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君はあるがままに なるように  作者: 風神RED
第一章 ユメとカスミ編
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パーティ壊滅しちゃったな

バンドー、お前はいいやつだよな? なっ?

涙目の女の子を尻目に、スキル『威圧』と『身代わり』を発動させたバンドー。

本来はアンデッド相手に『威圧』スキルは効かない。あえて発動させたのは、バンドーがこの場に現れた事を敵に気付かせる為。そしてスキル『身代わり』は、敵のターゲットを自分に向ける。


半壊、いや全滅寸前のこのパーティにもはや戦闘力は皆無であり、バンドーが全ての敵を引き受けて討つ以外に生き残る術はない。


「つうか、あいつら生きてんのか? 」


リッチの魔法で沈んだ盾戦士に動きはない。僧侶の方はわずかに肩を動かしたか? 何にせよ、まずは後衛に近づいたレイスとスケルトンメイジ数体を潰さない事には話にならない。


「破邪! 」


鋭い踏み込みから繰り出される通称『破邪の掌底』まずは死霊レイスに叩きつける。結果を確認する事もなく身体をひねり竜脚から飛足移動、そして胴回しでスケルトンメイジに体を浴びせる。片足着地から右手をついて起き上がると同時にバックブロー。ゼノ式で言えば『迅雷』。


一瞬でスケルトンメイジ数体と死霊レイスは崩れ落ちていた。


「あとは爺さんだな~! 」


スケルトンは数のうちに入っていない。飛足でわずかに宙に浮いて加速し、すれ違いざまに触れるだけでスケルトンは半壊する。完全に潰してはいないがリッチを封じることの方が今は優先されるのだ。

リッチの遠距離攻撃魔法エナジーボルトは第4位階で中位魔法に当たる。こいつが1発でも当たれば、駆け出しの冒険者なら体力の大半を持っていかれる。


「キッシッシャッシャッシャ! 」


リッチが何か叫んでいる。これは、スケルトンを呼び出そうとしているのか?


「だが、遅ぇ~!」


飛足から正拳貫き手、魔力分解発動でリッチの魔法障壁は意味を成さない。そのまま手首までリッチの胸辺りに突き刺す。


「魔石ビンゴ~」


魔石をリッチの胸元から引きちぎるようにしてむしり取ると、背を向けた。背後ではリッチの身体が迷宮の土へと返る音。


「ま~だ、動いてんのかお前らは~! 」


先程、すれ違いざまに半壊させたスケルトン4体を、気のこもった右足で蹴とばし、突き崩し、踏みにじったところで戦闘は終了した。

取りあえずは。


「さてと・・ 」


盾戦士君はリッチの『エナジーボルト』をもろに受け、身体に穴が開いて内臓が飛び出している。


「こいつは無理だな。」


バンドーは懐から冒険者なら誰でも持っている片紙と呼ばれる紙を一枚取り出し、腰から短刀を抜いて盾戦士君の髪の毛を切り、片紙で巻くとバックパックに放り込む。ついでに冒険者の証であるブロンズのプレートも首にぶら下がっていたので取り外す。


「ん、・・と? 」


僧侶の男はまだ生きていた。確かスケルトンメイジの『ファイアーボール』数発を食らった後にスケルトンに頭を殴られていた筈だ。見ると耳の上あたりをスケルトンの持つ薄汚れたアイアンソードで無理矢理ぶち切られたのか、出血が止まらない。


「おい、大丈夫か? 」


バンドーは試みに傷跡に手を当てる。一応、応急処置程度の効果はある筈のゼノ式手当てだが、魔力を持たず、気に頼るしかないバンドーの手当ては、出血多量の重傷を元に戻すことは難しい。時間がかかるのだが出血は待ってくれない。


「す、まない・・。」


薄れゆく意識の中で僧侶の男はつぶやく。

頭を持ち上げて手を当てていたバンドーは一旦地面におろして立ち上がると大声を出した。


「そこの女魔法使い! こっちに来い! 」


腰を抜かしたように地面にへばっていた魔法使いの女の子は最初、這うように、そしてふらつきながら立ち上がると側に来た。


「こいつは、もうもたねぇ。最期の言葉を聞いてやれ。」


「そんな、カズヒロ君? カズヒロ君? 」


「生き・・て、地上に・・」


僧侶の男は、それきり出血多量で意識をなくした。まだ生きてるのかもしれないが、ここでは無理だ。見捨てる以外ない。ないよな?


「女魔法使い、一応聞くがお前、『ゲート』の魔法使えるか? 」


『ゲート』の魔法は第6位階、中位魔法。

アイアンプレートに聞くまでもないとは思うが、やはり無駄だった。女はカズヒロ君を抱きかかえ、泣きながら首を横に何度も何度も振る。


バンドーは泣き続ける女魔法使いに背を向けると、倒れている盗賊の女に近寄り、腰を落とす。

確か死霊レイスの狂気に捉われて壁に頭を打ち付けていたな。最後は『ファイアーボール』も食らってたか?

歳の頃は16~17か? 黒髪に細身だが、よく鍛えられた身体。どうやら、気を失っているだけのようだ。ファイアーボールも武器である弓矢を粉砕したものの、手に火傷を負ったくらいですんだらしい。


「こいつは助かるが・・どうすっかねぇ? 」


ここは4階層、バンドーだから2時間ほどで来れたものの、普通のパーティなら1日2日はかかる。まして負傷者を抱えた上に見習いの魔法使いのおまけ付きでは・・。


「こんな時にティアがいてくれたらな~。でもあいつらのパーティは先に出たから、もう進んでるだろうし・・」


取りあえず女盗賊を肩に抱えると通路の行き止まりに移動してそこに降ろし、泣き叫ぶ女魔法使いを引きずって同じ場所まで連れてくる。


「お前ら、ちょっとそこでじっとしてろ。」


カズヒロ君のところまで戻ったバンドーは片紙を取り出すと盾戦士と同じように、腰から抜いた短剣で髪を切り、片紙で巻くとバックパックに放り込み、冒険者プレートも回収する。

戻ってくるなり、女魔法使いの頬に手を当てる。


「お前、名前を聞いてなかったな。俺はバンドー。お前は? 」


「・・私はカスミ。パーティ名は『希望の光』。この娘はユメ。」


「よしカスミ、これから地上に戻るまで俺の言うことを聞け。絶対だ。なら地上に戻してやる。」



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