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君はあるがままに なるように  作者: 風神RED
第一章 ユメとカスミ編
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修羅場はひそかに忍び寄る

今回、話が乱高下します。お聞き苦しい会話があるかもしれませんので、ご注意ください。

ブートキャンプ二日目、順調だ。極めて順調だ。カスミが詠唱可能な魔法、ファイアーボールとシャドゥウィップは、バンドーに当て続けたおかげで魔法習熟度MAXレベル10に達した。リアクティブアーマーもあるが、あれは自身に唱える魔法なので習熟度を上げることができない。


だがまあ、リアクティブアーマーに魔法習熟度は必要ない。あれは習熟度に左右されず、効果は一律なのだ。そもそも、後衛が常時唱える魔法なので、気が付けば習熟度MAXになっている。そんな感じだ。


それより驚いたのはユメの格闘センス。こいつは元々、鍛えられた細身のいい身体をしていると思っていたのだが、予想以上にゼノ式格闘術に順応している。


「よし、ちょっと休憩するか! 」


バンドーは食堂から庭先にイスを持ち出し、座ると大きく息を吐きだした。


何て健康的なんだ! こういうのもいいじゃないか!


カスミもユメも、バンドーが思った通りに成長してくれている。いや、思った以上だ! カスミもそろそろ、新たな呪文を覚える必要があるな。ユメはどうしようか? バンドーがそんな事を考えながら、額に手を当てた時、


コォォォォォォォ! という甲高い音が耳に入った。


これは聞き慣れたゲート魔法の音だ。ティアか? というかここのルーンを持っているのはティア以外に考えられない。 


予想通り、ティアがバンドーの背後に現れる。


「よ~、ティア。この前は助かった。ゲート、ありがとな。そうだ、よかったらカスミに第3位階の魔法を教えてもらってもいいか? 」


バンドーは片手を挙げてティアに応える。だが、


ティアの様子がおかしい。近寄るなり、左手をバンドーの頭に、そして唇を右耳に近づけて小声でささやく。


「テラスで冗談のつもりで言ったんだけど、本当に3人で遊んでるとは、思いもしなかった。」


ティアの声が震えている。あれ? これは怒ってるのか?


「ケイン君・・」


あ~、これはやばい。本名はやばい。


「キミは前に私に言ったよね? 魔法習熟度が上がる事は内緒にしてくれ。ばれたら王都の連中にさらわれるかもしれないって。」


「言・・言いました・・。」


「じゃあ、何であのアイアンプレートの娘はL10のファイアーボールをバンバン撃ってるのかしら? 」


カスミのアイアンプレートは目立つ。あいつは杖に紐つけているからな。今度、注意しよう。


見るとカスミが、ファイアーボールの魔法習熟度レベルMAX達成がうれしいのか、バンドー邸の庭を囲う塀に向かってバンバン撃ち込んでいる。バンドーの家の庭を囲う塀は、第5位階のエクスプロージョンを食らっても壊れることはないつくりになっている。・・なっているのだが、


やめろ、カスミ。やめるんだ! 休憩と言ったじゃないか! それに第一、お前は習熟度MAXになったんだから、もう撃つ必要はない!


「カ、カスミが頑張ったからじゃないかなぁ・・? 」


ティアが、今度は両腕をバンドーの首元に絡め、頬をなでる。後頭部には彼女の胸の感触。


「そう、じゃあ聞くけど、あの盗賊の娘が演ってるのって、”ひよどり”だよね? ケイン君、あなたいくらゼノ式免許皆伝だからって、勝手にゼノ式を広めるのは、まずいんじゃないかしら? 」


ユメは短剣術にゼノ式格闘術を取り入れる事、著しい。だが、今はまずい、まずいのだ!

ユメさん!今は休憩中ですよ?!


「ひ、ひよどりって、あんなんだっけ? 」


言いながら、バンドーの態勢がややイスからずり落ちる。


「・・・・お祖父さまに言うわよ? 」


ティアの唇が、すぐそこまできている。


駄目だ、それは駄目だ! そんな事をされたら、本山召喚。最悪、再修業・・。


「んぐっ・・・。ティア・・・姉。・・まじ勘弁・・。」


パーティ名「星屑の光」リーダー、通称 聖魔女。


本名ティア・アーハイト・ゼノア。ゼノ式格闘術、創始者の孫娘。そして、幼い頃のバンドーの命を救った事もある。当時は修道女見習いだったのだが。。


だがバンドーのセリフを聞いた瞬間、ティアは手を放した。


「冗談よ。私がそんな事、する訳ないじゃない。」


途端にバンドーはイスからずり落ちた。


「それで? あの娘? カスミちゃんだっけ? に、魔法を教えればいいのね? 」


「お、おう。頼む。」


ティアはまるで何事もなかったかのように進み出ると


「カスミちゃん? こんにちわ! 」


「あっ! ティアさん! この前はどうもありがとうございました! 」


「カスミちゃん? 頑張っているみたいね! お姉さんが、第3位階の魔法、教えてあげようか? 」


「ええ?! 本当ですか?! うれしいです! お願いします! 」


何故だろう、俺の迷宮で鍛えた感覚が、修羅場はまだ続いていると告げている。こういう時は一体、どうしたらいいんだ?


何か他にやる事はないだろうか?


そうだ! 薪割りをしよう! 


風呂を焚くのに薪は必須。オノで薪を一心不乱に割れば、心も落ち着く! やり始めても違和感ない! 多分!


スパァーン!




そして夜。


カスミはモンモンとしていた。近くでユメが寝転がっている。


「ねぇ、ユメちゃ~ん。新しい魔法、何がいいかな・・? 」


結局、カスミは新しく覚える魔法を決めきれないでいた。ティアが示した候補が8種類に及んだこともある。


「魔法の事はうちに聞いても無駄や。カスミちゃんの好きにしたら、ええねん。」


「・・そうなんだけどぉ・・」


そうだ! バンドーさんに相談しよう! バンドーさんならきっと、役に立つアドバイスをくれるはず。思いつくと居ても立っても居られない。


バンドーの部屋は2階にある。カスミ達の客間は1階。カスミは決意すると部屋の外に飛び出し、階段を登った。そのすぐ先に、バンドーの部屋はある筈。


バンドーの部屋の扉がわずかに開いている。声が聞こえた。あれ? ティアさん?


「ケイン君? 一体、どういうつもりなの? 私には一人でやりたいと言っておいて。若い娘を二人も引き込んで! 」


「ティア姉、今はそんな事、どうだっていいだろ? 」


「そんな事って、どういう事よ! 」


「・・こういう、事だよ・・! 」


「やん・・あっ・・」


漏れ聞こえる声。明らかにふたりは、いちゃついている?


カスミの身体が自然、熱くなる。思わず口を半開きにして、両手を頬に当てる。これ以上、進んじゃ駄目!


(これは見てはいけない! 見てはいけないものなのです! )


でも見たい。ううん、駄目、もし見つかったら? けれど見たい。でも見ちゃ駄目ぇ!!

理性と欲求の狭間で意思が格闘した結果、カスミは引き返すという結論に至る。


(二人は、付き合っていたんだ? でも禁断の姉弟愛? えええ? )


階段を駆け下り、ユメの待つ客間に飛び込むなり、ベッドの中に飛び込む。


(うううう、今夜は眠れないのです・・。)


カスミの長い夜が始まったのであった。




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