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君はあるがままに なるように  作者: 風神RED
第六章  元の鞘
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逡巡

カスミがバンドー邸上空に放った爆炎エクスプロージョンはやがて消えた。

一群の兵士達は、既にバンドーのスキル『戦略眼』にインプットされている。

数にして41名の兵士達。軽装にして丸盾。


「ユメ・・、あれ何だと思う? 」


「うちあれどっかで見た事ある気がするんやけどなー。」


どこやったかなー、とユメはぶつぶつ呟いている。実はバンドーにも既視感があるのだが、何処でだったか思い出せない。


「ちっ! 」


言い放つなり、バンドーは屋根から飛び降りるとテラスを経由して庭に降り立つ。そのまま門まで駆け抜けると一足飛び、絶妙のバランス感覚で門の上に立つ。


「お前ら、何の用だ?! 」


「デスパレス冒険者ギルド、ギルドマスター、エミリア・ハーフポート様の命で参った。開門を要求する! 」


「エミリアだと? 」


エミリア・ハーフポート? ハーフポートだと? 嫌な予感がする。


「その通り、本日をもってデスパレス冒険者ギルドのギルドマスターに就任なされた。」


「どけ! 」


一団の中ほどから、赤毛の女騎士が姿を現すとバンドーを見上げた。


「私がエミリア・ハーフポートだ! 貴様が冒険者バンドーか。ここにかくまわれているイルミダ姫を引き渡してもらいたい! 」


イルミダを? 


「何だと?! 」


「イルミダ姫を王国騒乱の罪で拘束、王都に引き渡す! 」


話が見えない。どうなってやがる? レイ教授は? くそっ


「イルミダは俺のパーティ『銀翼の華』メンバーだ。その要求に応える事は出来ない! ギルドメンバーは王国によって保護される筈だ! 」


「これか? 」


エミリアが懐から出したのは、一枚の紙。それはバンドーも見知っている。つい昨日、ギルドに提出したパーティ設立の申請書だった。


「却下だ!! 」


言うなり、エミリア・ハーフポートは申請書を破り捨てた。


「私がギルドマスターだ。私が認めんものは、設立不可に決まっている。イルミダ姫を差し出せ! 」


バンドーの顔がゆがむ。破り捨てられた紙に視線がいく。左の指が無意識にポケットに入った指輪に伸びた。だがその時、


「止めなさい! 」


バンドーの傍らにフィーネがいた。いつの間に持ってきたのか、神盾『ゴッドブレス アラカン』に乗って宙に浮いている。神盾『ゴッドブレス アラカン』の盾の表面が金色に輝き、辺りを照らし出している。


「姫様? 姫様だ! 」


兵士達のつぶやきがまばらに聞こえる。


「エミリア殿、一体どういうことですか? 引きなさい! 」


「知っているのか? 」


バンドーが小声でフィーネに聞くと彼女はうなづいた。


「エミリア・ハーフポート殿はかつて私に求婚していたエイリー・ハーフポート伯爵の妹君です。」


そう言えば、ハーフポートの名前に聞き覚えがある。詳しくはバンドーも知らないが、確か王室侮辱罪で切られたとか何とか。


「これはこれはフィーネ様。ちょうどよかった、あなたにも帰還命令が出ていますよ? 王都で御父上がお待ちです。」


「何ですって?! 」


エミリアはフィーネの言葉を聞いても臆する事がないようだ。正義は我にありとばかりに剣を掲げる。


「あなたの、その身にそぐわない行ないがいけないのです。これ以上、陛下に心配をかけてはいけませんよ? 」


これは何だ? 一体どうしたらいい? 正直、40人程度の兵士であれば『銀翼の華』をもってすれば蹴散らす事も容易だろう。だが、蹴散らしてどうする? どうなる? では、イルミダを渡すのか? フィーネを手放すのか? 


「嫌だ。」


「はっ? 何と言いましたか? 」


「嫌だ! 俺はイルミダを渡さない、フィーネも返さねぇ! 」


エミリアは大きく息をつきながら、剣を真一文字に構える。


「総員、抜刀! かかりなさい! 」


およそ、双方まともな判断とは思えない。

だがエミリアは、大剣を構えるとスキルを爆発させる。


双撃ダブルスラッシュ! 」


かつてナカジマが使ったのをみたことがある、そのスキルだったが、威力が桁違いに違う。バンドー邸の門は音をたてて、崩れ去った。


「なっ?! 」


言うなり、バンドーは飛び上がっている。着地先は神盾『ゴッドブレス アラカン』の上、フィーネの背後。


「ちっ、フィーネ上昇しろ! 」


風を切る音。見る間にアラカンは数メートル舞い上がる。


「くっそ、どうする? 」


アラカンで逃げる事は容易いが、そのような事は出来る筈がない。奴らの狙いはイルミダ、彼女は今2階のテラスにいる筈。


「フィーネ、アラカンをテラスに付けろ。分断されたままだとまずい! 」


「了解。」


戦うのか? 逃げるのか? いまだにバンドーには迷いがある。だが、戦闘は始まっていた。


「ここは、通しません。」


正面玄関に押し寄せた敵の一段の前に立ちふさがっていたのはヘルミットだった。いつものメイド姿ではあるが、その両手には両端両刃の得物が握られている。上空にいるバンドーに視線をやる事も無く、


「ご主人様、よろしいですか? 」


その問いかけに、バンドーの口元はゆがむ。


「情報に無い人物ですね? メイド風情が抵抗するとは・・。」


もはや、やるしかないのか。バンドーが、そう決意をかためた時に異変は起こった。


「あっ、ぎゃ?! 」


「うあ?! 」


兵士達の一角が崩れる。


「何です? 」


一人、また一人、兵士が倒される。一体何が起こっているのか、判っていない様子だ。だがバンドーの目には見える。弓矢だ。黒塗りの弓矢がひとつ、またひとつと飛んできては、兵士達に突き刺さっている。


動揺が走る兵士達に、今度は一陣の影が駆け抜ける。


「あれは? 」


やがて、その影はエミリアを認めると凄まじい早さで切りかかる。エミリアは大剣で防ぐと前蹴り気味に相手を突き放した。


「お前は誰です?! 」


エミリアの問いに影は応えた。


「我が名はオンゴロ、サムニウムの勇者。姫に仇名すものは何人たりとも許さん! 」












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