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君はあるがままに なるように  作者: 風神RED
第八章 
121/134

水辺から火炎エリア突破中

迷宮デスパレスに現れる魔物のほとんどが魔法攻撃を主体とするもので占められている。故に王国にいくつかある迷宮の内でも高難易度と言われ、取れる魔石も高純度のものが多い。魔石の純度は冒険者の死亡数と比例すると言われていて、より多くの冒険者を殺した魔物の魔石ほど熟成が進むという。それがより多くの冒険者を呼び込み、やがて迷宮を中心に街が形成されていった。迷宮都市デスパレスの誕生である。


やがてそこには当たり前のように冒険者ギルドが置かれ、そのギルドに所属する冒険者が王国でも最精鋭の冒険者になっていった事は別に不思議ではない。


とは言え迷宮デスパレスは深く、未だ底に到達したものはいない、という事になっている。その最深層到達記録は75階層。だが、その記録内容は詳細には残っておらず、デスパレス冒険者ギルド内に封印されているとも、余りに信じがたい内容であったために破棄されたとも言われていた。魔神ヴァルケラススの存在の噂はあったものの、誰も確認する者はいなかった。


「でぇりゃー! 」


気合一発で双子リッチが消し飛ぶ。旋風のように身体を回転させ、残ったスケルトンメイジは粉砕される。


「へっ」


目の前で5階層への扉が開くのを見ながら、バンドーは舌なめずりする。ここまで2時間弱、普通のパーティなら早くても半日はかかるだろう行程も、今の彼ならジョギングにも等しい速度で駆け抜ける事が出来る。階段を駆け下り、突如広がる草原の中を突っ切る。この5階層から8階層までは何故か亜人達が暮らしていて、まともに戦闘力を有しているパーティならば敵対行動さえ取らなければ駆け抜ける事が出来る。ただし、亜人達は弱者には容赦しない。傷付いた冒険者やパーティからはぐれて迷い込んだ冒険者には襲い掛かる事もあるし、運が悪ければ奴隷にされる事もある。もっとも、強者が弱者に襲い掛かるその様は地上の人間たちであっても、そう大差ないかもしれないが。ちなみに存在が確認されている亜人達は豚鬼オーク子鬼コボルト地妖精ノームと呼ばれていて、5~8階層にかけて広く生息している。冒険者達にとっては腕試しになりはするのだが、余り人気は無い。取れる魔石が小さいうえに、集団で向かって来られると面倒くさいので半ば放置されている。ここで無駄に疲労するより、一つ手前でリッチ狩りに興じる方がはるかに稼げるのだ。


たまにギルド依頼で攫われた冒険者の救出依頼とかはあるのだが。


バンドーもここはいつも、素通りする。たまに顔馴染みのある地妖精ノームに挨拶する事くらいである。


9階層~10階層は水辺が広がっており、再び魔法攻撃メインの敵が現れる。大量のウィルオウィスプにウォーターエレメンタルが混ざる感じだ。ウィルオウィスプは青白い光を放ち空中を浮遊する球体で、その攻撃方法は単純極まりなく、生物を見ると体当たり攻撃を仕掛けてくる。実はウィルオウィスプ自体が帯電していて、触れられるだけで魔法攻撃扱い、しかも物理がほとんど効かないうえに数が多いというやっかい極まりない相手である。風魔法にはとことん弱いのが救いであったが。そしてウォーターエレメンタル。こいつは数こそ多くは無いのだが、冒険者には人気がある魔物である。形は水色のイソギンチャクを大きくしたような感じで回転しながら触手のようなものを伸ばしてくる。攻撃力はさほどではないものの、体力が高く倒すのに時間がかかったりするのだが、落とす魔石が水系の高純度である事から中堅冒険者は好んで相手をする。ただしウィルオウィスプ対策が必須であったが。


バンドーはこの階層を通過しながら、何匹かのウォーターエレメンタルを魔石を残して分解し、一気に10階層を越える。ここで背後に人の気配を感じ、一旦通路で休憩を取る。


「やるじゃねーか」


息を切らして追随してきたのは『黒猫のアン』ことアン・ラスティであった。


「ケインにい、早過ぎ」


「アン、俺の事はこれからバンドーと呼べ」


実のところ、今はそれどころではないのだが、こいつには説明しておかなければならない。


「ケイン・ジューダス・コモロの名前は捨てた。母上とも縁を切ってきた」


アンはまだ肩で息をしている。


「それと、付いてくるのは30階層までにしろよ。適当な安全地帯はそこくらいしか無い。お前はゲートを使えないんだし、俺に離されたら孤立して死ぬぞ? 後から来る奴らに合流しろ」


