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君はあるがままに なるように  作者: 風神RED
第一章 ユメとカスミ編
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後始末は大事

カスミちゃんがかわいそー と思う心もあれば、

カスミ 莫迦 と思う心もある

人の感じ方なんて、それぞれですよね。

朝食を片づけて、3人で座るテーブルの上には冒険者プレートが2枚、置かれている。


盾戦士、マコト君のブロンズプレート

僧侶、カズヒロ君のシルバープレート


「それと、こいつも一応、渡しとく。」


片紙にくるんだ、それぞれの髪の毛だ。死体が戻らない事が多い迷宮デスパレスでは、形見代わりや墓に入れたりするのに使われる。ちなみに墓をつくらず、神殿や教会でスピリットプレートを建てて終わる場合もある。あれだ、仏教でいう卒塔婆の木の板が、それに近い。


(これは駄目だな~。)


赤い目をしたカスミが、テーブルの上に視線を固定して、かたまっている。


「それでだな、パーティ『希望の光』で届け出ているギルドの登録情報を更新しなきゃならない。これは速やかにだ。冒険者ギルドではギルドメンバーの把握が最優先で行われている。何か問題があった時は、すぐにギルドに届け出て、メンバーやパーティ情報を更新しなきゃなら、・・」


「・・ぶりです。」


カスミが何か言ったが、聞き取れない。


「・・無理です。」


こいつは一体、何を言ってるんだ?俺の言った事を聞かなかったのか?心情的な事は理解できるが、冒険者ギルドに所属する以上、しなければいけない義務がある。


「おい、ユメ? 」


助けを求めるようにユメの方を見るが、首を振られた。


「くっ、・・・・よし判った。届けは俺が出してやろう。今日中にやっちまう。ユメは? 来るか? 」


ここまで莫迦だとは思わなかった。いや、無理もないのか? 14歳と言えば中2レベル。そんな女の子には、やはりこれはつらいのか?


「うちな~、行きたいのはやまやまなんやけど、ここにカスミちゃんを一人、残す訳にもいかんしな~。」


事情は充分過ぎるほど、判ってんねんで? と付け加える。まあ、そうなるか。仕方ない。ギルド員の情報更新はプレートやそれに類するものの提示で他人が更新することもできる。何故なら、パーティメンバーが全滅した場合、情報の更新は発見者しかできないからだ。


「けれど、これだけは言っとくぞカスミ。今回は俺が代わりに行ってやるが、もしも次回、同じような経験にぶち当たった時、お前は必ず自分でしろ。這ってでも行け。パーティメンバーの後始末は残ったパーティメンバーが責任をもって行う。これは鉄則なんだ。残されたメンバーのな! 」


そう言い放つと、バンドーはテーブルに置かれた2枚のプレートを掴み、胸元に入れる。

カスミが、あっ と言っても、もう遅い。そう、もう遅いのだ。そこで涙に濡れて後悔しろ。


バンドーは食堂を出ると肩当と外套だけ羽織り、家を出た。ゼノ式にはそもそも武器は必要ない。


「飛足! 」


脚に気を纏い、やや少し宙に浮いて街の中央大通りにある冒険者ギルドに向かう。


迷宮都市デスパレスの冒険者ギルドは地上4階地下2階。中世とも思えるこの世界では豪奢なつくりだ。

入り口は3つあって、左は初心者の受け入れ、右は通常冒険者。そして真ん中は、カスミやユメのように召喚された者の受付口だ。前にも述べたかもしれないが、この世界では当たり前のように召喚されたものが現れる。なので、専用の受付を冒険者ギルドが担当している。適性をみて職業ギルドへの斡旋を行っているのだ。


この世界に召喚されると冒険者ギルドの受付で登録し、職業の適正テストを受ける。魔法の素養があるもの、俊敏で盗賊や狩人に向いてるもの、体力があるから剣士か盾戦士といった具合だ。

そしてそれぞれの職業ギルドを紹介される。戦士ギルドや魔法ギルド、盗賊ギルドといった具合だ。そこで一定の知識と、技や魔法を教えてもらい、冒険者として巣立っていくと言う訳だ。


ちなみに、召喚されたものは、最初の最低レベルの魔法や技術は無償で教えてもらえるが、それ以降はお金を支払わないと、身につけることができない。何とも、シビアな世界である。


