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君はあるがままに なるように  作者: 風神RED
第六章  元の鞘
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お前は一体何を言ってるんだ

ヒストニア王国、第2王女 カタリナ・マリア・バルヴィオーネ。ちなみにセカンドネームのマリアは、エレイラの前のお妃の名前で、フィーネとは腹違いの姉に当たる。


前王妃マリア・カッパーニ、カッパーニ女侯爵とも呼ばれたその人は、既にこの世界にはおらず、人前で言う事もはばかれるのだが、不倫・公金横領の罪で追放処分になったところを、不慮の事故で亡くなっている。その跡を継いだ形で、今現在、カッパーニ領に降嫁して侯爵家を継いだのがカタリナであった。


当年22歳、ふくよかな体つきと豊満な胸に華やいだ衣装を着たこの女性は、ヒストニア王国、第2王女 とは言え、現カッパーニ侯爵でもある。


「ふん、そのような格式ばった物言いは、お主に似合わんわ。」


「あらん、せっかく格好をつけたのにひどいですわね、先生。」


カタリナ・マリア・バルヴィオーネ、もといカタリナ・カッパーニ女侯爵は胸の谷間から扇を取り出すと、口元に当てる。


「お主が出てきたという事は、ドッガーズも本気のようじゃの。」


事前に何事か聞いていたのだろうか、レイは不機嫌そうな口調で、そう言うと大きく息を吐き出す。


「エミリア? 」


カタリナは顎をしゃくるように、傍らに控えていた女騎士に合図を送ると、傍らの女騎士は一歩前に進み、紙に巻かれた書面をレイの執務机の上に置く。


「国王陛下からの命令書です。どうぞ、御改めください。」


丸められた書面は、厳重に蜜蝋で封印されており、王国の守護神『アラカン』の印が押されている。

紛うことなく、国王ドッガーズからのものであった。


「やれやれ・・。」


「国王陛下より口上も承っております。デスパレス冒険者ギルド、ギルドマスター、レイ・クリサリス・バーサク、その任を解いた上、王都に帰還すべし。加えて、王室最高顧問に任ず。この命令は、口上を述べたと同時に発効する。」


女騎士が口上を述べるのを尻目に、封印を解いて書面を確かめるレイの眉がピクリと反応した。


「ぬしが? 」


書面の中身は地位任命書。具体的に言えばデスパレス冒険者ギルドのギルドマスター解任と新ギルドマスター任命が明文化されていた。


「左様です、レイ様。私、エミリア・ハーフポートがデスパレス冒険者ギルドマスターに就く事になります。」


ヒストニア王国の冒険者ギルドは王立であり、王国が運営している建前になってはいるものの、騎士がギルドマスターに任命される事は、ほとんどない。独立独歩の気風もそうだが、実際問題として海千山千の冒険者達をまとめる仕事は、騎士や宮爵よりも経験を積んだ冒険者に任せた方が、遥かにうまくいく。


