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君はあるがままに なるように  作者: 風神RED
第五章 妖しい瞳に ご注意
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嫌 だ !

残業が込んで、せつないのです。


「 嫌 だ ! 」


”月下桃華の峰”から戻ったバンドーはカササギと別れ、冒険者ギルドにレイを訪ねている。


「お主も、頑固じゃのう・・。」


バンドーが何を嫌がっているかと言えば、先のサムニウム戦で降ったイルミダ姫の処遇についてだった。


「お主も知っての通り、あの女、イルミダ・リンデン・サカエがサムニウム族を指揮しとった事は、ギルドの複数の人間が見とる。例えわしが王国への報告を封じたとしても、いずれ誰かから洩れるかもしれん。」


ようするに、虜囚として降ったイルミダ姫をバンドーの奴隷にしろと、レイは言っているのであった。現状でも、充分イルミダはバンドーに懐いている、というか忠誠を誓っているように見えるのだが、正式に又は対外的に奴隷とした方が、レイにとっては説明しやすい。


「だから、形だけじゃと言うとろうに・・。」


王国内の正式の奴隷となれば、背中に奴隷紋を背負い、忠誠の首輪を付けられる。もしも主人を裏切った場合は死をもって償わねばならない。


「レイ教授、奴隷を押し付けるのだけは勘弁してくれ。俺は女を奴隷に持つのだけは、嫌だ! 」


珍しいものを見るかのように、レイは目を細める。


「お主、何人も屋敷に若い女を囲っといて、よく言うのう・・。」


今回ばかりは、バンドーも頑固であった。


「いいか、レイ教授考えてみてくれ。彼女は魔法を嫌悪するサムニウム族だ。そのイルミダが、俺の元で魔法使いとして修行する。これで対外的には充分じゃねぇか? サムニウム族が降って魔法を使うんだ。そうだろ? 」


(こやつ、言うようになりおったわい。まあ、そう仕向けたのはわしなんじゃが・・。)


「・・・・ふん、まあ・・・今回はよいわい。それで? 話を戻すがエナから指輪をもらったそうじゃの。」


バンドーは、机の上に、エナからもらったスキル封じの指輪を置くと腕を組む。


「どれ・・。」


レイは指輪を手に取り、光にかざすように眺める。回しながら、表面に彫り込まれている文様を追いかけている。


「ふむ、・・これはあれじゃな。エナが魔神からもらったやつじゃな。昔、見せてもらった事があるわい。」


「まじかよ? 」


「まあ、エナはその道に進まんかったからの。しかもお主には『魔力分解』があるで、渡したんじゃろ。じゃが・・、奴も思い切った事をしたのう・・。」


まるで判らない。バンドーは話半分に聞きながら、自分の持っていた疑問の方をぶつける。


「レイ教授、俺がこれで『魔力分解』を封じたら、どうなる? 」


「その前にじゃ、お主の認識を改めねばならんぞい。」


質問をかわされて、ハンドーは口を半開きにする。


「なんだ、そりゃ? 」


「お主、確か『魔力分解』のコントロールに成功したとか、言ってたじゃろ? 」


「ああ? あっ! 」


バンドーも思い至る。そうなのだ、ティアと二人で魔力分解の作用を試し、発動と抑制に成功したのは、デスパレスに来てからの事だった。かつては、彼のスキル『魔力分解』は無秩序というか、パッシブに作用していた。常に発動し続けていて、魔法障壁を無意識にまとうミリアマリアに触れて昏倒させた事も何度かあるくらいだ。


だが、ティアと訓練を続けた結果、何とか発動と抑制に成功していた。今は、抑制していればミリアマリアに触れても無秩序に魔力を分解したりはしない。


「つまりじゃ、お主は結局、『魔力分解』をコントロール仕切れてない事になるの。」


そうなのだ、本当に抑制しきれているのなら、抑制している時に体内から魔力が湧いてきてもおかしくはない。コントロールしたつもりで、仕切れていなかったという事になる


「つまりあれだよな。抑制したつもりでも、俺の体内では相変わらず『魔力分解』が発動し続けていたって事になるか・・? 」


「ふん、ようやく悟ったか。 というかまあ、これもサムニウム族との戦闘で判明した事と言ってもよいかの。」


自分の力をコントロール仕切れていない事を突き付けられて、バンドーは言葉も無い。無理矢理、抑え込んでただけって事か? 


「・・・・で、どうなる? この指輪は嵌めちまっても、いいのか? 」


「お主、二日ほど寝込んだじゃろ? あれは魔力酔いじゃ。お主の身体は魔力に慣れておらんのじゃろう。後は自分で考えるがよい。」


それと、これを見ておけ、とレイは付け加え、バンドーに紙片を渡す。見ると、何やらスキル名がずらずらと書かれてある。


”前世知識”

”戦略眼”

”部隊指揮”

”魔力増大”

”深淵を探求するもの”

”絶対魔法障壁”

”大魔導師の末裔”

”魔力回復強”

”イルミタニアの申し子”


「何だこりゃ? 」


「イルミダの保有スキルで主なものを抜き書きしたものじゃ。わしがどうしてあやつを王国に差し出さなんだか、これで判るじゃろ。」


不意に全く別の事を投げかけられて、思考の切り替えに手間取ったものの、バンドーは思わずレイの顔を見る。


「まじか? 聞いた事も無いスキルもあるぜ、これ? 」


「まさに珠玉よの。処刑するには、惜しすぎるわい。じゃが、放し飼いにするには危険じゃろ? 」


バンドーは、ようやく悟った。レイが執拗しつようにイルミダを奴隷に落とそうとしていた訳を。決して王国に対する対外的なものだけではないのだ。


「どうじゃ? これでも、奴隷にはせんか? 」


確かに、これだけのスキルを持つ事が知れれば、逆に殺されるかさらわれるかしても、おかしくはないだろう。だが、これだけは譲れない。


「・・レイ教授、俺が面倒見るよ。だから、奴隷だけは勘弁してくれ。」


「この頑固者めが。・・まあ、そういう所は、嫌いではないぞい。それとじゃ、もう一つ伝えておく事がある。最近、高魔力保持者を狙った誘拐や通り魔が頻発しておる。お主の所も、用心せい。」


以上、帰ってよし、そう言い放つとレイはバンドーを追い出した。


外は、もう陽が落ちかけている。


何だか今日は内容の濃い一日だったな。考える事が多すぎる。


「ちっ! 」


バンドーは舌打ちをすると、ゼノ式のスキル飛足を発動するのだった。

















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