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君はあるがままに なるように  作者: 風神RED
第三章 サムニウム族襲来編
38/134

ちょっとだけ、カット

バンドー達が菱形陣地のひとつを占拠し、その周りにストーンウォールの魔法で石壁を立てて封鎖して4時間ばかりが過ぎた。時折り、散発的に銃弾が撃ち込まれるが、こちらは石壁の中だ。魔法攻撃用に壁にいくつかの穴は開けてある。被害は有るには有るが、


「負傷者出たわ、回復魔法頂戴! 」


これで、事足りた。万が一、重傷を負ったとしても、ヘッドショットでもされない限り、ゲートでデスパレスに後送すればよいのだ。


「まあ、特別任務の自由戦闘は今日までだし、楽勝じゃないかしら? 」


敵の銃兵が撃ちかけてきたら、こちらも魔法で応射する。向こうは壁無し、こちらは壁有りでは撃ち負ける事も無い。何人かの敵兵を魔法で片付けながら、ティアがそう言ったのも無理のない事だった。


この時点までは。


「バンドーさん、敵陣地に何か立ちましたよ? 」


『紅蓮』のカトルが声を掛けてくる。見ると確かに、木の櫓のようなものが見える。でかい岩を吊り上げている。


「何だ、ありゃ? 」


その岩が徐々に上がっていき、その後、急速に下に落とされる。瞬間、背後からしなるように腕が持ち上がり、何かが上空高くに放り投げられる。


「まじか?! 」


7~8個の、人間の頭ほどの石がバンドー達が籠っている菱形陣地の上空にばらまかれた。予想もしなかった攻撃に、数人が負傷する。


「あっちにもある! 」


誰かが壁の穴を覗いて、指差している。見ると3基ほどの投石機が立てられているようだ。


2射、3射と続けざまに、バンドー達が籠る菱形陣地上空に複数の石がばらまかれ、内部に着弾した。あちこちで悲鳴が上がる。


「石が飛んでくる方の壁に寄れ! 」


作業中だった者も悲鳴を上げて壁際による。そこへ、今度は全方位から矢の雨が降ってくる。


「きゃああ! 」


見ると長盾を持っていた者たちがいつの間にか弓矢を装備し、周囲から高角度で矢を撃ち上げている。山岳育ちのサムニウム族にとって、弓はお手の物。戦士は全員、狩りの経験がある。


「くっ! 逃げ場が無ぇ! 」


周囲を壁で囲まれているために、外に出る事も出来ない。


「撤退です! 『紅蓮』メンバー集合! カササギちゃん? 高地へのゲートをお願い! 」


カトルが杖を振っている。反応が早い。戦闘はパーティ単位であり、行動は基本自由。こういう時の判断が冒険者の運命を分ける。


ズン!!


壁が揺れた。いつの間に近づいたのか、バリスタが丸太を射出して壁にぶつけている。普通はごつい弓を放つものだが、攻城戦時はこういう使い方もできるのだ。


『紅蓮』のゲートが開く頃には、参集していたパーティのほとんどが撤退を決めていた。


「 『星屑の光』も撤退するわ! ヒミカ? ゲートお願い。」


集まってきたメンバーを優先し、メンバーの一人であるヒミカ・カツラギがゲートを開ける。


「フィーネ! お前もゲートで離脱しろ! アラカンを忘れるなよ?! 」


「判りました、バンドー様! 」


ズン!!


