表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
君はあるがままに なるように  作者: 風神RED
第四章 ティアとバンドーの出会い
47/134

『クシエル』

夜半未明、王都より派遣されてきた内務省治安部隊はジューダスの神殿広間に集結していた。


「これより、治安維持活動に入ります。この、ジューダス神殿守護から提供されたリストを元に、該当者を拘束して罰を与えます。」


数は80名ばかりであるが、ハーフプレートに身を包み、手には1.5メートル位の熊手のような物を装備している者達が大半。その武器は俗に『クシエルの熊手』と呼ばれていて、先端に伸びる8本の爪は曲線を描き、尖った先は返しが付いている。この武器を装備する部隊は内務省治安部隊の中でも精鋭で、『懲罰を与える者達』あるいは武器の名前から取り、単純に『クシエル』などと呼び習わされている。彼らの左手の肘辺りには、腕を通して小盾が付いているのだが、この小盾もクセモノであった。腰には短剣が下げられている。そして熊手を持つ男たち以外に、少数ではあるが魔法使いも帯同していた。


「お前たちは私の配下の者達の中でも、特に選ばれた者達。奮闘を期待しますよ。」


それに応えるかのように、熊手を持つ手が上下に振られると、床を鳴らす。


この80人余りの『クシエル』を率いるのは内務省特務官のエイリー・ハーフポート。24歳にして特務官になった彼は、ただの上昇志向の塊ではない。伯爵家という家柄も手伝ったのだが、何より彼自身が、魔法工学の天才である事も起因していた。


魔法工学とは、建築や道具制作に魔法を織り込む学問で、彼は特に魔石を応用した技術に秀で、その才能を買われて内務省に入ると、様々な開発を行っている。それに飽き足らず、今回は実用試験も兼ねて辺境の地に赴く任務にまで手を出したのだった。


(王宮内で派閥争いなどというつまらない事をするよりも、ようは実績をつくればよいのです。)


エイリー伯の考えは明白であった。


ここ、辺境の地ジューダスは辺境故に貧しく、近くに冒険者ギルドもない。所有権は神殿に寄進されており、権限は神殿守護であるゼフィリヌスに委ねられている。本来は、その下に王国から派遣された騎士が付いて相互監視を行うのだが、その騎士役も今は空白になっているという。


(つまり、神殿守護さえ押さえれば、我々内務省のやりたい放題な訳です! )


ここで冒険者の籍を持たぬ召喚者を狩り集め、奴隷に落とす。男は鉱山にでも送ればいい。子供でも眉目秀麗な者は手元に置いて個人的に売るか教育する。女は全て売り飛ばす。


神殿守護のゼフィリヌスは中央に戻りたがっており、内務省特務官の自分が神祇庁にパイプを繋げると言えば、それだけで襲うべき召喚者のリストまで提出してきた。リストには、元冒険者、最近召喚されてきた子供で養子になった者、召喚されてそのまま土着した者が記されている。


「それでは、速やかに参りますよ! 」


用意のいい事に、目標のルーンも手元にある。昼間のうちに、目標の家近くの場所をルーンにマークしてきたのだ。今夜の獲物は6名ばかり。


魔法使いがゲートの呪文を唱え始める。


コォォォォォォォ! ゲートの青白い円環が神殿の広間に3つ立つ。


『クシエル』達は行動を開始した。3か所同時襲撃である。夜半の事、家の者は皆寝静まっている。有無を言わせず家屋に浸入し、該当の人物を拘束してゲートで戻る。『クシエル』の精鋭達にとっては簡単なお仕事である筈だった。


「何だ、貴様らはー! 」


森近くにある狩猟小屋を包囲した20人ばかりの『クシエル』達は、5人を突入させたところで固まった。

5人と扉が爆風と共に外に吹き飛ばされてきたからである。中からは壮年の男が姿を現す。肩に斧を担ぎ、小刻みに揺らしている。


「ライト! 」


いつの間に登ったのか、狩猟小屋の上にある人影から第1位階の魔法が唱えられた。照らし出される『クシエル』達。


「お前らー、内務省の治安部隊だなー。俺を捕えに来たのか? ったく、人がおとなしく狩人やってんのによー。行くぜ、おらー! 」


男の斧が魔力を帯び、旋風のように舞う。たちまち、2~3人の男が吹っ飛ばされるが、『クシエル』達も負けてはいない。四方八方から熊手を交差するように差し出し、男の動きを止めようとする。


「くそったれ! 対人はやってないと腕が鈍るって、本当だな、えっおい! 」


それだけが理由ではなかった。『クシエル』達の持つ熊手の先には、筋肉弛緩系の麻痺毒が仕込まれてある。微細な傷を負いながら、男の行動は徐々に緩慢になってくる。


「ナズナ、逃げろ! こいつらは抑えきれねぇ! 」


狩猟小屋の屋根にいる女性に声を掛ける。


「嫌!! エクスプロージョン! 」


無詠唱のエクスプロージョンが狩猟小屋の屋根から放たれる。火炎系の第5位階魔法。


だが、『クシエル』の男、目がけて放たれた魔法は、男が左腕に装着している小盾が赤色に輝くと同時に反射された。


「えええっ? 」


「なんだと?! 」


反射されたエクスプロージョンは狩猟小屋を直撃、火災が発生する。


『クシエル』の男の左腕に装着されている小盾、それを『合理の盾』という。内務省特務官エイリーが開発した装備で、位階魔法の火・水・雷系の魔法に反応し跳ね返すマジックアイテムであり、盾には3つの魔石が嵌め込まれ、その周囲を魔法陣が象っている。


コォォォォォォォ!  新たな青白い円環が開き、エイリー・ハーフポートが姿を現す。背後には魔法使いを3人伴っている。エイリーは燃える狩猟小屋を見るなり、命令を発した。


「滅せよ、捕獲は中止! 」


現れた魔法使いから、無詠唱のエクスプロージョンが次々と狩猟小屋に飛ぶ。


「きゃぁぁぁぁぁ!! 」


あっという間に、女性は炎に飲まれた。


「ナズナー?! 」


狩猟小屋を振り返り、守備がおろそかになった男の背後に次々と短剣が突き立てられる。


「ガハッ?! 」


崩れ落ちる男、


「死体は小屋に投げ込め! 撤収! 」


命令は速やかに実行された。


カーン カーン カーン


火災を告げる半鐘が鳴り響く頃には、そこには誰もいなかった。












































評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