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君はあるがままに なるように  作者: 風神RED
第四章 ティアとバンドーの出会い
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襲撃

アンズ・ロマネンテはフリルの付いたメイド服の上から甲冑を着込んでいる。カザフィやカトル達がいよいよ森の広場に襲撃を掛けようとコモロの家を出る一行の前に現れた。


「カザフィ様、お戻りください! アンズはバルナック家のメイドとして、カザフィ様をお迎えに上がったのですよ?! 」


「悪いな、アンズ。お前も判ってんだろ? こんな事できるのも最後だって。なっ? 」


カザフィには今から戻る気など、さらさらなかった。何より、冒険者としてギルドへの最後のご奉公という気持ちもある。増してや、戻ってしまえば容易に国境を越える事も出来なくなると、判っている。


「まあ、お前も付き合えや。頼りにしてるぜ、アンズちゃん? 」


「も、もう・・! 」


カトルは気にする風もない。どうやらアンズを知っているらしく、カザフィの人となりも承知しているのか、構わず呪文詠唱に入る。


「ゲート行きますよ~? 」


森行きのゲートは、取りあえず確保している。何となれば、ここジューダスの狩場は森くらいしかない。狩場行きのルーンなので、森の広場へ行くというよりは、やや森の奥で開く感じか。広場へドンピシャに開く訳ではないのだが、むしろその方が奇襲には都合がよいかもしれない。


「行きまーす。」


コォォォォォォォ!


無詠唱で唱えられるゲートの呪文。コモロの家の玄関前に青白い円環が立つ。


「もお! 」


まずはカザフィが先陣を切り、躊躇う風も無くアンズが続く。そしてトレイシーにバンドー。最後はゲートを開いたカトルが青白い円環の中に飛び込んだ。


着いた先は森の中。普段なら、ここから更に奥に進んで魔獣狩りに行くのだが、逆に森の入り口付近へと戻らなければならない。


「見えましたね。」


いくつかの陣幕が張られているのが見える。護送車らしき物もちらほら。


「奴らにとっては逆側からの奇襲だからな。アンズ、召喚者の気配は感じられるか? 」


アンズ・ロマネンテは甲冑を身に付けてはいるものの、職種は暗殺者。気配感知能力に秀でている。


「どうでしょう、あの護送車から人の気配が感じられますね。」


「カトル、ケイン。お前らは召喚者確保を目指せ。カトル、判ってるな? 」


カトルは何も言わず、胸を二度ほど叩いた。


「それじゃー、俺は一発かますかー?! アンズ、トレイシー。付いて来い。」


「ちょっ?! カザフィ様?! まさか・・」


そのまさかであった。カザフィは隠れる風も無く、堂々と広場に向かって歩み始め、相手の兵士が、その姿に気付くなり武技を発動する。


「 『粉塵烈波』行けや、おらぁ! 」


彼の持つ両手剣が大きく縦に振られ、兵士と陣幕目がけて無数の粒子が風と共に波打ちながら襲い掛かる。幕舎は切り裂かれ、大きな音をたてて崩れ落ちた。


ピィーッ!


すかさず、呼び笛が鳴らされた。


「早えな、訓練されてるじゃねーか! 」


アンズが、カザフィの左側面に展開しながら、黒い苦無のような物を投げ放った。


「 『疾走七輪』! 」


暗殺者特有の武技が放射線状に広がる。火線が走り、兵士達を混乱させると同時に煙幕が張られる。


「いいね、いいねー。」


カザフィとアンズ、トレイシーが正面から突っ込み攪乱。その間にカトルとバンドーが護送車に取り付く作戦である。


「うう、後で絶対に怒られます・・・。」


何やら、アンズが悲壮な顔をしている。


「まあ、そう言うなって・・。二重詠唱エクスプロージョン!」


カザフィの右手にはめられている指輪が光り輝く。彼は剣士でありながら魔法詠唱者。指輪が詠唱発動体で、魔法使いの杖よりも効果は薄いが、術者の呪文発動をサポートする。通常なら魔法の杖より数段落ちるのであるが、呪文を唱える術者自体の魔力が巨大であれが、その限りではない。