また、壁が揺らされる。だがその時には、バンドーとティア以外のメンバーは全員陣地内からの離脱に成功していた。


「逃げ足も速いのよね、うちのギルドは。さ、バンドー私達も消えましょ? ゲート開けるわよ・・。」


ティアが、そう言った時の事だった。


「ティア・?! 」


ゲートが開かれる事はなかった。崩れ落ちるティア。肩のあたりに2本の矢が刺さっている。


「ティア! 」


その瞬間、壁の一部が轟音を立てて崩れ落ちた。サムニウム族の兵士達がなだれ込んでくる。二人はあっという間に囲まれた。


「お前らぁ、ティアに近づくんじゃねぇ!! 」


硬化スキルを発動させ、全身に気を巡らせてバンドーが吠える。


「 『飛足月華』! 」


飛足を発動させ、わずかに宙に浮きながら身体を半回転させて下方掃脚。さらに身体をひねって旋風のように周囲の敵をなぎ倒す。


「俺のティアに触るなぁ!!! 」


ゼノ式格闘術の二の型『かわせみ』発動。ほとんど逆立ちしながら周囲を足技で蹴散らす。多人数相手限定の型。


「ガァァァァァァァァ! 」


バンドーがまた吠える。だが、そこまでだった。ティアの首に剣が付きつけられていた。


「止まれ! デスパレスの冒険者! こいつの命が惜しければな! 」


二人は陣地の外に引きずり出される。サムニウム族の兵士達が円形に並んで二人を囲む。


ティアの肩から矢が引き抜かれ、治癒魔法が唱えられた。治癒魔法だけはサムニウム族も使うのだ。そして腕を後ろ手にしばられ、詠唱封じの為か口には布を嚙まされる。


バンドーの、腕の下に棒が通され、それは首の後ろを通って又腕の下に抜けると、腕を棒に固定されて紐で縛られる。立つ事を許されず、膝を付かされた。


男が進み出てくる。その背後には、金の腕輪をしダークブラウンの髪をなびかせた少女。


「勘違いするな。女には儀式を受けてもらう。ゆっくりとな・・。」


布を噛まされたティアがうめいている。

少女が、銀色の鏡を胸に持ちティアに近寄ると言い放つ。


「魔法使いは忌むべき者。そなたを解放します。悪しき風習から。」


少女は頭上に銀色の鏡を掲げる。


「この鏡は我らがサムニウム族の秘宝、スキル封じ『ゴルツの鏡』。我ら一族は産まれると等しく、この鏡の洗礼を受けるわ。特別に、あなたにも洗礼を与えてあげます。」


やがて鏡が光り、きらめく光がティアを襲う。一瞬、ティアが痙攣したかのように見える。


「んっ・・! ん・・! 」


「ティア? ティア!! 何をした?! 」


「安心して、命に別状はないわ。ただし、魔法系スキルは全て、この鏡に奪われたのだけど・・。」


「なんだと?」


「この女は、もう魔法を使えないわ。また一から修業のやり直し。問題は、そんな時間があるのかどうかだけど? 」


『ゴルツの鏡』、別名『スキル封じの鏡』。彼らは産まれると、代々部族に伝わるこのアイテムを使い、自らが持つ魔法系スキルを封じてしまう。スキルに頼らずに『神の知識』を活用せよというのが、彼らの言い分なのだが、時には、忌み嫌う魔法使いを捕えては、こうして無理矢理、魔法系スキルを奪う。


少女の傍らにいた男が、兵士から渡された木箱を開ける。中から芋虫のようなものが姿を現す。口はイソギンチャクのようになっている。大きさは親指2本分程度。


「魔精虫、魔力を糧とする虫、こいつは一度吸い付くとなかなか取れんぞ。」


男はティアの足に虫を這わせた。たちまち魔精虫はティアの足に吸い付く。


「んんっ?!」


「魔精虫は魔力を吸い尽くしても取れん。魔力枯渇を起こしても、貪欲に吸い続ける。それが続けば・・」


魔力枯渇を起こすと重度の眩暈と吐き気をもよおす。尚も枯渇した状態が続くとティアは死ぬ。イルミタニア生まれの人間にとって、魔力は体内に無くてはならないものなのだ。


「・・てめぇら!!! 」


「オンゴロ、もういいわ。血闘を行いましょう。兵士の士気も下がっている事ですし。」


「はっ! 」


腕を封じられ、膝をつかされているバンドーの前に、鏡を持った少女が、ゆっくりと近寄ってくる。そしてバンドーの瞳を覗き込むかのように顔を近づける。


「ふーん、面白いわね。デスパレスの冒険者。お前はまるで、サムニウム族のよう・・。でも残念。」


周囲のサムニウム族が歓声をあげ始める。少女はバンドーから少し離れ、『ゴルツの鏡』をバンドーにかざす。


「お前の魔法スキルもこれで奪うわ。デスパレスの冒険者が魔法スキルを奪われて、一体どうやって戦うのか、私に見せて・・・・。」


鏡が、光った。

























勘のいい人は嫌いです。なんて

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