4階層にて
デスパレスの3階層を、カスミ達は進む。3階層と言えば2階層で現れるスケルトンやスケルトンメイジに加えて、死霊が混ざる階層だ。
前衛にフィーネとユメ、後衛にアメリアさんとカスミ。バンドーは後ろで待機している。イルミダは今回参加していない。
フィーネは、騎士の鎧にアレグロと呼ばれる騎乗杖を持ってきている。魔法使いが、騎乗しながら呪文を唱える事ができるように改良した短杖らしい。魔法発動を補助する能力は普通の杖より劣るのだが、フィーネの有り余る魔力はそれを補っているとか。全てアメリアさんから聞いた事だが。
「止まってー、待伏せ おるわ。」
ユメの気配探知は一流魔法使いの魔法探知にせまる感じだ。その身を崩して冒険者を待ち伏せるスケルトンメイジを難なく探知する。
「ファイヤーボール撃ちます! 」
カスミが、ユメが指示した物陰にMAXファイヤーボールを撃ち込む。スケルトンメイジは立ち上がる事もなく消し炭にされた。
「余裕だな? 」
アメリアさんが後方から声を掛ける。彼女は今回、回復役を務めている。純血エルフの固有魔法、『ホーリーライト』は、下手な回復魔法より使えるらしい。
難なく3階層を突破し、一行は4階層に降り立った。ここは、かつてカスミが所属していたパーティ、『希望の光』が半壊した階層である。
「取りあえず、双子リッチまで行くぞ? 」
バンドーが後ろから声を掛けた。今回、潜るにあたってギルドからは実はそこまでの依頼は受けていない。何となれば、カスミの見習いアイアンクラス卒業は『売るに値する10個の魔石獲得』で本来は終了。その程度の収穫なら、既に手元に溜まっている。
「いいか? リアクティブアーマーは常時、保て。仲間が攻撃する時はどんな攻撃を何に当てるつもりなのか悟れ。自分の魔力残を常に把握してろ。」
「はい・・。」
カスミの返事が心もとない。恐らく、半分くらいしか届いてない。
「カスミ・・次、スケルトンメイジが現れたら、ファイヤーボールを受けてみろ。」
「・・はい? 」
無意識に返事をしたものの、改めて嚙み締めてみると変な指示。
「ユメ、スケルトンメイジ1体残しな? フィーネも。」
「はい、バンドー様! 」
フィーネは、ぶれないな。迷いが無い。
言う間にスケルトン2体とスケルトンメイジが2体現れる。ユメがスケルトンを連続で倒し、フィーネがアレグロを振るってスケルトンメイジを粉砕した。
「カスミ、前に出てみろ。」
フィーネとユメが道を開け、バンドーがカスミを前に押し出す。
「えっ、えええ? 」
スケルトンメイジは妙な音を立てて骨をきしませながら襲い掛かり、カスミ目がけてファイヤーボールを発射する。
「ひゃっ?やだ! 」
だが、ファイヤーボールの呪文は、カスミに当たると同時にカスミの魔法障壁に阻まれ、霧散した。
「えっ?? 嘘っ。」
「カスミ、何してる?攻撃忘れんな!! 」
カスミがあわててファイヤーボールの呪文を唱えると、スケルトンメイジが射出したファイヤーボールの倍ほどの大きさの火球が形成され、スケルトンメイジの上半身を吹き飛ばした。
「判ったか? 」
カスミのファイヤーボールの魔法習熟度はMaxレベルの10。そして、習熟度が上がれば上がるほど、同じ魔法をレジストしやすくなる。
「カスミ、お前のファイヤーボール習熟度はMaxだろ? スケルトンメイジの攻撃くらい、ほぼ無効化できるんだ。」
ようやくカスミは理解した。バンドーが何故、スケルトンメイジの攻撃を受けさせたか。
「自分がどれだけの力を持っていて、倒すべき相手がどれで、どの順番に攻撃していけばいいか、よく考えろ。」
「は、はい! 」
正直、ユメとアメリアさんが加わる限り、4階層でも楽勝のはずなのだ。
「バンドー様? 私も! 」
バンドーは苦笑いする。フィーネの銀髪を丁寧になで、
「フィーネは今回、魔法は位階魔法だけでいいからな? 」
むしろ注意すべきはフィーネの王族魔法かもしれない。一度2階層で、スケルトンを見るなり”疾風迅雷”をぶちかましたのだが、危うく天井が崩れるところだった。
「むうう! 」
フィーネが持つ騎乗用短杖アレグロはメイスとしても使える。アンデット系には有効なので、フィーネは今回は前衛も兼ねている。
「姫様、前衛は栄えある騎士の役割ですぞ。」
アメリアも事情が判ってくれているのか、フィーネをいいようにコントロールしてくれていた。
「来たぞ? 隊列を組みなおせ! 」
バンドーが鋭く叫ぶ。
キッシッシッシッシッシュー
お馴染みのささやきを交えながら、4階層の主であるリッチがスケルトンを従えて現れる。
フィーネとユメが討ちかかり、カスミがサンダーの詠唱を始める。
「 『クレセントアロー』! 」
アメリアさんが固有魔法でリッチに一撃を加える。リッチは何度か魔法詠唱を試みるが、キャンセルを食らったようだ。フィーネがアレグロでスケルトンを粉砕し、ユメがリッチに切りかかる。詠唱を終えてチャージ状態のカスミが側面に回ってサンダーでリッチにとどめを刺した。
「いいパーティじゃねえか! 」
バンドーは思わず声に出す。ほめられてカスミもうれしそうだ。何より、かつてはリッチに仲間を殺された事もある。
「バンドーさん・・。私できていましたか・・? 」
ふと我に返ったように、カスミがつぶやく。
「上等だ! 」
久し振りに、バンドーはカスミの頭をくしゃくしゃするのだった。
レイスは何処? とか言わないように。ほらそこ!




