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君はあるがままに なるように  作者: 風神RED
第五章 妖しい瞳に ご注意
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ほえ?

迷宮都市デスパレスの冒険者ギルドは、地上4階、地下2階。正面から入る入り口は3つあって、左は冒険者の初心者の受け入れ、右は通常冒険者。そして真ん中は、イルミタニアに召喚された者が適性試験を受けるための受付口が奥にある。バンドーは一番右の入り口をくぐり、奥の階段を4階まで上がると、ギルドマスターの執務室入り口、扉の前で立ち止まる。


「レイ教授、いるかー?! 」


バンドーが扉に手を伸ばすと同時に内側から開かれた。見ると目の前にティアがいる。


「よぉ! 来てたのか。」


「あら? ケイン君、ちょうどよかったわ。」


何故か、ティアと久しぶりに会った気がする。ティアは薄赤い色をした髪の毛に軽く手を通しながら、


「さっ、入って入って! 」


そう言うと、バンドーの入室をうながした。

中には、『星屑の光』のミリアマリアとヒミカがいる。『音速』のリーダー、ナカジマとギルドマスターであるレイ教授も。


「ナカジマさん、おひさ! 」


ナカジマも軽く片手を挙げて応える。


ナカジマは27歳。こちらに召喚されて、既に10年近くになる。180センチ近い長身のゴールドクラス戦士なのだが、転職の末、実際は第6位階程度までの魔法と若干の盗賊スキルも持ち合わせている。思慮深い性格で、彼を慕う冒険者も多い。迷宮都市デスパレス最古参のパーティ、『ワーズワース』にはかなわないが、パーティ『音速』はデスパレス冒険者ギルドを代表するパーティの一つと言えよう。


「バンドー、相変わらず君は元気だね。ところでギルドマスター・レイ。先程の話の続きなんだが・・・」


冒険者ギルドから特命で受けた依頼からパーティメンが戻らない。連絡が二日途絶えている。『音速』でも捜索はするが、ギルドにも捜索願いの依頼を出したい。


ナカジマの話を要約すると、そう言う事らしい。


「確かに、デスパレスに潜っているならともかく、地上での連絡途絶は異常じゃな。ギルドの仕事として捜索依頼を受ける事も問題はない。こちらが頼んだ事でもあるしな。ただ・・、」


レイ教授は言葉を切ると、長い髭に手をやる。


「・・問題は依頼の危険度じゃな。」


『音速』が受けていたギルド特命任務は最近、頻発していた高魔力保持者を狙った誘拐や通り魔に関する情報収集だった。既に数名の、それもゴールドクラスを含む行方不明者が出ている。その捜索と情報収集に出たゴールドクラスの魔法使いアカリとシルバークラスの暗殺者ミヤウチまでもが行方不明になったとなれば。


「やはり、最低でもゴールドクラス以上の依頼とする必要があるのう。さて・・」


レイ教授、こっち見るんじゃねぇ! いや、ナカジマさんの頼みなら引き受けるのにやぶさかではないのだが、昨夜フィーネを襲われた身としては、事情が立て込んでいるというか。


「 『星屑うちの光』がやっても、いいわよ? 放置できないのは確かだわ。それに、私には魔法探知マナマークがあるし。 」


魔法探知マナマークはティアのオリジナル魔法で、簡単に言えば登録したメンバーの居場所を瞬時に把握できる魔法だ。距離と人数には限界があるらしいが、『星屑の光』メンバーは全員、登録済み。後は彼女の好みでマークしているらしいが、詳細は本人しか知らない。


以前、カスミがスラム付近で襲われた時にティアが迅速に駆けつける事が出来たのも、このオリジナル魔法による。襲った冒険者達が言っていた、”『星屑の光』メンバーの魔法探知能力”とは、そう言う事なのだ。