「判った、バンドーにい


やけに素直だが、その呼び方は何だか気持ち悪い。


「バンドーでいい。呼び捨てにしろ」


そう言い捨てると、10階層から11階層に降りる通路途中にある水辺で水をかぶる。ここもキャンプ用地ではあるが、今は水の補給と水浴びだけしかしない。この先は火炎エリアになっていて、ファイアーエレメンタルとファイアーウルフが待っている。


「さて、行くぞ? 」


アンはあくまで付いてくるようだ。バンドーとしてもゼノ式の『月下桃華の峰』以来の付き合いであるし、サムニウムの一件でも世話になっているアンは無下にはできない。それが判っていて、こいつも付いてきているのであろう、そんな事を考えてしまうバンドーはひねくれている。


「バンドー、ここからでもアリと連絡を取れる」


「はあ? 」


「アリは今、ティア様と一緒にいる。これから5階層らしい」


アリとは、連隊レジメント『星屑の光』のアリ・ヘルシオンの事。アンと共に星屑の切り込み役で、ゼノ式の使い手であり、盗賊の職業クラスに付いている。


以心伝心テレメトリメッセージか」


盗賊系のスキルで持っている者同士の簡単な会話ができる便利スキルだが、これだけ階層が離れていても使えるものなのか。知らなかった。


考えてみれば、バックアップ組と連絡が取れる事は、地味に便利かもしれない。

いや、恐らくその為にティアがアンを先行させたのか? まあいい。


「アン、行くぞ? 」


アンの尻を叩く。


「きゃん?! 」


「俺のすぐ後ろにいろ、離れるな。付いて来れないようなら声を出せ。無駄に体力を消耗するな。魔石を見つけても極力無視しろ、そういやお前、何階層まで潜った事があるんだ? 」


「……30階層の手前までなら」


ふむ、30階層からは景色が変わるし敵も段違いに強くなるからな。


バンドーは既に先行している。アンも付いてきている。


「とにかく離れるな」


11階層~12階層はファイアーエレメンタルにファイアーウルフが闊歩していて、人をみるなり火炎魔法を撃ってくる。13階層になると、それにファイアーデビルが加わる。バンドー一人なら火炎魔法も無視して突き進むだけなのだが、今それをすると背後のアンが標的になるだろう。つまり、前方に現れる敵はみんな倒していくしかない。


「しゃあねえな! 離れるなよ、アン? 」


「判ってる! 」


近付いて触れて分解してもいいのだが、時間がかかるし左右に別れられたら敵はアンに目移りするだろう。ある程度の距離に近づく敵に、みんな踏み込んでゼノ式に魔力を乗せて中距離で迎撃する。掌底・肘・左足刀から胴回し蹴りと、その全てのゼノ式の技に有り余る魔力を投射して撃ち出す。


「破邪、圧殺! おらおらおらー! 」


周辺の地形は時折り、水蒸気とマグマが噴出しており、気温は急激に上がっている。硫黄らしき匂いも鼻につくし、岩地は滑りやすくもなっている。

破邪の掌底を撃ち出しつつ、『威圧』と『身代わり』スキルを連発しターゲットを引き受ける。

アンとて付いてくるだけの存在ではない。『硬化』スキルは持っているし位階魔法の第1位階の魔装防御リアクティブアーマーくらいは使える。それでいなしつつ、ゼノ式と魔力を組み合わせてファイアーウルフを蹴散らしてもいた。


「突破する、アン? 」


敵の数が減り、進行方向に12階層を抜ける階段が見えてきたところでバンドーは叫び、飛足を全開にした。アンも飛足を使いながら駆け抜け、13階層への階段を駆け下りたのだった。


「さて……」


火炎エリアも残すところ13階層のみ、ここは岩石地帯ではなく通路になっていて枝道が少なく奥の広間まで続いている。あっさりと奥まで行ける事もあるし、途中でファイアーエレメンタルが通せんぼをしてる事もあるのだが、問題は広間の奥がボス部屋になっている事だった。


「いけるか? 」


アンもボス部屋の事は知っている。ファイアーデビルが3体は鎮座している筈で、ファイアーエレメンタルや複数のファイアーウルフもいる事だろう。


「バンドーにいなら楽勝でしょ? 」


涼しい顔で、そう言われても。お前の心配をしてるんだが。


「行くぞ? 」


だがまあ、こいつは少なくともできない事は言わない。取りあえずハンドサインだけ確認する。『威圧』と『身代わり』スキルをバンドーが発動する際のサイン、あとは左右と下がれ。


「ほんじゃま、行くとしますかね? 」


























































ひどい間違いをして書き直しました。 5/8

ユメ→アリ 

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