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君はあるがままに なるように  作者: 風神RED
第八章 
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泥団子

14階層の平原エリアは広いのだが、突破は比較的容易。というか、ここがダンジョンなのかと思わず疑うほどの広さで平原が広がっている。それで何故突破が容易なのかと言うと、13階層から降りてきてひたすら真っすぐに進むと、その先に15階層への階段があるのだ。つまり迷う心配がない。


この階層に限って言えば、迷宮ですらないだろう。だが、ここ14階層は中級以上の冒険者に大人気であった。何せ迷う必要が無い大平原で風属性の敵を狩り放題なのである。シルフィーやウィンドエレメンタルは確かに風魔法を撃ってくるし、特にウィンドエレメンタルに近付かれると発する風魔法に捕らわれて動けなくなる事もあるのだが、この階層まで降りてくる冒険者達にとっては些事であった。


「……『紅蓮』クラッカーとか知ってるか? 」


バンドーの問いかけに、アンは首をぶんぶん降る。


「カトルのオリジナルに『全敵知覚化エネミーパーセプション』という魔法があってな…… 」


パーティ内メンバーに、カトルが知覚化してターゲッティングしたデータを割り振る事により、パーティ内でターゲットを共有する魔法なのだが、これを発動させたうえで、パーティメンバーが魔法攻撃すると、全周囲の敵に自動で攻撃がいくのだ。さすがに時間制限はあるようだが。これをカトルのパーティが行うと、ひどい惨劇が起こる。しかもカトルのパーティは全て魔法使いであり、ここ14階層は遮る物の無い平原。


誰が名づけたのかひと呼んで『紅蓮』クラッカー。たまにカトル幼稚園からも参加者がいるという。


カササギの魔法の師匠であり、デスパレスでも有数の魔法の使い手であるカトルには、バンドーも子供の頃からお世話になっている。


「…… 」


「行くぞ、アン! 」


だが、今回は狩りが目的ではない。ふたりは直進してさっさと15階層を目指す。



15階層も同じく風のエリアが続くのだが、この階層は一転して正統ダンジョンになっている。エリアの端が入り口となっていて、螺旋状に中央に向かって迷路が続く。渦の中央に16階層への階段があり、そこまで踏破しなければいけない。迷路の難易度は低いのだが、狭い通路でウィンドエレメンタルの巨体に会うと、なかなかにやっかいかもしれない。まあ、バンドーにとってはむしろ好都合なのだが。


バンドーは先頭に立つと狭い通路を気にせず、螺旋中央に向かってひたすら走る。出会う敵は全て分解し、とどまる事を知らない。少し、時間を掛け過ぎたという気にもなっていた。その後ろを、アンが黙々と付いていく。


「あらよっと! これで最後か? 」


何匹目かのウィンドエレメンタルを分解消去し、先を急いでいると、壁面の緩やかな曲線がやがて急になってきて螺旋の中央と思われる付近に至る。壁を曲がり切ると、地下に降りる階段を見つけた。


「バンドーにい


「どうした? 」


「16階層のボス部屋まで、また先導してもいい? 」


バンドーは頷きながらハンドサインを送る。アンは嬉しそうに先に走り出すと、何やら腰の後ろから妙な物を取り出した。


「何だそりゃ? 」


見た目は泥団子そっくり。手で掴んでいる様子から適度な硬さを持っているようだ。


「イルミダからもらった」


アン・ラスティは振り返らずに、先を行く。


イルミダから? 何か嫌な予感がするのは気のせいか。見ると腰の後ろにまだ同じ物がいくつかぶら下がっている。


16階層の構造は、基本的には火炎エリアのボス部屋がある13階層と同じ。奥に広がる大広間までは石畳が続く単純通路、この階層に罠の類は一切無い。通路側面には一定間隔で先人が残した魔法の灯火が吊るされていて、ボス部屋までの道筋ははっきりしている。


ふたりは大広間手前で止まるとアンが敵の動向を気配探知で探る。


「結構いるね」


何やら嬉しそうに聞こえるな。


「シルフィが8体にウィンドエレメンタルが2体? 結構固まってる…… 」


そう言うなりアンは走り出す。バンドーは何も言わず、彼女の後ろに付いた。彼女の実力は見せてもらったので、何かあれば後ろからフォローすればいいだろう。


やがてシルフィの集団が前方に姿を現した。シルフィは風の妖精とも言われていて、緑色の羽根に銀色の雫が落ちたような模様を持ち、大きな目に細身の身体をした一見可愛らしい姿をしている。だがその実、凶悪で、行動阻害のスキルやブロウの魔法を撃ってくる。


アンは走りながら、やおら手に持っている泥団子に苦無を突き刺すとシルフィの集団に投げつけた。そして潜伏で一瞬気配を立ち、方向を変えて側面に回り込みながら暗殺クラスのスキルを発動させる。


「『疾走七輪』…… 『爆点華』! 」


地に手を付け、扇状に振るったかと思うと疾走七輪の火線がそこから八の字状に這い、さっき投げつけた泥団子に向かうのを見た瞬間、アンは後方に飛んだ。


「待て待て待て、まさかそれ! 」


「あっ」


あっ、じゃねえ。


今頃『下がれ』のハンドサインを出してるアンの手元を見るよりも前に、バンドーも任意の方向に飛足で加速して、頭から横に転がる。


瞬間、大音響が轟き、火花が上がる。転がりながら態勢を立て直したバンドーが見たものは、無残に砕け散ったシルフィー達の死骸だった。


火薬の匂いがする。


「イルミダ、あいつこんなもん、いつの間に」


そう言いながら、残されたウィンドエレメンタルが寄ってきたのをみて、バンドーは左肘に装着した双頭蛇ケーリュケイオンからアンカーを射出すると魔力分解を発動する。


傍らに目をやると、アンも背中から小刀を取り出して、もう一匹のウィンドエレメンタルに向かっているところで、バンドーもそれを援護した。


「てへっ」


「てへっじゃねーよ。ひょっとして初めて使ったのか? 」


アンの視線はあさっての方向を向いている。


「お、思ったより威力があったね…… 」


大広間の敵を全て掃討し、ボス部屋へと続く扉の前で鼻の頭をかきながら、そう言うアンである。バンドーは軽く溜息をつくと、アンの肩に手をやる。


「後、何発あるんだ? 」


「4発、……5発? 」


「没収する! 」


「ええええ?! 」


後一発! とかいうアンの熱意に負けて、ボス部屋でいきなり使用した後に、残った敵はバンドーがおいしく片づけました。


16階層突破。




































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