とはいえ、レイも冒険者ではないのだが。


「くっくっくっく、ドッガーズの奴。事もあろうにデスパレスの冒険者ギルドを玩具おもちゃにしようとは。」


笑いが止まらんとばかりに、レイは肩を震わせている。


「なっ! 無礼でありましょう! 」


「レイせーんせ。」


憤懣ふんまんやるかたないエミリアを無視するように、カタリナは声をかぶせた。


「フィーネちゃんを預かっておきながら、冒険者に丸投げしてるんですってねぇ? それどころかサムニウムとの戦いに出したり~。」


動きを止めたレイはカタリナを見るが、その口元は若干、ゆがんでみてとれる。


「最近では、フィーネちゃん。街の神殿をぶち壊したんですってぇ? 」


「むむむ。」


「むむむ、じゃないわ、せーんせ。フィーネちゃん大好き陛下がここを監視してる事くらい、知っとかなきゃ~。お・い・か・りよ? 」


ドッガーズが怒髪天どはつてんを突いて


『すぐ戻って説明せーい!!! 』


と叫び放っている姿が目に浮かぶ。状況を理解したレイは肩を落とし、立ち上がった。


「判ったわい。一旦は受けるとしよう。じゃが、」


女騎士エミリア・ハーフポートに向き直ったレイは言葉を続けた。


「くれぐれも言っとくぞ。わしが再任されるまでの間、余計な事はするな。それが御身のためよ。ここは魔窟、ゆえにお主の手に余る。」


「お言葉、参考までに受け取っておきます。前ギルドマスター殿。」


「ふん! 」



______________________________________________



夜、バンドー家の面々は夕食を終え、それぞれにくつろいでいた。

パーティ『銀翼の華』結成時のメンバーは今まだここにいる。普段は根無し草のユメもめずらしく、バンドー邸にたむろっている。


食堂のテーブルを囲んでイルミダとバンドー、それにカスミが座っている。テーブルの上には組み立て途中の『ツインズパイソン』が2丁。イルミダがカスミに、その整備方法を教えている途中。


「む~! 」


イルミダからもらったそれを日常使うためには不可欠な知識なのだが、こういうメカニカルな事がカスミは苦手なようで、なかなか組み立てられないでいる。


「ご主人様、お茶が入りました。」


ヘルミットの持ってきたティーカップを手に取ると、いい香りが辺りに漂った。


「カスミ様もどうぞ。」


「ありがとうございます~。」


最近、カスミはヘルミットとも仲がいい。家事全般を教わっているようで、それに加えてこうの調合や効能も覚えているらしい。


コツン


微かな音にバンドーが反応する。窓を小石が叩いたのだ。

ヘルミットもわずかに反応し、持っていた盆をたずさえると一礼して素早く室外に消えた。


「カスミ。」


バンドーは壁に立てかけてあった魔法杖をカスミに投げてよこす。


「フィーネとアメリアは上か? 」


バンドーはテーブルの端に置かれていた籠手『双頭蛇ケーリュケイオン』を左腕に装着しながら聞く。

両者とも、2階の自室にいる筈だった。


「合流する。イルミダも行くぞ? 」


先に組みあがっていた『ツインズパイソン』を腰の装着具にしまいながら、イルミダもうなづく。


階段を駆け上がりながら、バンドーはスキル『戦略眼』を発動させた。

急速に広がる視界。バンドー邸を真下に俯瞰する光景を確認するも、まだ少し情報が足りない。


フィーネとアメリアを部屋から出し、2階のテラスに出ると屋根を仰ぎ見る。


「ユメ? 」


夜である。当然、辺りは暗い。喋らなければ、虫の音がかすかに聞こえる位だ。

バンドーは左腕に装着している『双頭蛇ケーリュケイオン』のアンカーを伸ばすと屋根に飛び上がる。


「速かったねー。うちもう、びっくりやわ。」


小窓を叩いた小石は、ユメとあらかじめ決めていた合図。


警戒すべし。


だが状況は、まだ判らない。


「いるのか? 」


誰が? とは聞かない。無論、それも必要な情報だが、深夜に人の家に押し入って来ようとする者は敵しかいない。それがイルミタニアの常識だった。


「んー、なんか意外とかたまってる。」


「一度確認したら、『戦略眼』に取り込める。何処だ? あん? 」


最後のバンドーの言葉は、ちょっと間が抜けていた。彼とて気配感知は持っている。捉えた気配は門の方向。


「カスミ、爆炎エクスプロージョンを上に放て。」


時差爆発系の呪文である爆炎エクスプロージョンがバンドー邸の門上空で爆発する。

浮かび上がったのは、軽装に丸盾を手にした一群の兵達だった。数にして40人ばかりか?


「なんだありゃ? デスパレス治安部隊か? 」


現在デスパレスには、守備の為に王国兵が500人ほど駐屯している。装備はそれに近い。


「開門せよ! デスパレス冒険者ギルドの命である! 」


「はああ?! 」


何が一体、どうなっているんですかね?














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