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君はあるがままに なるように  作者: 風神RED
第八章 
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ほうれんそうは程々に

土曜なので2回目、なのですが、実は初めて話と話の間に挿入する方法を使ったところ、何故か連載小説更新一覧に載りませんでした。まあ、それを狙って挿入繰り返す人を抑止するための仕様なのでしょうけど、ちょっと損した気分。

イルミダが宣言した通り、サカエの里は一日で落ちた。200名程度の兵士達が残っていた筈だったが、縛られたコンコードと戦意旺盛なイルミダ、そしてオンゴロの姿を見るなり武器を投げ出したのだった。


「ただいま」


イルミダは里の奥の神聖な滝の前で帰還の報告を済ますと、すぐさま次の段階へと移行した。

他の全部族にお触れを出して合流をうながしたのである。隣接するハルハとガルツケルプはすぐさま恭順の意を示したのだが、金鉱と鉄の坑道を持つクズリュウと、もともと引き篭もり属性のあるモーラータは回答を保留した。


ここで、バンドー達はイルミダとオンゴロを残して一旦デスパレスに帰る事にした。大勢は決していたし、バンドーには他に行わなければならない雑務がある。


「レイ教授のとこに、行ってくるわ」


そうカスミに言い残し、バンドーは家を出た。最近のカスミはまたまた、目覚ましい進歩を遂げている。もはや第6位階のゲートとマークも唱える事が出来るし、最近は何処から覚えてきたのか、毒攻撃系のスキルや簡易魔法障壁のスキルも身に付いているようだった。


(それにしても……? )


飛足を使い、デスパレスの街中を飛ばしながらバンドーは頭をひねる。どうもいつもと雰囲気が違うようなのだ。


(兵士の数だ、いつも見かけるのより多い? )


気のせいだろうか。


それにしても、頭が痛い。一応、デッドウィン山脈のサムニウム族領域に出かける前に、サムニウム族の処理に関してはカタリナから言質を取っていた。ぽよぽよだがあれで、王国副宰相を務めているのだからそこは問題ないだろう。しかし、それに関する報告はあげなければならない。これはデスパレス冒険者ギルドから伝書を飛ばすか、ゲート便に言伝を頼むかすればいいだろう。


(問題はイルミダをどうするかだよな)


何をどうするかというと、前に聞いた音速のナカジマさんの話によると、イルミダはバンドーの奴隷として既に王立ギルドに仮登録されており、2か月の間に本登録しなければならないらしく、本登録にはギルド出頭が必要になってくる。奴隷紋の刻印と奴隷の首輪の装着が義務付けられているからなのだが。


そもそもバンドーには、そのどちらもする気はない。


「レイ教授、いるか?! 」


ギルド4階のレイの執務室の扉を盛大に音を立てて開くと、執務室内に飛び込んだ。飛び込んだつもりだったのだが、何故か弾力のある胸の谷間に顔を埋めていた。


「あら~、あらあら」


「くっ、この声は」


ふくよかな体つきと豊満な胸、それにこのピンク。そこには予想通りヒストニア王国、第2王女 カタリナ・カッパーニ女侯爵が何故か背伸びをして立っていた。


間がいいのか悪いのか、ともあれ相手は王国副宰相、バンドーも既に騎士に叙任された身である以上、礼を取らざるを得ない。慌てて片膝を付いたところで、扇で肩を叩かれる。


「いいの、あなたに会いに来たんだから~ 」


立って~? とぴょんぴょん飛び跳ねられても反応に困る。ともあれ立ち話でできる話でもない。レイ教授も交えて執務室のソファに着き、大理石のテーブルを囲むとバンドーは早速、今回のサムニウム族の件について話し始める。


「なーに、それ~? 」


この人はやはり真面目モードとぽよぽよモードの差が激しい。一体何に怒ってるのか、ふくよかな身体を揺すりながら、ソファの上で身体を上下させている。


「も~、バンドー速過ぎ~。早過ぎるのは男として、どうかと思うよ~ 」


一体こいつは、何の話をしてやがる、バンドーが口を半開きにした瞬間、真面目モードが来た。


「ちょっと、予想外だったわ。私の計算より一週間も早いなんて…… 」


胸元から取り出した扇を畳んだまま口元に当て、その目は既にジト目である。その先はもちろんバンドーを見つめている。


「騎士ケインが、ここまで優秀だと思わなかった…… 」


カタリナさんが溜息をついているんですけど、何かしたっけ? 


「ああああ、もうくやしいいいいいい! 」


まだカタリナはじたばたしている。


「ああ、もう! レイせーんせ? 今日は引き上げるわ。それからバンドー? 」


カタリナは、やおら立ち上がり、席を移動してテーブルから離れるとバンドーを手招きする。


「騎士ケイン、ここに来なさい。来て跪くのです」


閉じられた扇で、自分の前の床を指し示すと


「は・や・く! 」


しょうがないのでバンドーは型通りに礼を取って跪く。


(さっき、いいって言ったんじゃねーのかよ? )


カタリナの扇がバンドーの肩に置かれ、一呼吸おいて跪くバンドーの頭上で彼女の声が響き渡る。


「騎士ケイン・ジューダス・コモロよ、汝の武功を鑑み、ここに汝に子爵の爵位を授ける。これは汝一代のものではなく、嗣子に引き継がれる。尚、領地は切り取り次第とする、以上! 」


ええええええええええ?


「帰るわ、せーんせ! 」


カタリナは、そう言い放つと乱暴に扉を開けて去っていく。


「ち、ちょっ?! 」


ちょっと待ってくれよと、言いかけても、もういない。


「教授?! 」


今度はレイの方に振り返り、バンドーは口を半開きにしながら回答を待つが、返ってきた言葉は非情だった。


「バンドーよ、お主が悪いわ。カタリナはな、お主の援護の為に今日、1000人の兵士を連れてここに来たのよ。それをお主の報告は、いらん! と突き返したようなものだからのう」


なんだよ、それ? 俺のせいか?


「受けるしか、なかろ? 王国兵士1000人分の働きじゃし」


「くっ! おのれあの肉襦袢! 」


「そこまでにしといたほうがいいぞい、あいつ地獄耳じゃし空間転移ワープも持っとるしのう 」


いつの間に入れたのか、レイはお茶をすすっていた。


「くっ、それどうせレイ教授が教えたんだろ? 」


落ち着け、バンドー。それにまだ、お前にはやる事が残っている。


「それで教授、イルミダ姫の奴隷の件なんだけど! 」


嫌みったらしくナカジマさんから聞いた事を告げて断固拒否してやろうと、思ったバンドー、


「オッケー 」


だったのだが、拍子抜けするほどにレイはイルミダの奴隷解除を承認した。


「はぁ?! 」


「じゃからお主は阿呆なんじゃ。イルミダ姫を奴隷にする意味はなんじゃ? 王国への戦犯容疑をかわす事もあったが、一番は王国からの報復回避じゃよ。故に、もうよかろ? わしの方で登録を外しておくわい」


そこでレイは、悪い笑みを浮かべる。


「何せ、領地切り取り次第の子爵様じゃからのう。当然、捕虜や戦利品の扱いも自由自在じゃよ。よかったのう、コモロ子爵閣下…… 」


「あんの、……くくっ」


肉襦袢ともクソジジイとも言えない、ただただ身もだえするのみのバンドーなのであった。





























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