教育してあげるわ!
修正してやるー
おおよそ二日の間、ティアは悶々としながら修行を続けた。その間、ゼフィリヌス様にはケインが持ち直し、目を覚ましたとだけ言ってある。ティアがコモロの家に出かけようとするのを邪魔しようとした事に気付いていたティアは、余計な事を言うと、何が起こるか判らないと心配し、ケインの様子が変であった事は伝えていない。
「・・あの子はマユミ様の事を、『あいつ』だなんて言ってた・・。やっぱり、おかしい! 」
やはりもう一度、コモロの家に行かなければならない、行って自分の目でもう一度、確かめたい。
せっかく通い詰めて病気がよくなったのだ。自分は一生懸命に看病した。なのに結末がこれでは、余りにも納得がいかないではないか。思い立つとティアの行動は早い。というか、考えながら既に、その足はコモロの家を向いていた。
勝手知ったるコモロの家の門をくぐり、鍵のかかっていない扉を開けて、ティアは密やかにつぶやく。
「マユミ様ー? ティアです、入りますよ~・・? 」
ケインの様子が気になってここまで来たものの、ここに来て少し怖気づいている。二日ほど前にマユミからは、しばらく来なくていいと言われた事を思い出したのだ。
「・・マユミ様ぁ~? 」
「あら、いらっしゃいティアちゃん。よく来てくれたわね。」
マユミは奥の書庫にいた。そこはよく生前のガウガメラがいた所でもあるのだが、ティアは知らない。
「おいでなさい。」
マユミは親し気に手招きする。よかった、どうやら帰れと言われる事は、なさそうだ。
「ここにはね。あの人が生前に集めた本がたくさん、あるのよ? あの人は騎士だったくせに読書家でね~。」
「そうなのですね? 」
「ええ、そうなの。ここで調べれば、何か判ると思ったのだけれど・・・・。」
不意にマユミの様子が豹変する。
「ティアちゃん、こんな事、他の人には話せないわ?! あの子はね、ケインは本当におかしいの! あの子の口調は、昔、私が知っている男の子にそっくりなの! ねぇ、あの子は一体、何なのかしら? ねー・・。」
鋭い口調で始まった言葉は、しかし途中で急速に力を失い、最後は一体、誰に問いかけたものなのか判らない。
「・・マユミ様・・? 」
「私はちょっと、ここで調べ物をしているわ。ケインなら寝室にいるわよー。」
それきり、マユミがティアを振り返る事はない。何やら、書棚から本を取り上げて開いては戻したりを繰り返す。ティアは何だか怖くなり、
「わ、私、ケイン君の様子を見てきますね? 」
そう言うなり、書庫を去る。おかしい、何やらおかしい。まるでマユミ様までが、おかしくなってしまったかのようだ。途中からティアの歩みは早くなり、思わず勢いよく寝室の扉を開け放ってしまう。
ケイン君が、頭の下に両手を置きながら、ベッドの上に横になっていた。ティアをみるなり、半身を起こす。
「よぉー、又来たのか? この前は、あんまり話せなくて悪かったな。お前が看病してくれたんだろ? 何となく、憶えてるよ。」
ティアは何も答えない。何だか、沸々と怒りが込み上げてくる。
「いろいろと、聞きたい事があるんだ。この世界の事とか、よかったらお前、教えてくれないかな? 」
ティアは頬を膨らませ、拳を震わせる。だが、まだ何も言わない。こいつは一体なんだ?
「あいつの事も、聞きたいんだ。あ、母上の事。」
ティアの体内で、頭の中で、何かが音を立ててチギレル。
「お前じゃ、ありません! ティアです!!!! 」
ケインが何か言おうとするが、更に言葉をかぶせて言わせない。
「ケイン君! ・・・・・・あなたは、あなたは、おかしいです!!!! 私は!!! ・・私はあなたを許せません!!! 教育してあげます、来なさい!!! 」
そう言い放つなり、ケインの腕を取ると、有無を言わせずに庭まで引きずり出した。尋常な力ではない。
「ちょっ、ちょっと待てよ! っ何だ、お前?! 」
「ティアです!!! 」
ティアは庭までケインを引きずり出し、放り投げた。
「痛っ、お前この、下手に出りゃあ、いい気になりやがって、お仕置きすんぞ? 」
言うなり、ケインは手を伸ばし、ティアの右手を掴んだ。とても6歳とは思えぬ力で引き付けられる。だが、ティアは逆らわずにそのまま右手を伸ばし、ケインの右手付け根を思い切り押すと、右足をケインに引っ掛け、腰に乗せるようにして投げ飛ばした。
「いい加減にしなさい!! 」
ケインが地面に這いつくばっている。
「くっそ、この・・。」
立ち上がった時には、懐にティアが潜っていて、下から腕をかちあげるように顎に当て、ふらつくケインの腰に、もう一方の腕を添えるとケインの身体を半回転させた。
「あ?! ぎゃっ?! 」
ケインにとっては、何が起こったのか全く判らない。地面が逆さまになって、そのまま叩きつけられる。
「お母さまであるマユミ様をお前とかあいつとか、二度と言わない事! 絶対に言っては駄目です!!
それと、私の事はこれから、ティアお姉さまと言いなさい!! 私がこれから、あなたのおかしい所を徹底的に直していきます!! 」
「なっなっ・・。」
ケインは、事の成り行きに呆然としている。それより何より、このティアという娘は破格の強さを持っている。覚醒してから二日、いろいろと試したケイン=バンドーだったが、身体は6歳だが体力は成人並みにある事を確認していた。だが、そうであってさえ、ティアには敵う気がしない。
「判りましたか?! 」
「・・・は・・い。」
「声が小さいです!! 判りました、ティアお姉さまと言いなさい!! 」
「わ、判りました。・・ティア‥姉さま・・。」
ティアはそれを聞くなり、腕を組んで鼻から息を吐き出す。やっちゃった感はあるが、ようやく少し気持ちが落ち着く。取りあえず、このおかしくなったケイン君の話を聞いてみよう。この子が一体何を考えているのか、確かめてみようとも思う。
「中に入りますよ、ケイン君。付いてきなさい! 」
「はーい・・」
前途多難ではあるだろうが・・・。
お、親父にもぶたれた事ないのにー




