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君はあるがままに なるように  作者: 風神RED
第七章 サムニウムの後始末
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決意

少しためらいはしたが、引き続きバンドー達はアインの石造りの家にいる。再び、あのような攻撃を受ける可能性を考えると同じ場所にいるのはどうかと思うのだが、考えてみれば周囲の建物は木造や天幕がほとんどなので、古びているとはいえ、ここの方が頑丈だという結論に達した。


ヘルミットは右脚と左脚の一部に大火傷を負った。夜に入り、本人は痛がる素振りをみせないものの、何処か会話が錯綜している。額に触れると熱がある。


「……そもそも私に痛覚は無い、」


と言っていた事から痛くは無いのだろうが、傷がむといけない。熱は、そのせいかもしれない。


横になっているヘルミットの傍らには、バンドーが寄り添っている。そしてその側には、不安そうにヘルミットをみつめるアインもいた。


「すまない、ご主人様。私としたことが、つい気を取られてしまいました」


妖精を見たという。


「タウリの里は深い森に囲まれていて、そこにも妖精が、あれは同じものだったと…… 」


戦闘が終了して呆けていたと思ったのだが、どうやら違ったらしい。


「……恐らく、エターナル・ハイエルフの固有魔法、つい気を許して…… 私は少し眠る事にします」


ヘルミットの瞳が閉じるのを確認すると、バンドーは立ち上がる。


「アン、ユメから何か言ってきたか? 」


ユメには、戦闘終了後に敵の後をつけて偵察に出ろと命じている。ヘルミットが大怪我をするというアクシデントがあったものの、ユメは忠実に任務を遂行しているようだ。


「サカエの里には入ったらしい。それだけだな」


「そうか」


へルミットの怪我の様子が気になるものの、イルミダをデスパレスに返して明日がちょうど3日目。首尾よくいけば、明日にはデスパレス側からのゲートが開くだろう。


「よろしいか? 」


不意の来訪者は、この集落の長であるマノクであった。


「どうした? 」


「バンドー殿、我々の為に戦っていただいて申し訳ない。今更の事ではあるのだが…… 」


実はマノクの集落の者達は、恐る恐るではあるが、初日・二日目のバンドー達の戦いぶりを見ていた。アンやヘルミットの鬼神のような戦いぶりを見せつけられ、思うところがあったらしい。


「サムニウム族は強者を重んじる。あの戦いぶりを見て、感銘しないものなどおらん、そこでだ」


今更ながらではあるが、一緒に戦いたいという。


実はバンドーの当初の作戦では、単独でぎりぎりの戦いを敵に見せる事により侮らせ、戦力を小出しに出させて焦りを生み、最終的に『前世回帰パーシィルメイ』の首魁であるコンコードを引っ張り出すのが目的だった。


本来、この作戦は用兵の常道に反する。戦術上の勝利の積み重ねで、戦略上の数の優位を引っ繰り返す事は至難で、むしろ悪手と判断されるだろう。実は、コンコードにそう思わせる事が目的であったのだが。


確かにバンドー一行は少数に見えるだろう、敵にとっては。だが実際はゲートで味方を呼び寄せる事も可能だし、ゴールドクラスのバンドーやアン、そして規格外のヘルミットは一人でも多人数を相手にできる。その利点を相手に悟らせずに最後の瞬間まで隠し、敵の大将が出てきたところで全力を持って捕えてしまえば何とかなるだろう、と判断していたのだ。


実際にはアンやヘルミットが大暴れしてしまったので、作戦の修正を考えていたのだが。しかし、それが逆に、マノクのこの申し出に繋がっているのだから戦いとは判らないものである。


「マノクさん、実はコンコードを捕まえてサカエの里を落としたら、後はあんた達に任せようと思っていたんだ」


その為にイルミダに銃を作るよう命じたのだが、早いに越したことはない。そして今一つ、理由がある。それは、彼らマノクの集落が『前世回帰パーシィルメイ』から異端認定されていると先に聞いたからでもある。


それはつまり、魔法スキルを持っているという事、となれば第1位階のマジックアロー程度なら習得可能でなおかつ使えるはずで、それが出来れば威力は劣るかもしれないが、新型の銃も使えるのではないかと考えたのだ。


もちろん、壁はある。魔法スキルを持ったが為に異端認定された人間に、更に魔法を使えとはなかなか言えるものではない。そこは、まだ正体を明かしていないイルミダが何とかしてくれるのではないかと漠然と考えていた。


「それで頼みがあるんだが…… 」


この夜、アインの家の火はなかなか消える事が無かった。


___________________________________________



ラケシスが、派遣された部隊の壊滅をコンコードに伝えて彼自身の出陣をうながした翌日、結局その日はサカエの里は動かなかった。何故か? 


「手持ちの半分を出すつもりだ、銃兵も付ける」


数にして200人、金掘りの一行相手には過ぎた戦力である。だが、ここに至りさすがのコンコードも不信感を持たざるを得なかった。一度ならず二度までも、彼が派遣した兵士達は壊滅させられた。当初考えにあった話し合いの可能性は無いとみたほうが良い。いや、疑うべきはそこではなかった。


(奴らは本当に金掘りの一行なのか? 一体誰が、それを言った? )


そこに思い至った事からも、コンコードが凡百の将ではない事が判る。


(実は最初から、マノクが仕組んでいたのではないか? あの脳筋がそんな事をするとも思えんがしかし)


いまだ金掘りの男の姿すら見ていないのだ。例えば腕の立つ冒険者を雇い入れ、金掘りと称して自分達と争わせ、反抗の機運をうかがっているのではないだろうか。


であれば、200人は決して多くはない筈だった。異端者に落ちぶれたとはいえ、マノクは一軍を率いた事もある将である。異端者どもを糾合すれば、それなりの勢力になるかもしれない。となれば、それはもう戦争である。だから準備を怠る訳にはいかなかった。


ヘルミットが暴れた翌日、サカエの里が動かなかった理由はそこにあった。だがそれは彼にとって、最悪の選択になる。その日、マノクの集落ではデスパレス側からゲートが開き、新型銃を携えたイルミダが姿を現していた。そして彼女とバンドーの指示の元、希望者の村人たちに即席で新型銃の使い方と魔法の知識を覚えさせていた。


イルミダは、こう言った。


「これはサムニウムの神が与えた試練です。これを乗り越えずして、サムニウム族の繁栄はありません! 」




そしてラケシスは、 ……彼女は震えていた。


残された数少ない偵察妖精から、イルミダ出現の報告を受けていた。それと共に、彼女は知る。


「あっ……あっ?! そんな…… 」


探していた希少な魔法スキルの大半はイルミダの中にあった。これでは殺せない。そしてついに彼女の脳内に直接、声が響く。


『ラケシスよ、お前に命じる…… 』


「……そんな?! はい、……はい! 万事、お父様のご命令通りに…… 」


命じられた事の意味を理解した。お父様は、私を使って卒業リンカースキルを発現させるつもりなのだ。


「判りました、お父様。ラケシスは演じ切ってみせます…… 」






























実は今日は審判の日でした。4か月ほども放置していたこの小説を再開して、今日で10日目。初めてまともに週別ユニークユーザが出る日だったのです。そう、毎週火曜日に週別ユニークユーザは更新されるのです。

結果は私の予想以上の数でした。


ありがとうございます

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