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君はあるがままに なるように  作者: 風神RED
第四章 ティアとバンドーの出会い
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大人の事情

唐突に過去に戻ってもいいかな?

ティア・アーハイト・ゼノア10歳。彼女は父から言い含められて、王国の辺境、ジューダスの地に修行に出された。神殿の修道女見習いとして、回復魔法の習得を命じられたのだ。


ジューダスの地は代々、何人かの高名な騎士を輩出し、武門の誉高い家柄が尊ばれる。反面、土地は痩せており、収穫は期待できない荒野が多い。逆を言えば、だからこそ皆、土地を捨てて武名を上げに王都に上るのかもしれない。


「ゼフィリヌス様? 今日治療されるのは、どのような人ですか? 」


「騎士の家の者じゃな。詳細は知らぬ。お主は黙って付いてくるがよいぞ。」


ゼフィリヌスは50台も後半の神官で、ジューダスではそれなりに名の知れた男だ。もっとも本人は、辺境の地、ジューダスでの神殿守護任務に満足していない。だが治療魔法の腕は確かで、周辺の住民からはそれなりに尊ばれている。


「もうすぐじゃ。」


ゼフィリヌスは足早に歩く。ティアは頭まである白いだぶだぶの修道服に身を包み、転びそうになりながらも付いていく。


「お主は、もうヒールを覚えたそうじゃな? 今日はわしの回復魔法を見て、勉強するのじゃぞ? 」


ティアが必死で付いてきているのに、気が付いているのかいないのか、ゼフィリヌスは振り返りもせずに、そう言う。本来は回復魔法使いである神殿の神官ともなれば、馬車で行脚してもおかしくはないのだが、この辺境の地ではぜいたくは許されない。


「ここじゃな。」


ゼフィリヌスが立ち止まったのは、村の丘に建つ一軒の館の前だった。庭の手入れがされていないのか、草は伸び放題。土壁は所々ひび割れていた。門は開いている。


「構わん、入るぞ。」


さびれた庭に足を踏み入れ、ドアを乱暴に叩く。


「どちらさまですか? 」


20代くらいの若い女が中から出てきた。眼の下にクマができている。


「神殿から参ったゼフィリヌス・アルケトゥスじゃ。こちらは助手のティア。ガウガメラ殿はおるかの? 」


「ああ! 」


女は深くかぶりを振った。


「主人は、今朝早くに・・。」


「むう、遅かったか、致し方ない。奥方殿か? 」


「・・はい、マユミ・コモロと申します。お願いがございます、神官様! 息子のケインを見てやってください! 息子も同じ病にかかっているのです。」


「むっ、案内せよ。」


言うが早いか、ゼフィリヌスは中に入る。マユミの導きで、奥の寝室に通される。そこには、幼い子供が荒い息をして、ベッドの上で横になっていた。


「ケイン、もう大丈夫よ?! 神官様がいらっしゃったから、もうすぐ楽になるわ! 」


ゼフィリヌスはケインの目蓋に手を当て、瞳の前で軽く指を振る。


「ふむ、意識はあるようじゃの。任されよ。」


ゼフィリヌスは羽織っていた外套を脱ぐとティアに渡す。そしておもむろに杖を構え、呪文を発した。


「聖なるイシスの名において命じる『グレーターヒール』! 」


スキル『高速詠唱』で呪文を一部省略している。もしもこの場に回復魔法の心得がある者がいたとすれば、それだけで、ゼフィリヌスの回復魔法の腕が並み以上であると判断しただろう。


ゼフィリヌスの持つ杖から光が舞い飛び、ケインの身体に注がれていく。だが光は病を癒すのを拒否するかの如く、弾け散った。途端に、激しくせき込み、嘔吐するケイン。


「なに~?! 」


あわてて我が子の背に手を当て、自らの服で吐しゃ物を拭うマユミ。


ゼフィリヌスにしても、このような現象は見た事がない。傍らにいるティアも目を見開いている。


「一体、どういうことだ?! 」


ゼフィリヌスが言葉を発したが、この場に答えられる者はいない。


「マユミ殿、この子は『呪い付き』か? 」


マユミは振り返り、激しく首を振る。


「そんな、そんな? 普通の子です。病気前までは主人に習って剣も魔法もこなす、立派な騎士の子ですわ? 」


ゼフィリヌスは目を細め、全てを見逃すまいとするかのようにケインを見つめながら、今一度呪文を唱える。


「聖なるイシスの名において命じる『グレーターヒール』! 」


先程よりも一段と光量が多く感じられるのは気のせいか、再び回復魔法の光がゼフィリヌスの持つ杖から放射され、ケインの身体に達しては、弾け散った。


ケインの様子は変わらない。苦し気に、胸を上下させている。


「なんで~?! なんでよ~?! 」


マユミはもはや半狂乱だ。無理もない、借金までして高額な代金を支払い、呼んだ神殿神官の治癒魔法が何一つとして効かないのだ。


「神の御名において唱えられた聖なる呪文が効かぬとは、この子は呪われている!! 」


ゼフィリヌスは、そう言い放ったものの、実は本心ではない。彼とて優秀な神官である。いくつかの推測を頭の中で巡らし、心の中では別の事を考えていた。


(通常の回復魔法が効かぬとなれば、何らかの呪いか? もしくはマイナススキルが発現しているのであろう。問題は・・。)


神殿が派遣した神官の治癒魔法が効かぬという事実をどうするか? にあった。この際、原因は二の次なのである。高額な金を受け取ったにもかかわらず、治す事ができないでは神殿の信用にかかわる。これが名も無き市井の者が相手であれば、まだよい。だが生憎、相手は腐っても騎士の家。


(だが幸い、残されたものは病気の子供と、何の後ろ盾も無い召喚されし者。)


召喚されし者であるマユミが6年前にガウガメラに見初められ、コモロ家に入った事は、この集落では知られていた。


「マユミ殿、実に残念な事に、この子には異端の疑いがある!これ以上の治療はできんな! 」


そう冷たく言い放つ。


「そんなっ、ゼフィリヌス様?! どうか?! 」


ゼフィリヌスが歯牙にもかけずに踵を返し、帰ろうとした時の事だった。今まで黙って事の成り行きを見守っていたティアが声をあげた。


「ゼフィリヌス様? 私も試してもよろしいですか? 」










始めちゃった・・・ああああああああ

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