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君はあるがままに なるように  作者: 風神RED
第二章 暴風姫編
27/134

手紙

ちょっと短いです。

デスパレス30階層から40階層までは、俗にデスパレス神域と呼ばれている。とは言っても何も神がスパンする訳ではない。30階層・31階層とエンジェルが出現し始め、32階層になると迷宮の様相ががらりと変わり、神殿を思わせる楕円の柱に支えられたデスパレス大聖堂が姿を現し、エンジェル”リドワン”とエンジェル”ブブレ”が混じり始める。そして34階層からはセラフィムやケルヴィム。40階層に至るとまれに率天使”アシャンドラ”がスパンする。


「ケーリュケイオン、”アンカー”! 」


右手に装備する籠手から二つの鋲付きワイヤーが伸び、リドワンに突き刺さる。双頭の蛇を意味する『ケーリュケイオン』、バンドーは新装備の感触を確かめるべく、デスパレス36階層まで降りている。


特殊な魔物の毛で編まれたワイヤーは、バンドーが練る気を通し、ある程度のコントロールを可能にする。ワイヤーを通してスキル『魔力分解』を流し込み、エンジェル”リドワン”の魔法障壁を打ち破ると共に体内に撃ち込む。その効果はてき面で、エンジェル”リドワン”は半身を失った。


「『飛足月華』! 」


宙に浮き加速する飛足からの合わせ技に気を纏わせ粉砕。いい感じだ。新装備のケーリュケイオンは問題なく扱える。


「バンドーさん、助かったよ。そろそろ帰らない? 」


「そうだなー、ちょっとカスミが心配だし帰るか。」


デスパレスの中堅パーティ、『紅蓮』のリーダーであるカトルが声をかけてくる。30階層で一緒になったので臨時に前衛としてここまで来た。『紅蓮』は5人パーティ全員が魔術師。普通に考えればバランスが悪い構成なのだが、迷宮デスパレスではそうでもない。魔法攻撃主体の敵に対して、同じく遠距離攻撃で応じるのは悪くない選択と言える。回復役がいればだが。バンドーは、その中で臨時に前衛に入り、ターゲット役を積極的に引き受けてきた。バンドーに魔法攻撃は効かないので、後方から遠距離魔法を自由に撃てるという素敵仕様。


「了解、カササギちゃんゲートお願い。」


召喚されし者である、月下カササギは、バンドーの方をちらりと見ると顔をそらし、元気に右手を上げる。


「はいはーい。」


第6位階の魔法であるゲートは使用制限がある。魔法習熟度により使える回数が変わり、使用するとおおよそ一日で回復する。迷宮内では帰りのゲートしか開けない。パーティでの使い方としては、行き先を記録したルーンを用意し、戦利品だけを送ったりする。回数制限があるだけに、パーティ内のゲート使用可能な魔法使いは重宝される。


「みなさん、帰りますよ~。」


バンドーを含めた6人はゲートをくぐると、次の瞬間には冒険者ギルド前にいた。ゲート帰還の定番である。


(レイ教授いるかな? )


本当はもっと早くにギルドマスター・レイと会いたかったのだが、潜る前に訪ねた時は何故か不在。

大抵は、4Fに常駐しているので珍しい。


バンドーは魔石換金もそこそこに4Fに上がるとレイ教授を訪ねる。


「バンドー入りまーす! 」


「来たか、不詳の弟子! 」


ひどい言われようだ。昔、何とか魔法が使えるようになろうと、いろいろレイ教授に教わったのだが、結局バンドーは魔法が使えなかった。そういう意味では、むしろ弟子にすら該当しないかもしれない。


