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君はあるがままに なるように  作者: 風神RED
第五章 妖しい瞳に ご注意
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カスミよかったな

迷宮デスパレス5階層のテラスに開かれたゲートをくぐると、そこは冒険者ギルド前だった。陽は、やや落ちかけている。右側の通常入り口から入り、奥のカウンターで任務の報告を行う。


カスミは晴れてブロンズプレートに昇格し、見習いを卒業した。


「バンドーさん! 今までありがとうございました! 」


カスミは嬉しそうにブロンズプレートを掲げているが、何のことは無い、まだまだ下っ端である。けれど彼女にとっては、感激がひとしおであったらしい。まあ、そうかもしれない。結局、”希望の光”は解散せざるを得なかったし、その他にもいろいろあった。いろいろあったのである。


「カスミちゃん、おめでと! 」


一番にユメが祝福している。まあ、彼女は前のパーティからの仲間だからな。


「お前、魔法のセンスはあるんだから、これからも頑張れよ? 」


バンドーもカスミの頭を撫でてやった。


後は酒場でパーティだった。そう言えば、家にいるみんなで酒場に繰り出した事なんか無かったな。


冒険者と言えば酒場である。とは言え、一応バンドーは身体が16歳であるしカスミやユメは未成年。フィーネに至っては12歳と、ろくに飲める面子がいない事も起因していたのだろう。


だが、この世界イルミタニアには生憎、法律上の飲酒制限など無いし、止める人間もいない。ついでにティア達を呼んで酒場を貸し切れば、変な奴らにからまれる心配も無い。


何より、この前のサムニウム族襲来の報奨金が出て懐も温かいし、ついでに戦勝の祝いも兼ねてカトル達も来るとなれば、これは騒ぐしかないではないか。


乾杯!


と言う訳で、カトルがフィーネを可愛がったり、ティアがいきなり脱ぎだしたり、アメリアさんが竪琴を演奏しだしたり、ミリアマリアが机の上で踊りだしたりした挙句、夜は更けていく。


バンドーは、そんな喧騒を抜けて夜風にあたりに外に出る。


「いい夜だな。」


少し前までは、こんな夜が来るとは思ってもいなかった。


「バンドーさん・・。」


いつの間にか、傍らにカスミがいる。


「私ね、この世界に来て、今が一番幸せです。」


「よかったな、カスミ。」


何気無い一言。だが、カスミはうつむきながら、言葉を続ける。


「私ね、ここに来る前は、ほんといらない子呼ばわりされて。」


何やら重い話なのだが、程よく酔っているおかげで聞く事ができる。こういう時は、酒っていいな。


「お義父さんから、いつも、そう言われてたんです。」


そう言えば、カスミは自殺したんだったか。何か出会った時に、そんな事を聞いた気がする。


「カスミ、この世界の上にはまだ世界があるんだ。シャンドラだっけ? 昔、師匠が言ってたな。」


「えっ? 」


「なんだっけ、6つの階層があって、俺達がいた前世世界が下から2番目で、上に行くほど精神世界になるんだっけ? んー、あんま憶えてねぇ。」


カスミが判っているのか、へーとか言ってる。


「まあつまりだ、ここでは望む思いが強いほど力が手に入るらしいぞ? 上に行けば行く程な?  」


だから、折れるな。思えば力になる。もちろん、努力もいるが。


バンドーは、そんな事を言いながらカスミの肩に触れる。


「でも、お母さんには悪いことしたな・・。」


カスミは泣き上戸なのだろうか。それとも、喧騒から離れればテンションが落ちていくタイプか。いずれにせよ、バンドーは深く聞かない事にする。


「カスミ、後悔には2種類あってな。」


「えっ? 」


「取り返しのつく後悔と、取り返しがつかない後悔だ。取り返しのつく後悔は頑張ればいいが、取り返しがつかない後悔は、どうしようもないから忘れちまえ。」


カスミは何事かを思い出すように、考え込んでいる。


「それよりか、自分に今できる事をやるんだ。」


カスミが、いつの間にかバンドーの顔を見ている。そして、ぎゅっとバンドーに抱きついた。


「はい・・。」


「それが、いい子の秘訣だ。」


バンドーはカスミの背中をぽんぽんと叩いた。


「バンドーさん、ずるいです。」


意味が判らない。


「かっこよすぎて、ずるいです。」


かっこいいか? 俺は本当は弱いし失敗は多いし、くだらない人間だぜ?

だが、ここは、思ってもそんな事は言わない方がいいのだろうな・・。


「中に戻ろうぜ? 」


バンドーはカスミをうながすと酒場に戻る。中は相変わらず喧騒の真っ最中。


「カスミちゃん、何処に行ってたの?! カスミちゃんの卒業を祝ってかんぱーい!! 」


ティア、一体何回、同じ理由で乾杯するつもりなんだ? そもそも卒業って。


「ケイン兄様は、相変わらず、手が早いのですね。」


いけない、カササギの目が座っている。実はゼノ式の『月下桃華の峰』を出てデスパレスに来て以来、バンドーとカササギの間には、とある事情で隙間風が吹いている。カササギと話をするのも近くで食事をするのも久しぶりだったり。


「しばらくひとりでやっていると思えば、いつのまにか女をはべらせたり・・。」


誰だ、こいつにはちみつ酒を飲ませたのは。


「カササギは、呆れてものも言えません。」


いけない、これ以上カササギを放置してはいけない。バンドーはちらりとティアを見る。


「カササギちゃん、お姉さんと最近の魔法事情の話でもしましょ? 」


さすがだ、ティア! いつもながらナイスフォロー。


「ティア姉様もティア姉様です。一体、いつまで兄様を放置しているつもりなのですか? 」


ティアが更に、カササギの杯にはちみつ酒を注ぐ。


「それがね、カササギちゃん。この前サムニウムの時の事なんだけどー、・・・・。」


ティアがカササギと何やら小声で話をしている。


「ええええっ?! ケイン兄様が、そんな事を?! 」


一体、どんな事なんですかねぇ? 


「そうなの、『俺のティアに触るなぁ! 』って・・・・。」


「カスミー! お前も飲め!! 」


こうして、夜は更けていくのであった。
































本当は、こんな話書くつもりなかったんです。でも、少しお酒を飲んだら、こんな話に。

後悔はしてませんけど・・。

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