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君はあるがままに なるように  作者: 風神RED
第八章 
114/134

さあ、始めましょうか

なんだ、夢か。


はっきりとは憶えていないがカスミがひどい目にあっていたような気がする。カスミ?

ふと昨晩の事を思い出し、隣りを見ると、そこにはカスミが静かな寝息をたてて眠っていた。


だよなぁ。


はっきりとは思い出せないが、何だったんだあれは。


ここはバンドーが最近寝室に使っている客間で比較的大きなダブルベットが置かれている。


(ええい、くそ。起きて水でもかぶるか)


昨日はカササギと『月下桃華の峰』に行っていた。母上と、マユミと決別して一区切りついたと思う。

ちなみにカササギは、一旦カトルのギルドハウスに行っていて、今日にでも荷物を持ってこっちに移ってくることになっていた。


「効く~! 」


早朝とはいえ、庭先で裸で水をかぶっているのはまずいかもしれない。だがここは俺の家だ。

お山ほどではないが、さすがに寒くはあったが。


「お早うございます、ご主人様」


食堂に行くと、奥の竈にはもう火が入っていてヘルミットがせわしなく朝食の準備をしていた。


「おはよう、ヘルミット。早いな」


「いつもの事です、問題ありません。それより今日、ティア様が来られるそうですよ? 」


聞いてない。


「何でも、一緒に戦闘訓練をしたいから、ご主人様によろしく言っておいて欲しいと、昨日夕方に伝言を賜っております」


昨日は遅くに帰ってきたからすれ違ったのか。それにしても戦闘訓練て、一体何事かとは思ったが、最近ずっとサムニウム族の領域に行ったりして、ほったらかしにしてた分、鬱憤が溜まっているのかもしれない。


サムニウム族の再統一も何処まで進んでいるか、また確認しに行くべきだろうし最近デスパレス遠征もしてないし。


「あ~、かったるい」


魔力分解のスキル把握もある。今までと同様の使い方もできるのか、感覚ではできるという気がするが、実際に試した方がいいだろう。下手に、分解してはいけないものまで分解してしまっては目も当てられない。


取りあえず、午前中はスキルの調子を確かめるながら、久しぶりにフィーネやカスミの魔法習熟度上げに付き合う事にする。


ひとり早く朝食を終え、納屋で皮鎧の整備をしながら身に付けていく。魔力分解スキルの入り切りが完全に自在になっているので、切っている間は体内から魔力が湧きだしてくる。スキルも発動のさせ方によって、いろいろ違いがあるようだ。例えば身体の外に向けて、内に向けて。あるいは強弱の加減の調整。


イルミダには、他に持っていた魔法スキルが影響したせいか『卒業リンカースキル持ちの自覚』とかいうスキルも発現したようだが、バンドーにはない。それによると、次の卒業リンカースキルを得るためにはどうすればよいのかが、漠然と判るとか言っていたが。バンドーには判らなかった。


時間の経過と共に、徐々にみんなバンドー邸の庭におりてくる。午前中は修練に当てるのが日課になっていた。


「バンドー様! 」


振り返ると、アメリアさんの種族魔法であるクレセントアローが飛んで来た。そして一秒後にフィーネの爆炎エクスプロージョンが起動する。


「お、お前ら! 」


フィーネが走ってきて、抱きついたと思いきや、くるりと反転して納屋に駆けこんでいく。そして納屋からアラカンを引っ張り出してきたかと思うと、もう頭上だ。


「フィーネは今日中に第5位階を卒業するのです! 」


第5位階は位階魔法にとっては中級の最後だ。ひとつの魔法の習熟度をMAXにすれば次の第6位階の魔法をひとつ覚える事が出来る。サムニウム族の領域に行く前はイルミダに付き合って彼女の第6位階ゲート魔法の習得に協力していたから、フィーネの気持ちもわかる。


