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君はあるがままに なるように  作者: 風神RED
第一章 ユメとカスミ編
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あぶないパーティ

自分さえよければそれでいい。バンドー君は本当はそう思ってるんです。天邪鬼なんですね。

迷宮デスパレスの3階層からは2階層で現れるスケルトンやスケルトンメイジに加えて、死霊(レイスが混ざる。死霊レイスというくらいだから実体がなく、物理攻撃は効かないうえに冷気と狂気の魔法を撃ってくる。物理攻撃主体の冒険者には厄介な反面、聖職者最下級の呪文でディスペルされるのが救い。他にも魔法ダメージを与えられる武器やシルバー系の武器は威力を発揮する。


魔法攻撃モンスター主体の迷宮デスパレスの、ここからが本番と言えるのだが


「ずりゃぁ! 」


バンドーにとってはこの階層も問題はない。何となれば、気をまとったゼノ式格闘術は元々悪霊や死霊退治の為に編み出された術が多く、掌底打ち一発で死霊レイスは霧散する。


「実りが無いんだよ、お前らは~! 」


思わず叫びながら、死霊レイスに対して破邪の光を連発するバンドー。実は死霊レイスの大半は死んだ冒険者の霊魂を元に構成されていて、迷宮の邪気を余程強く貯めて育たないと魔石を落とさない。しかもこの辺りは迷宮デスパレスの上層部に辺り、冒険者の手が毎日入っているので魔石を落とす死霊レイスは滅多に出ない。


「面倒くせぇ。さっさと抜けるか。『飛足』! 」


気を脚に込め、わずかに宙に浮きながら4階層への階段まで一気に掛け抜ける。


「あ~、でもここの奴らは片づけね~となー。」


バンドーはいいが、階段降り口にモンスターを貯めて降りるのは、他の冒険者にとって迷惑極まりない。

バンドーとて冒険者のひとり。以前はパーティも組んだことがある。自分も冒険者ギルドに所属している以上、守るべきローカルルールは守るべきだと思っている。


「4階層到着と。さてと、今日は爺さんはいるかな? 」


4階層は多分にランダム要素が含まれる。スケルトン・スケルトンメイジや死霊レイスが湧くのは3階層と同じなのだが、ランダムに上級死霊リッチも現れる。この上級死霊リッチを狩るためにだけ、4階層まで降りてくる冒険者も多い。この4階層が、迷宮デスパレスで冒険者としてやっていくための最初の難関と呼ばれている。そして、初心者が命を落とす事が最も多い階層としても知られている。


バンドーとしては通過点に過ぎないのだが、この階層を通る時だけは周囲に気を配るようにしている。


気を巡らし、周囲の様子を探る。盗賊のスキル『気配感知』にはかなわないが、四方、60メートルくらいの気配を感知することができる。

冒険者が順路、あるいは主通路と呼ぶ、先達が設置した5階層への道をしめした魔法の灯火から外れた通路から、微かに戦闘音が聞こえた。


「お邪魔しますよと。」


基本、ギルド所属の冒険者は他パーティの戦闘に手を出してはいけない。戦闘後の戦利品の獲得で、もめるのが目に見えているし、下手に手を出して迷宮内に時に出没する盗賊扱いされるのも御免だ。冒険者歴の浅いバンドーとて、そのへんは心得ているし、あえて手を出すつもりもないのだが、反面迷宮内では困った時は助け合う、というルールもある。ただし、それには必ず相手からの要請が必要となるのだが。


「盾戦士に僧侶、盗賊に魔法使いか。バランスいい編成してんな。」


気づかれない距離から戦闘の様子を探る。


盾戦士の太めの男

中衛に援護の僧侶の男

後衛に魔法使いと盗賊の弓使い


そんなパーティが数体のスケルトンメイジと死霊レイス相手に戦闘中だ。問題ないとみたバンドーは、その場を離れようとした、その時だった。


「キッシッシッシッシッシュ~! 」


不意に戦闘中パーティの目の前の空間が揺れ、不気味な唸り声をあげながら、そいつは現れた。

リッチだ。上級死霊あるいは高位魔法使いのアンデットとも呼ばれる、そいつこそ、この階層で最も忌むべきモノ。


現れたリッチはすぐさま両手をあげ、自分の前に4体のスケルトンを立ち上げる。スケルトン達は一斉に盾戦士に襲い掛かった。背後ではリッチの中位魔法『エナジーボルト』の詠唱が始まり、魔法陣が展開される。


「おいおいおいおい。」


魔法使いの女の子が必死で『ファイアーボール』を撃とうとしているが、詠唱後の魔法陣構築中に移動してキャンセルを食らっていた。その女の子の杖には鉛色のプレートが吊るされている。


見習アイアンいが混ざってやがるのか。初心者パーティかよ? 」


詠唱を終えたリッチの『エナジーボルト』が盾戦士に炸裂。同時に僧侶の回復魔法が盾戦士に向かって詠唱されるが、どうやらダメージが回復量を上回っているようだ。

それを悟った僧侶が咄嗟にメイスを片手に盾戦士に群がるスケルトンに殴りかかる。


「悪手だ。」


(唯一の回復役が前衛に回って、それからどうすんだよ。ディスペルも使えなくなるだろーが?! )


遠距離攻撃の手が減ったパーティの側面に回り込むようにスケルトンメイジが数体、僧侶めがけてファイアーボールを撃ち込んでくる。盾戦士が沈むより早く、崩れ落ちる僧侶の男。


「カズヒロ君! 」


アイアンプレートの見習い魔法使いが何か叫んでいる。

リッチが2発目のエナジーボルトの詠唱を開始する。


パーティの要、回復役の脱落はパーティ全滅の黄金ムーブと言っていい。


スケルトン4体にまとわりつかれ身動きが取れなくなった盾戦士に、リッチの2発目のエナジーボルトが炸裂。盾戦士も崩れ落ちた。僧侶を落としたスケルトンメイジ達の矛先は既にパーティ後衛に向いている。レイスの狂気魔法発動、盗賊の女が発狂し、自ら頭を壁に打ちつける。ふらついたところにスケルトンメイジのファイヤーボール。手にしていた弓が吹き飛ばされ、盗賊の女は気を失った。


「やだ、やだぁ! 」


リッチの3発目のエナジーボルトが詠唱され、見習い魔法使いの女の子に炸裂する寸前、バンドーは、その間に割って入った。

エナジーボルトはバンドーに当たった瞬間に霧散する。


「援護はいるか? 」


「えっ? 」


「助けてほしいか?早く答えろ! 」


「助けて! お願い助けてください! 」


その声を聞いた瞬間、バンドーはスキル『威圧』と『身代わり』を発動させた。

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