「冒険者情報の修正を行いたい。パーティ名は『希望の光』だ。」


ギルドの受付まで出向き、窓口の女性エルフに声をかける。


「よぉぉぉぉ、バンドーじゃねぇか。」


どうしたんだ? と声をかけてきたのはパーティ名『鉄鬼』のメンバー、ガンツだ。

ガンツ・パープルフォート。見上げるような大男とは、こいつのようなやつを言う。3メートルはあるんじゃないか? もはや人間じゃない。だが、ここではこんなやつもいるのだ。


「デスパレス4階層で遭難者が出たので情報修正しに来た。」


「お前が来るという事は、全滅か? 」


「いや、違う。4人メンバーのうち、2人は生き残ってる。」


「なんだって~? おい、みんな聞いたか? 」


しまった、こいつはデリカシーが無いんだった。後悔するが遅い。

受付の女性エルフがバンドーに受け答えする。


「承知しました。パーティ名『希望の光』でございますね? どのような修正でしょう? 」


ガンツが目ざとく吠える。


「『希望の光』は死んだパーティメンの後始末もできないんだってよぉ。冒険者の風上にもおけないよなぁ?」


まずい、これはまずい、状況的にまずいとバンドーにも判る。


「ガンツ、黙れ。」


右正拳から肘、頭が落ちてきたところで首を極めて背後にまわり、そのまま落とす。

凄い音をたててガンツの巨体が崩れ落ちる。


受付の女性エルフが目をむいている。


「バンドーさん!冒険者同士の諍いは基本的にギルドは感知しませんが、冒険者ギルド建物内でのいざこざは、御法度ですよ?! 」


くっ、余計に騒ぎが大きくなってしまった気がする。俺は一体、何をやってるんだ?


「とにかく、今回の事は大目に見ますので、ギルドマスターのところに謝りに言ってください! 」


(・・どういうことだ? )


「ギルマスがあなたに、話があるそうです。『希望の光』のメンバーのプレートはお預かりします。」


はい、行って行ってと手を振られる。


(助かったのか? やばいのか? )


判断に苦しみながら、うなずくとバンドーはガンツの背中に回り、気合付けを行って、手当て。正気に戻してから素早く奥の階段を上がった。


ギルドマスターがいる部屋は最上階の4階にある。


「教授、すまね~。やっちまった! 」


扉を開けるなりバンドーは手を合わせて頭をさげた。


デスパレスの冒険者ギルドのトップ、ギルドマスターの名前はレイ・クリサリス・バーサク。何かバーサクと付くと危ない人のような気がしてくるが、極めて真っ当な人物である。

通称、レイ教授とかギルドマスター・レイとかレイ先生とか呼ばれている。ギルドマスターのくせに未だ現役で、たまに迷宮に潜ることもあるそうだ。研究の為に。


白いひげに魔法使いの紫の帽子がよく似合う。ちなみに彼の前職は王立魔法学園のトップだったとか、高名な魔法研究者とか言われているが、さだかではない。年齢は不明。噂では300歳を超えているらしい。

一応、人間である。


「よ~、来たなバンドー。」


「下でガンツを落としちまった。すまねぇ、もう騒ぎは起こさない。ごめんなさい、許してください。」


最後の方は小声である。実はバンドーにとって、レイ教授は頭が上がらない人物。ある理由から、彼をデスパレスでかくまってくれている。


「ほっほっほ、まあいいから座れ。最近は身体の調子はどうだ?またいろいろ話をしようじゃないか。」


バンドーが座るのを待たずにレイ教授は言葉を続ける。


「実はのうバンドー。もうすぐ王都から、お前に依頼を持ってくると人伝えに聞いてな。」


「はぁ? 教授、それって俺の正体がばれたって事か?! 」


バンドー、世話になってる人には敬語を使え。


「判らんのぅ、ほっほっほっほ。まあ、わしはそれは無いと思うんじゃが。とにかく、近々また呼び出すかもしれん。だが状況によっては身辺整理が必要になるかもしれんので、先に言っておこうと思ってな。」


気持ちだけでも整理しとけ、それだけじゃよ、以上、行ってよし。


バンドーは部屋を追い出された。一体、何なんだ?





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