「えい! えい! 」


フィーネの魔力保有量は尋常ではない。彼女は空中から立て続けにバンドーに向けて第5位階魔法、爆炎エクスプロージョンを起動する。


「へへっ」


だがバンドーも、昨日までのバンドーではなかった。飛足を発動させて走り回りながら、立て続けに破邪の掌底を放つ。今までは射程に難があったのだが、魔力を帯びさせてゼノ式を放つことができるようになったので、油断していたフィーネに容易に届いた。


「えっ? えええ?! 」


動揺を見せながらも、アラカンの周囲にシールドを張るところは流石だが、不安定な姿勢になったところをついて、左肘に装備している双頭蛇ケーリュケイオンからアンカーを伸ばし、アラカンの後縁に引っ掛けると引き戻した。


「負けません! 」


アラカンに魔力供給を行い、姿勢を保ちながら上昇に転じようとするフィーネ。バンドーはアンカーをアラカンに引っ掛けたまま飛び上がると短く戻し、そのままフィーネの後ろに飛び乗った。


「もう、バンドー様びっくりさせないでください! 」


「へへっ」


下を見るとアメリアさんが額に片手を当てて、見上げている。すこし呆れているのかもしれない。


「フィーネ、上昇してくれ! 」


フィーネの返事を待つまでもなく、アラカンは力強く舞い上がる。


「これじゃあ、習熟度上げになりませんよー」


「そうだな」


とはいえせっかく舞い上がったのだ。しばらくは大空にいたい気分だったのだが、気が付くとバンドー邸の庭に青白い円環が立っているのが見える。


「バンドー様、誰か来たようですよ? 」


「ああ、そうだな。フィーネ降ろしてくれ」


「了解です! 」


恐らくティアだろう。思ったより早かったな。アラカンが低空になったと同時に飛び降り、見ると結構なメンバーが来ていた。


ティア、ミリア、ジーン・ケニスティもいる。あとは、お山出身のアリとアンに『星屑の光』副官のヒミカの姿も見えた。


「ミリア、誰から感じるの? 」


バンドーに聞こえない小声でティアがミリアに確認する。指し示した方を見て、ティアが


「そう、」


とつぶやいた。


「ケイン君、ちょっとカスミちゃんを貸してくれないかしら? 」


ここに来るなり、ティアは一体どういうつもりなのか。バンドーの口は既に半開きだが、ティアは気にする風もない。カスミが、どうしたものかとバンドーとティアの顔を交互に見て不安そうにしている。


そう言えば、今日のティアはいつもと違う。いつもの、聖魔女と言われる彼女の服装は、青い宝石が、はまったごつい杖を手に持ち、薄紫色の胸元までの修道服、その修道服は胸元から首筋までで、頭には届かない。かわりに額には銀色のティアラを巻いていて、下半身は動きやすいように紺のケープを巻いているのだが、今日は違う。杖は持たず、指にはいくつもの指輪が嵌まっていて、黒皮の胴巻きにレザージャケットを羽織っていた。下半身はこれも黒のレザーパンツである。


「お前…… 」


その服装から想像するに、いやバンドーは言葉に出すのは躊躇われた。


「私は出ないわよ。今はね」


前に出たのは、『黒猫のアン』ことアン・ラスティと魔女ジーン・ケニスティ、そしてミリアである。ゼノ式の使い手であるアリ・ヘルシオンと神聖魔法の使い手であるヒミカはティアの側に控えている。


「カスミちゃん、ダンジョンでは多数の敵を相手にする事も多いでしょ? あなた一人でどれだけやれるか見せてくれないかしら、この3人相手に」


(おいおい……)


これは一体、どういう展開なのか。アンにジーン、そしてミリアは紛う事なく『星屑の光』でも有数の優れた技能を持つ冒険者、いやデスパレス冒険者ギルドでも屈指の使い手と言えるだろう。


「お前ら、ちょっと」


「本気では、やらないわよ。カスミちゃん、あなたもたまには限界まで戦ってみるのもいいんじゃないかしら? あなたなら、できるわよね? 」


こわい、ティアの目が本気だ。一体何がどうなっているのか知らないが、とにかく見守るしかないようだ。


「それじゃあ、始めましょうか」






















































青白い円環が立っているのに気付く

  ↓

青白い円環が立っているのが見える 4/29修正 

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