章間のネタ晴らしを兼ねた閑話
明けてバンドー邸の一室での出来事である。
「嫌よ! 絶対、嫌! 私は、このままがいいわ! 」
腕を組んで主張しているのはミリアマリア。
もとい現在は成長して少女の形をとるミリア・コルツ・ド・カルガリー。成長すると、記憶と知識がわずかに戻るのか、迷宮デスパレスでの事も覚えているようだ。
成長したというのにどういう訳か身体にフィットする、赤と黒の特徴的な衣装が目を引く。そう言えばいつも同じ衣装なので、実は身体の一部なのかもしれない。それ以上に、切れ長の瞳と形の良い口元が印象的だ。
「お前の、その姿でも拒否反応を示す奴が、身内に一名いるんだ。戻す。」
身内とはカササギの事である。デスパレス55階層でミリアに初遭遇した折、危機的状況で助かったのは、ミリアがバンドーの魔力の器(最大魔力量)に魅せられて魔力吸収しようと、情事に及んだからであった。つまり、自らバンドーの『魔力分解』にはまり、抜け出せなくなったのだ。それを目の前で目撃したカササギは、ショックのあまりパーティを離れて、魔法の師匠であるカトルの『紅蓮』にいってしまった。
「絶対に嫌! 」
今のミリアは、ミリアマリアの時より成長しているものの、デスパレス55階層で出会った当時ほどではない。とはいえ、少し幼さを残すだけで面影はある。
普段のミリアマリアは薄赤い短髪なのだが、今は髪の毛は肩まで伸び、胸のふくらみも多少ある。何より、130センチくらいだった身長が、今は160センチくらいに伸びていた。
理由は、他のヴァンパイア・サキュバスの存在が明らかになった時点で、同じ力で対抗できる味方が必要になるだろうというバンドーの判断からだった。
ちなみに、方法としては、ティア立会いの下でエナからもらった『スキル封じの指輪』を行使し、バンドーの『魔力分解』を一時的に封じて彼の体内から魔力を湧き出させ、嫌がるミリアマリアに命令して無理矢理魔力を吸わせたのであった。
「お前のその姿は目立ち過ぎるし、何より魔力を吸ったせいで種族固有魔法も使えるようになってるんだろ? 命令できる俺がいつも側にいられればいいんだが、そうもいかねえし第一・・」
「理不尽だわ! 無理矢理に私に魔力を吸わせた上に、用が終わったら今度は私から魔力を取り上げる訳? 信じられない! 」
おっしゃる通りです、はい。でもねミリアさん、世の中には自分の思い通りにならない事がたくさん、あるんですよ?
(面倒くせぇ。)
バンドーはミリアの腕を引くと、無理矢理引き寄せる。左腕を肩に回し、右手を頭に当てると、彼女の左耳元でつぶやいた。
「ミリアに命令する。」
「やだ、やめて!」
耳を塞ぐように手を当てるミリア。
「・・種族固有魔法の使用は禁止。今まで通り『星屑の光』メンバーとして、ティアの下につけ。」
一瞬の間。
涙目で頭をかかえて、耳を塞ぐようにしていたミリアが、ようやくこちらに視線を向ける。
それを見て、バンドーは彼女の肩をついて突き放す。
「か、感謝なんかしないんだからね! 」
ミリアは、やがてゲートを唱えると部屋から消えた。どうやら成長しても、ミリアマリアの時に覚えた位階魔法は健在のようだ。
「・・あ~、何か今回は終わりまで、ぐだぐだだったなぁー。」
ひとり取り残されたバンドーの、心の底からのつぶやきだった。
あー、何か今回は最後までぐだぐだでしたね。間が空いた事もあるし、反省してます。




