王都ハイナスケインに入場しました
ハイネケン飲みながら書いてたら、間違えそうになった。
カスミがデスパレスの魔法屋で探して買ってきた王都ハイナスケイン行きのルーンにゲートの魔法を唱え、バンドーとティナ、そしてアメリアがゲートの青白い円環をくぐった先は、意外な事に小高い丘の上だった。
そこは王都ハイナスケインを見下ろせる小高い丘で、丘の上では時折りゲートの青白い円環が立ち昇ったり消えたりして人が現れている。
王都ハイナスケインの街内はダンジョンと同じく、ルーンの登録制限がされている。ゲート魔法さえ使えれば簡単に入られるようでは、王都として具合が悪いのだろう。
ハイナスケインは切り立った台地の下に半円状に広がる城壁と市街地、そして台地の上には王宮ハイナスパレスと主な貴族が住まう高級住宅地とで成り立っている。
「バンドーさん、お土産楽しみに待ってます! 」とはカスミの談だ。
彼女はバンドーの王都行きを聞いても心配する風もなく、がんばってきてください! と言っていた。
状況が判っていないのか、それともバンドーを信頼しきっているのか。多分後者だろう。
「バンドー、貴殿には悪いが別行動を取りたい。私は王宮に行ってガイナス殿に会わねばならんし、他の根回しもある。まずは宿に入り、私からの連絡を待ってほしい。宿はそうだな、『黒兎亭』がいいだろう。あそこの食事はうまいし、宿の主人は私の事を知っている。暴風騎士団のアメリアの紹介と言えば安くしてくれるだろう。」
とは言うものの、バンドーもティアも王都ハイナスケインは初めて。止まる宿の位置すら判らない。
「王都の城壁の門から台地へと続く大通りをまっすぐ行くと、右手に冒険者ギルドがある。そこで聞いてくれたほうが判りやすいだろう。」
そう言い放つと、アメリアさんは馬にムチをくれて、駆けて行った。
アメリアさんって実は結構、大雑把なのか? そう言えば、魔石探しをしてた時も間に合いそうもないスケジュールだったし、結構行き当たりばったりというか。
「ケイン君、行きましょ? 」
丘を通っている街道を下りていくと自然に王都の門に至る。
なんだか、ティアがうれしそうだ。
「ティア、一応仕事だぞ? 」
「そうとはとても思えないけど? 」
「はあ? 」
「だってキミは褒美とかいらないって言ったんでしょ? そうだよね?
女の子助けたいだけなんでしょ? キミは今朝、そう言ってたわよね?
せめて宿の料金くらいは請求しなさい?
大体、デスパレスのギルドには王都に行くって、ちゃんと報告を入れたの?
キミはギルド員なのに判ってる?
そういうところがまだお子様なのよ。
私がカスミちゃんに頼んどいたからいいけれど。」
くっ、これだから女は。
バンドーが口を半開きにして、頬をひきつらせるとティアは満足そうに笑みを浮かべ、
「冗談よ。さっ、行きましょ? 」とバンドーの手を引く。
「や、宿の部屋は別々だぞ? 」
「何? 仕事を手伝わせる私に払わせる気? 」
城壁の門の入場審査は身元確認があるのだが、二人の持つデスパレスのギルドプレートを見せると、すんなりと許可が下りた。まあ、冒険者ギルドは独立志向が強いが、一応王立ギルドだからな。これ以上の身分保障はないだろう。
アメリアさんに教えられた通りに、門から続く大通りを歩いていくと、右手にお馴染みの冒険者ギルドがみつかった。
地上4階、地下2階。3つの入り口位置まで一緒。
「デスパレスと同じ建物じゃない、意外だわ。」とはティアの談である。
後で受付で聞いてみたところ、冒険者ギルドとは別に、ギルド本部が台地の上にあるらしい。
二人は受付で、王都ハイナスケインでの登録を済ませる。ギルド員の動向はギルドに早めに報告するように義務付けられているし、登録を終えないと仮に王都で何か仕事を受けても報酬をもらえない。魔石の買い取りもしてもらえない。ついでにアメリアに聞いた、宿屋”黒兎亭”の位置も教えてもらう。
「バンドーさん、今日のゲート便で荷物が届いてますね。お受け取りになりますか? 」
「誰からだ? 」
「デスパレス冒険者ギルドのギルドマスター・レイからですね。お受け取りになりますか? 」
聞いてない、聞いてないぞレイ教授。だが、デスパレスのギルマスからとなれば、受け取らない訳にはいかないだろう。ちなみに、受付のエルフのお姉さんが何故「お受け取りになりますか?」と聞いたかというと、着払いだからです。ゲート便は銀貨10枚かかります。
「あんの、クソジジイ。又、俺をはめやがって。」
取りあえず、革ひもでくくられた荷物を受け取ると銀貨10枚を払い、後ろが混んでいたので中身も確認せずに冒険者ギルドを出る。
宿屋『黒兎亭』は、ギルドの右の小道を入って2本目の筋を左に入ったところにあった。確かに、アメリアさんの言う通り、初めての人間に説明するよりは冒険者ギルドで聞いた方が判りやすいかもしれない。
『黒兎亭』は石造りのこじんまりとした縦に長い4階建てで、1階は食事スペース、2~4階が宿屋になっていた。
「あんたら、王都は初めてだろ? 」
いきなり綺麗なお姉さんに、おばちゃん口調で話しかけられて驚いたが、彼女が『黒兎亭』の女主人で名前はトレイシー・メガデス・アルメイラ。当年346歳のエルフらしい。らしいというのは、エルフの特徴であるピンと立った耳の先が何故か切り取られていて、でも理由はちょっと聞けない。何か聞いてはいけない気がする。
(・・あれっ? )
「トレイシーでいいよ。泊まりかい? 朝食はつけるかい? 」
取りあえず、空いていた2部屋を取り、朝食付きで2日分の料金を支払う。銀貨16枚だ。やや高く感じるが、王都は初めてなので、よく判らない。
「あっ、そうだトレイシーさん。俺達、暴風騎士団のアメリアさんの紹介でここに来たんだ。」
「アメリアの紹介かい?最近、見ないと思ってたんだ、彼女は元気にしてるのかね? 」
「ああ、近々俺たちを訪ねて、ここに来ることになってるぜ。」
何故か、2部屋2日分で銀貨10枚にまけてくれました。申し訳ない。