「バンドーも手伝ってくれるわよね? 」 


にっこり笑顔で言われても、いや手伝う気はあるのだが。


ちなみにティアは、仕事の上ではバンドーの事をバンドーと呼ぶ。


「助かる。それでは私はこれで。実は階下にメンバーを待たせているのでね。」


ナカジマさんは、そう言うと立ち上がる。一刻も早く、自分でも捜索に出たいのだろう。確か『音速』は予備メンバーも含めて、10数名いたと思う。


「くれぐれも気を付けるんじゃぞ? 何か情報を手に入れたらギルドにすぐ報告せい。」


ナカジマさんが抜け、部屋にはティアとミリアマリア、そして『星屑の光』副官のヒミカ・カツラギにレイ教授。


「ところでバンドーは、ここに何しに来た訳? 」


ひどい言い草ですね、ティアさん。バンドーは一瞬、口を半開きに開けるが、気を取り直してレイ教授に向き直る。


「実はさ、教授の意見を聞きにきたんだよ。」


「ほぉ? めずらしいの。お前さんがわしを頼りにここに来るとは。」


ええ、その通りです。普段はレイ教授に無理矢理、呼び出されたり、月一の検査報告に来たり。女奴隷を押し付けられそうになったり、バンドーにとってはいろいろ言いたい事が山ほどあるのだが、頼れることに変わりはない。


「実はさ・・・・」


もちろん、話し始めたのは昨夜の事。フィーネ姫の様子や黒い靄の話。その後の魔力枯渇に似た状態。

バンドーは思い出せる限りの事を話す。話しながら、自分の頭の中も整理されてくる。


(あれ・・? )


フィーネを黒い靄から救った時に感じた違和感を思い出す。


(・・・こいつ以前、似たようなのを見た・・・か? )


昨夜、ふとそう思ったのだ。直後のフィーネの様子に気を取られていたが。


「どうした? 」


唐突に話を止めたバンドーに、レイ教授がつっこみを入れようとした時の事だった。


「ねえ、それって似たような事、以前デスパレスであったわよね? 」


え? あれっ? 


「ほら、4か月くらい前かしら? 55階層で打ち切った・・・・。」


「・・・・あっ、ミリアマリアのあれか?! 」


ずっと退屈そうにしていたミリアマリアが ほえっ? と言いながら、こっちを見た。


身長130センチくらい。背中に小さな赤い羽根、薄赤い肌。最近は位階魔法を極めつつある、この小悪魔的存在は、ギルド内では都合上、ヴァンパイアの亜種、という事になっている。事実、そうなのだが。


正確にいうとヴァンパイア・サキュバス。極めて珍しい種族で、バンドーもティアも、ミリアマリア以外で同種族を見た事が無い。見た事が無いのに何故、種族が特定できるかと言うと、ふにゃふにゃになって回収したところを持ち帰り、レイ教授に鑑定してもらった訳なのだが。


「・・・・お前かぁ・・・・?! 」


「嫌ぁ・・・・! バンドーさん、嫌い! 」


ミリアマリアは小さな羽根を動かして、ソファの裏に逃げようとする。


お約束のやり取りなのだが、今回のバンドーは一味違う。


「ミリアマリアに命ずる。こっちに来い。」


途端、悲鳴をあげるミリアマリア


「やぁー、バンドーさん、ずるい!  うう・・・・」


ミリアマリアはバンドーの命令には逆らえない。普段、バンドーは命令などしない。しないのだが実は逆らえないのだ。何故かと言うと、ヴァンパイア・サキュバスは初期化された相手の命令に絶対服従。そのように造られている。


レイ教授の鑑定眼によると、ミリアマリアの小さな胸の中、奥底に存在する黒の魔石に魔法術式で刻み込まれているらしい。広義に言えば、ミリアマリアもモンスターの一種であり、魔物と言ってもいいかもしれない。


迷宮デスパレスにおいて、バンドーはソロでは50階層が限界だが、かつてティアやカササギ達とパーティを組んでいた時に一度だけ、55階層まで降りた事がある。そこでキャンプ中、パーティの魔法使いの一人が、黒い靄のようなものに襲われた事があった。バンドーがゼノ式であっさり撃退したので、あまり記憶に残らなかったのだが。と言うより、それに続いて姿を現した存在の方に気を奪われたから、というのが正しいか。


薄赤い肌、赤褐色の髪、赤と黒の特徴的な衣装。深紅の、広げれば4メートルちかくになるであろう翼を持ち、銀色に輝く爪を口元に当てる、人でいえば見た目20歳くらいの美少女。いや美悪魔だろうか。


現在のミリアマリアからは、想像もつかないそれが、バンドーを見るなり全力で襲い掛かってきたのだ。


ティアやカササギの魔法攻撃をものともせず、パーティに参加していた戦士の斬撃も効かず、唯一、バンドーのゼノ式は効いていたようなのだが、決定打には至らなかった。


「・・・・うう、バンドーさん何? 」


「お前がフィーネを襲ったのか? 答えろ! 」




























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