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君はあるがままに なるように  作者: 風神RED
第二章 暴風姫編
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王都に行くためには

なかなか話が進まない・・

翌朝、早くにティアが来た。まあ、元々来る予定になっていたようだが。


「・・ケイン君、キミの頭の中は一体どうなっているのかな? 」


昨夜急に決まった事、次の日の朝一番に、こうしてティアに話しているという事を言いながらティアの説得を試みる。まあ、翌朝一番にティアに伝える事になったのは、偶然なんだけど。


「可哀想じゃねーか。12歳の女の子がトイレにも行けず、流行り病にかかったまま3日3晩ひとりで閉じ込められるんだぜ? 助けるしかないだろ? 」


ティアはまだ怒っている。


「王都に行って薬を飲ませて、すぐ帰ってくるだけだ。アメリアさんには、褒美も何もいらないから、終わったら、すぐデスパレスに返してくれって言ってあるし、なっ? 」


ティアは、まだ額に手を当てて怒っている。いや、あきれているのかもしれない。


「スキルの事も伏せる。取りあえずアメリアさんには、俺が持っているスキルは『絶対魔法防御』だと、言ってある。まあ、どちらのスキルも滅多に持っている奴がいないし、ばれねーだろ? 」


ティアはそれでもしばらく考えた後、反対するよりも自分が協力してバンドーの仕事を早く無事に終わらせたほうがよいという結論に至ったようだ。


「・・・わーかったわよ! それで? 私は何をすればいいのかしら? 何か私に用事があるって、カスミちゃんが言ってたわよ? 」


そう言うと、片手の人差し指を立てながら腕を組んだ。彼女とバンドーの付き合いは、もうかれこれ10年近く。バンドーの性格や行動は把握している。


俺がティアに会いたかった理由は王都への移動手段だ。アメリアさんは馬で来たようだがゲートの方が断然早いに決まっている。フィーネ姫の魔力暴走が、もう始まってるのか、あるいは彼女がかかっている流行り病の病状がどれほど重いのかは知らないが、何より早さが優先されるのは確かだろう。


問題は、ティアが王都のルーンを持っているかどうかだ。


「無いわ! 」


即答ですか、だが無いものは仕方がない。


ゲート魔法は移動手段として優秀なのだが、移動先を記録したルーンが無いと、そこへつながるゲートを開くことができない。ちなみに迷宮デスパレスをはじめとするダンジョン内部はルーンに記録することができない。つまり、ゲートでいきなり50階層に移動とかはできないという事。


ヒストニア王国の王都ハイナスケイン。冒険者ギルドの本部もあるそこには、休憩なしで馬で飛ばしてだいたい4日。普通は1週間といったところか。もちろん、バンドーは行った事がない。


「あのー」


遠慮がちにカスミが手を挙げる。カスミは最近、いろいろと役に立ってくれている。裁縫スキルを覚えたり、風呂を沸かしたり、掃除をしたり。そう、住み始めて判ったのだが、バンドーの家は一人で住むのには広すぎる。しかもデスパレスに泊りがけで5日とか6日とか行くものだから、掃除などしている暇がないのだ。まあ、家にいても滅多に掃除はしないのだが。


「王都ハイナスケインのルーンなら、魔法屋さんで普通に売ってますよ? 」


ティアは人差し指を唇に当てながら、視線を上に泳がせている。


「・・売ってるかもしれないわね。私は自分で登録するから、登録済みルーン何て興味がないので、はっきりとは覚えてないけれど。」


なんだと? そう言われれば、そうかもしれない。俺は魔法を使わないから、どこで何のルーンを売ってるかなんて知らないし興味がない。ティアは逆に、必要あれば自分でルーンに登録するから、空ルーンにしか興味が無いのだろう。王都ハイナスケインに行きたい人でゲート魔法が使える人には需要がある訳だし、売っていてもおかしくはない。第6位階の魔法でゲートを覚えても、登録ルーンがなければどこにも行けない事を考えれば、カスミの言ってる事は、恐らく本当だろう。


「よし、じゃあカスミ。この金で王都行きのルーンを買ってきてくれないか? 頼む。」


「判りました! 」


カスミは元気な声で返事をすると、バンドーから金貨袋を受け取り、街に飛び出して行く

最近のカスミは本当に役に立つな。ティアの視線が気になるが。


さて、次はアメリアさんだ。そう思ったところで、ティア達と話していた食堂にアメリアさんが入ってきた。


「すまない、思ったよりも寝てしまった。」


あれっ? 昨日と比べて何かアメリアさんの表情がやわらかくなっている気がする。そう言うと、


「・・・そうかもしれないな。」と笑われた。


「実は昨日まで私はほとんど睡眠をとらずに行動していた。貴殿と話して、光が見えて、少し安心してしまったのかもしれないな。」


なるほど、アメリアさんはそれだけ、フィーネ姫の事を大切に思っているという事、なんだろう。

俺はアメリアさんに王都ハイナスケインにゲート魔法で行くつもりである事を告げる。


「そうか、私も同行しよう。」


ちなみに、ゲート魔法で呼び出される円環は、馬に乗った人間くらいなら通り抜ける事が可能だ。


「まず会ってもらうべき人がいる。王国近衛騎士団団長のガイナス・ザルツブルク様だ。彼の協力無しには貴殿は金剛の間に近づく事もままならんだろう。」


なるほど。まあ、それはそうだろう。金剛の間に閉じ込められているとはいえ、相手はヒストニア王国第3王女だ。当然、宮廷守護の近衛の守備範囲に入るだろう。一冒険者の俺ごときが簡単に会えるはずもない。


「後は、念のために陛下の了承を取らなければならないのだが・・。これはガイナス様に頼む方がいいと思う。」


まあ、騎士団の副官と王国近衛騎士団団長とでは格が違うのだろう。そのへんは冒険者である俺では判断できない事なので、アメリアさんに任せるしかない。


「了承を取れない可能性も、あるんじゃないのか? 」


俺は念のために聞いてみる。昨夜、物騒な事を言っていたからな。


「・・・・大丈夫だとは思う。一応、策は考えておくが。」


過去に宮廷の魔術師の手に負えず、金剛の間を作らせた陛下はそもそもフィーネ姫に薬を与える事は不可能だと思っているのかもしれない、とアメリアさんは言う。だから、


「詳しい事は報告せず、ただ薬を与えてみる、とだけ言えば許可は下りるだろう。」


臣下の手前もあるのだから、とアメリアさんは付け加える。


なるほど、その時、何故か俺はふと、逆じゃないかな?と考えていた。ひょっとして、ドッガーズ国王陛下は臣下に犠牲が出るのが判っていて、自分の身内を助ける訳にはいかないのではないかな?と。


陛下は勇猛で部下を重んじる人柄だと伝え聞いていたからだ。これは心のメモ帳にメモっておこう。


「バンドー、私も行ってもいいかしら? ゲートを開けるだけで待ってるのは嫌だわ。」


そう言いながらもティアの視線はアメリアさんの方を向いている。

これは俺に言っているというよりは、アメリアさんに確認をしているのだろう。


「判った、私の方で何とかする。」


アメリアさんのその言葉で、ティアの王都ハイナスケイン行きが決定する。帰りのゲートはあった方がいいに決まっているので、俺としても問題は無い。


とにかく、カスミが帰ってくるまでに出発の準備を整えておこう。






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