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君はあるがままに なるように  作者: 風神RED
第八章 
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出立

カスミを連れ去ったのは魔神の意志であろうという事は判った。カスミと入れ替わったのがアルであった事から、彼女が何か知っているであろうと、バンドーはアルに少し魔力を与えて成長させ、詰問したものの彼女の答えは一つだけ。


「恐らくデスパレス深層、75階層よりも深くにいるだろうけれど、それ以上は」


自分にも判りかねるという。バンドーは潜る事にした。カスミがそこにいる事さえ判れば躊躇はない。


彼は家に戻ると準備を始める。皮鎧に油を塗布し乾かし、更にヤニを塗る。考えてみれば今更このような事をしても意味が無い事かもしれないのだが、それはデスパレスに潜る時の彼なりの儀式であった。これをする事をやめてしまうと何だか身体中がむずむずする気がするのだ。50階層までなら今までも潜った事があったし、そこから更に25階層を降りる事も今なら問題なく可能であろうとも思っている。何となれば、【魔力分解】さえ発動させれば全ての魔法は無効、どころか今や剣で切られようが槍で突かれようが、そのものを分解する事によって恐らく無傷で切り抜けられる。レイ教授曰く、このイルミタニアは全てが魔力で出来ているのだ。人が利用できている魔力は、およそ体内にあるものだけである。


ただ問題が無い訳ではなかった。彼とて生身である以上、疲労はするし腹も減る。今まで彼が何故50階層で止めていたかと言えば、それに尽きる訳で、体内魔力を持たない身であった故、位階魔法は相変わらず使えないし、いや魔力を宿す今となっては最初に覚えるだけ覚えた第1位階の魔装防御リアクティブアーマー照射ライトは使えるかもしれないが、第6位階のゲートを使っての帰還など論外、帰りの工程も考えると行き帰りで一週間程度の道程が限界だったと言える。


だが今回は、そのような事も言ってはおれぬ。


「お兄様、遅くなりました! 」


準備を進める中、カササギが約束通り、いや一日遅れてバンドー邸にやって来た。何でも、カトルを説得するのに手間取ったとか。早速バンドーはデスパレス深層にひとりで潜る事を伝えると、カササギは敢然とバンドーの前に立ちふさがった。文字通り、両手を広げて抑止した挙句、両腕を組んで


「私もついていきます! お兄様一人で行く事は絶対に許しません! 」


だいたい、私が何のために『銀翼の華』に入ったと思っているんですか?! と続ける事も忘れてはいない。『何のために』のところで声が裏返っているぞ、カササギ。


「私は、お兄様を助けるためにここに来たんですよ?! それをお兄様は、お兄様は! 」


だがしかし、バンドーにすれば連れて行くなど論外である。相手は人外の魔神であり、人の命を弄ぶ化け物である。そもそも魔神相手にカササギが出来る事など無きに等しい以上、大切な妹を危険にさらすことなどできはしない。


「ティア様に言いつけます、言いつけてやるんだから! 」


こいつ、ちょっと素直になったかと思ったら何てことを。


バンドーは方針を変えた。妥協の産物ではあるが。


ただし、大方針は変えない。魔神のいる75階層近辺には行かせない。これは絶対だ。その代りに途中まで手伝ってもらう事にする。ティアにも声を掛けて、ゲート魔法詠唱可能な者を使い、デスパレスの節目節目にベースキャンプのようなものを設置してもらう事にした。


すなわち、30階層の階段・50階層の階段付近に安全地帯が存在する事から、食料と水と傷薬の類を持ち込んでもらってそこに設置してもらう事にした。そうすれば帰りがずいぶんと楽になるだろう。そもそも帰りはカスミもいるかもしれないしな。


と言う訳で、ヘルミットにアンと連絡を取ってもらい、ティアさんにも来てもらいました……


「ケイン君、あなたは私が怒らないようにしたのを知って、あえて怒らせようというのかしら? 」


そんな馬鹿な、そんなことする訳ないじゃないかティア、と素で返そうとしたが止めておきました。


そういった紆余曲折はあったものの、とにかく出発の準備は整いそして翌朝。迷宮デスパレスに集まった面々は意外に多く


「バンドーさんのところの可愛い女の子がさらわれたそうですね? 僕そういうの許せなくって! 」


一体、何処から聞いて来たのか、恐らくカササギが知らせたのであろうが。

カトルの『紅蓮』の主要メンバーがバックアップしてくれることになりました。ティアの『星屑の光』からもティアとジーンとアンとヒミカが来てるしカササギもいる。


「お前ら、その助かる。助かるんだけど俺は先に行くぜ? 」


実のところ、【魔力分解】による無敵状態にゼノ式の飛足も魔力を得て以来、スピードが倍加しているので、特攻すれば恐らくデスパレスの誰であれバンドーに付いていく事はできないだろう。


「お兄様、これを持っていってください」


そう言ってカササギがバンドーに渡したものは、1本のスクロールだった。


「これは? 」


「カササギが作ったスクロールです。お守り代わりに」


けど、俺は使えないぜ? そう言いかけて止めました。まあ、かさばるものでもないし。お守りと思えばよい。しかし妹よ、お前はいつの間に書写スキルまで獲得していたのだ。


スクロールは位階魔法の行使位階を引き上げて使用する事が出来る。例えば第4位階までしか唱える事が出来ない者でも、スクロールを使えば第6位階の魔法を唱える事が出来るようになる、といった感じだ。


「それじゃあ、手筈通りに頼む! 」


バンドーは先を急ぐので先行するが、バックアップの面々は後からついてきて、30階層の階段・50階層の階段付近にベースキャンプを設立する。実はこれは簡単な事ではない。バンドーが例外なのだ。


デスパレス迷宮前の受付でゴールドプレートを見せて中に入る。いろいろな事があったせいか、妙に久しぶりな気がする。これまで何度となく通った道の筈なのだが。


「それじゃあ、行くぜカスミ! 」


言うなり、バンドーは飛足を点火した。















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