第5位階の魔法エクスプロージョン詠唱によって産まれた火球が、煙幕漂う広場に撃ち込まれる。誰を狙うなど無い。混乱させればよいのだ。


「おわぁっ?! 」


鈍い光を伴って、第5位階の魔法エクスプロージョンが一発、跳ね返されてくると、カザフィの左横を通って後ろで着弾した。


「反射か? ちっ、見えねえ。トレイシー? 」


「ダブルスラッシュ! 」


トレイシーが騎士職特有の武技を発動させ、反射した当たりの煙幕を払う。そこには、円陣を組んだクシエルの一部隊があった。


「貴様達、何者ですか?! この私の部隊を襲うとは身の程知らずな! 」


隊列の後ろに指揮官らしき人物、エイリーが見える。


「カザフィ様、内務省のクシエルは接近戦に滅法強い。奴らの武器には麻痺毒が塗られていると聞く。」


すかさず、トレイシーがカザフィにささやく。


「とは言っても、・・やるしかねえだろ! 」


カザフィが再度、右腕を振るって、無詠唱のエクスプロージョンを指揮官らしき人物に向け放つ。だが、その男が両腕に装備している円盾が赤く光ると同時に呪文は反射された。


「無駄です! 私の『合理の盾』は位階魔法の火・水・雷系の魔法に反応して跳ね返すのですよ! おとなしく捕まりなさい! 」


言うなり、エイリーは右腕を振るう。クシエルたちが熊手をかざしながら前進を開始する。側面から、続々と新手が集結し始める。


「へっ! アンズ、援護しろ! 」


接近戦での拘束がクシエルの真髄である筈だった。だがむしろ、カザフィにとっては望むところ。彼の両手剣の間合いに入った武器は、彼に打ち払われると2~3合で破裂する。


「なんです?! 『武器破壊』持ちの魔剣ですか? 」


カザフィが圧倒的に優位に見えるのだが、実はスキル使用には魔力が必要で、長くは持たない。


「下がれ、クシエル! 」


統制の取れた動きでクシエル達が下がっていく。変わって姿を現したのは、数名の魔術師であった。クシエル達の背後から、やおらエクスプロージョンの詠唱を始める。


「マジックシールド! 」


カザフィとトレイシーが防御魔法を唱える。実は事前にリアクティブアーマーも唱えているので、一撃までなら確実に防げる。いくつかのの火球が飛んできて、カザフィ達に着弾する。


「降伏せよ! 」


状況有利に喜色満面の面持ちでエイリーは言い放つ。


「くっくっくっくっ・・・。」


カザフィは何故か、笑っていた。


「何がおかしい? 」


「お前さー、優等生だろ? こんなの知ってるか? 」


言うなり呪文の詠唱が始まる。


「 『極冠最果て煙霧の影よ 求めて来たり我が刃となれ 舞い散る冷霧の檻となれ』」


「何だ、その呪文は? 」


「 『氷獄プリズン』! バースト! 」


瞬間、渦巻く冷気がカザフィの拳から発射され、それは見る間に無数の氷の刃となってクシエル達を襲う。反射は発動せず、串刺しになって絶命するもの多数。


「なっ、なっ?! 」


「学校で習わなかったのか? 位階魔法は覚えやすいように簡略化された呪文。誰でも使えるようにした基礎。そうだろ? 」


基礎があれば応用がある。事実、位階魔法を極めた者はオリジナルを創始する者も多い。ただし、カザフィの場合は少々違う。


「カザフィ様の場合、位階魔法極める前にオリジナルに行っちゃって、先生に怒られてましたけどねぇ。」


簡略化されただけに、位階魔法の方が詠唱は短く発動も容易。それを無理矢理オリジナル化すれば威力は、そのままで詠唱だけが長くなるという本末転倒な結果になる。彼の『氷獄プリズン』は水系の位階魔法を無理矢理いじって氷系に持っていった代物で、無駄に魔力を使うこのスペルを、普通の術者なら作製に成功したとしても使おうとも思わないだろう。カザフィの場合、有り余る魔力を無理矢理乗せて、威力を増しているに過ぎないのだが。


「かっこいいだろ?! 」


半ば呆然としたエイリー伯であったが、やがて気を取り直したように部下達に命じる。


「オリジナル・・? ええい、魔法使いども! 放て、放て! 」


再びいくつかの火球が形成され、カザフィ達に襲い掛かる。だが、横から飛び出してきたバンドーが、その身に受けて全て霧散させた。


「俺には魔法が効かないんだってなぁ?! 」


「カザフィ様! 護送車にいた者達はゲートで公国に送りましたよ? 」


言うなり、カトルも無詠唱で呪文を繰り出す。


「 『セクタムセンブラリージョン』! 」


無数の風の刃が発生し、緑の閃光を発しながら渦巻くとクシエル達に襲い掛かり、舞い散らした。


「僕のは、カザフィ様と違って、本物のオリジナルですよ?! 」


カザフィが口を半開きにして歪めている。


「なっ、なっ! くそっ、まさか止むを得ん、見よ我がオリジナル『プロテゴマキシマゴーレム』! 」


うろたえるクシエル達を抑え、エイリー伯は全身を震わせると無詠唱でオリジナルスペルを発動する。地響きがし、地面が軋み悲鳴を上げると同時に巨大なゴーレム2体が地中から現れる。


「くっ、まさかこの呪文を使う事になろうとはな・・。」


どうやら魔力の大半を使ったようで、エイリーは地面に手を付いている。喘ぎながら現れたゴーレム共に攻撃を命じた。


「やれ、殺してしまえ! 我に敵対する者を全て破壊せよ! 」


2体の巨大ゴーレムは甲高い叫び声をあげると歪な身体を震わせながら攻撃を開始する。すかさず、カトルから攻撃魔法が飛ぶが、2体のゴーレムには何故か効かない。


「ふはははは、無駄だ! 我が魔法工学の粋を凝らしたマキシマゴーレムには魔法など効かん! 無駄無駄ぁ! 」


見ると身体のあちこちに魔石が嵌め込まれており、魔法を無効化しているようだ。


「これって、オリジナル魔法というより、用意してたゴーレムを魔法で起動しただけじゃね? 」


カザフィが半笑いで指摘する。


「黙りなさい! 起動に我が魔力を吸わせたのですから、同じ事です! 」


無茶苦茶だ、とは思うものの状況が変わる訳ではない。


「や、やべぇ・・。」


カザフィ達をかばうように前に出ていたバンドーの顔が引きつる。マキシマゴーレムの身長はおおよそ4~5メートルにも達する。身体はバランスが取れておらず、いびつ。それが逆に恐怖心を煽る。


「カ、カザフィ様? 」


「うーん、逃げちゃう? 」


5人が対応に逡巡しつつ、後退を開始した時の事だった。不意に半月状の眩い光が舞い、ゴーレムにぶち当たる。


「許しませんよ?! 」


女の子の声だった。







































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