渡しを要求したと。」
うなづくバンドーだが、パーティ結成の申請書は目の前で破棄された。真にパーティメンバーと言えるかどうか。
「問題ありませんよ。基本、ギルドは状況を把握するだけで、規定を満たしたパーティの設立を許可しないなど、聞いた事がありません。ギルド委員の私が保証します」
ナカジマの言に多少救われた気持ちになるが、状況はほとんど変わらない。
「それに、イルミダさんは既に冒険者登録を済ませているのですよね? 」
「ああ、それは間違いない。」
「だったら、王国は冒険者の身分を保証する義務があります。冒険者は王国の資産でもあるのですから」
とは言え、イルミダの出自を考えれば、その法も曲げられるのではないか?
「ふむふむ、バンドーさんの心配は判りますが、それも問題ありません。」
ナカジマの説明によると、同じ罪を二度裁く事は許されない、と法にあるのだという。
つまり、一旦処罰が確定したものを、同じ罪でさらに刑罰を加える事はご法度。今回の場合、イルミダは捕縛されたデスパレス冒険者ギルドによって一旦裁かれ、レイの意向でバンドーの奴隷に落とされている。
だから再び裁く事は出来ないのだと・・。
「・・待て」
ナカジマの流暢な説明に思わずスルーする所だったが、バンドーは済んでのところでコメントを差しはさむ。
「ナカジマさん? 今なんて? 」
「僕の知る限り、イルミダさんはバンドーさんの奴隷として登録されていますね。もっとも、仮登録なので奴隷紋の押印はまだですが。仮登録有効期限は2か月ですので、早く本登録して頂かないと困りますよ? バンドーさん」
(あんのジジィ・・! )
何度となく、イルミダの奴隷化をレイに勧められた事を思い出す。そうか、こういう可能性を考慮しての事だったのか、今更ながら、思い至るが釈然としない。とはいえ、今ここでそのまま言えばどうなる?
「・・あんのジジイ・・! 」
無理でした。
「どうしたんです? バンドーさん」
「ぐぅ、・・何でもねぇ! 」
カササギのバンドーを見る目が冷たいのは気のせいか。気のせいであってほしい。
「理由はともかくとして、バンドーさんのパーティメンバーを拉致しようとするなんて、許せません! 」
『紅蓮』のカトルが本気で怒っている。相変わらず、見た目は10代のハーフリングだが、魔術師としては王国屈指。そのパーティも魔法学校というか魔法に特化した編成で、本人も数々の魔法を治めている。
バンドーは人前では口にしないが、心の中では、カトルはレイ教授に次いで頭が上がらない人。
恩人と言ってもよい。
「バンドーさん、お客様です! 」
場が煮詰まったところで、カスミが客人を連れてきた。
フィーネが声をあげる。
「お義姉様?! 」
「あらあら、皆さんお揃いでうれしいわぁ」
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30年振りのサムニウム族蜂起、だがその雌雄を決したのはデスパレス冒険者ギルドであった。
その顛末にいささか不満を禁じ得ない者が王国にいたと思ってくれればいい。
例えば、国王その人ドッガーズであった。だが、彼も王国の頂点に立つ身、ましてやデスパレス冒険者ギルドの長を務めるレイ・クリサリス・バーサクを幼少時より知り、その底知れぬ手管を知っているとあれば、ことさらに口出しする事は慎むべきである事も心得ている。だが、それを焚きつけたものがいるのも事実であった。
それは王国内務省に所属する、不慮の事故で切られたエイリー伯の残滓。
「戻ったぞい。」
レイにとって、デスパレスから王都ハイナスケインに移動する事等、造作も無い。その気になれば、マーク禁止の王宮ど真ん中に転移する事も容易い。
「師父よ、な。怒っておるのか? 」
最初から腰砕けのドッカーズであった。それならいらぬ企てなどしなければよいものを、だがレイは自重する。
「はて、何のことかのう? 」
レイはあくまで冷静に聞く。
「カ、カタリナが推し進めたのじゃ! 後始末は早い方がよいと・・」
ドッガーズがひねり出す言葉の後半は消え入るようだ。
「一体、どういう訳か。説明してもらうぞい」