「レイ教授、何処行ってたんだよ。いろいろ話す事があるんだ。」


「姫にキスしたそうじゃの? ドッガーズが切れていたぞい、この阿呆が。」


いきなりの奇襲にバンドーの顔が引きつる。


「まあええ、それよりこれを預かってきたので姫に届けるがよい。」


封書だ。裏を返すと、蜜蝋で封じられ上に押された印が目を引く。羽ばたく鷲は王族を現わす。


「早よう、届けに行かんか。手遅れになる前にの。」


________________________________________________


ここは一体どこだろう。目覚めるとベッドの上、窓から光が差し込んでいる。身体が重い。上半身を起こし、ベッドから足を出すと床に触れる。


「・・・私は一体何を、・・ここは? 」


立ち上がって窓から外を眺めても思い出せない。


「あれは・・・? 」


外に見える物置小屋らしき建物に神盾『ゴッドブレス アラカン』が立てかけられている。


「・・!! 」


そうだ、私はバンドー様と戦って、そして負けた・・?


「お目覚めですね、お姫様! 」


振り返ると、いつの間に部屋に入ってきたのか魔法服姿の少女が水差しを抱えている。


「お身体の調子はどうですか? お姫様は『魔力枯渇』を起こしていたんですよ? 」


そうだ、最後の『疾風迅雷』を撃ち込んで、そこからの記憶が無いという事は又『魔力枯渇』を起こしてしまったのだろう。


「・・・! 今は、今はいつですか? 私はどれくらい眠っていたのですか? 」


「二日ほどですね、よくお眠りになっていましたね! 」


「・・そんなに?! 」


どうしよう、ということは今日がエイリー伯が言っていた期限の日? それとも過ぎてしまったの?


咄嗟に判断が付かない。もう、全て遅いのだろうか。本当に何をどうすればよいのだろう。


「バンドー様は? 」


「迷宮デスパレスにお出かけですね。うーん、今日か明日には帰ってくると思いますよ? 」


バンドー様を殺して自分も死ぬつもりだったのに、バンドー様はいない。王都に戻っても、・・戻っても、


「・・・・帰りたくない。」


そもそも、今の魔力で何処まで飛べるものなのか。


「私は一体、どうしたらいいのですか? 」


涙があふれてくる。どうしようもない自分。


「わからない・・・・わからないよう・・。」


突然泣き始めたフィーネ姫を前に、カスミも動転している。


「お姫様ぁ、どうしたのですか? どこか痛いのですか?! 」


「ここにいたのか?! 帰ったぞ! カスミ! 」


乱暴に開け放たれた扉。振り返るフィーネ姫。


「バァンドー様!! あなたが! あなたが悪いのです! 」


泣きじゃくりながらフィーネ姫は続ける。


「今頃はアメリアも殺されているかもしれないんですよ?! 私は一体どうしたら?! 」


いきなりフィーネ姫に抱きつかれ、バンドーは両手を上げている。カスミもうろたえるばかり。


「な、なあ姫さんよ。レイ教授から手紙を預かってきたんだが・・、その何だ。」


フィーネ姫の動きが止まった。


「・・・レイ? 」


「ああ、レイ・クリサリス・バーサク。知ってんだろ? 昔宮廷魔術師してたらしいし。」


「・・・レイ先生ですか・・? 」


バンドーはフィーネ姫の身体を放し、脇の下から抱き上げるとベッドに座らせる。


「これだ。」


『親愛なるフィーネへ

 神盾持ち出しは許さんぞ。罰としてデスパレスでの修行を命ず。詳細はレイに聞け。

 母さんとは仲直りした。

 追伸・・・エイリー伯はぶち殺しておいたので気にするな。

                   お前を愛する父より』

                     

 再び、フィーネは泣き出した。どうしようもないほど、涙が止まらない。悲しい訳ではない。

 けれど、涙が止まらない。


「・・何がどうなってやがる? 」


バンドー、空気を読め。今は何もしなくていい。・・多分、なにもしないほうがいい、今は。 
















ここで第二章暴風姫編を切ろうと思っています。

ここまで読んでくださった方、お疲れ様でした。実は本当に「小説家になろう」を利用するのは初めてで、趣味で書き始めたんですが、二章の途中でアクセス解析の存在を知り、確認したら予想外に見てくださっているようでちょっとびっくりしました。ありがとうございます。



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