おまけその壱ㅤ見守る魂人達は
ㅤ「……やっと進んでくれたかぁ。」
ㅤ遠ざかる吉永達を見つめながら、その男──日本防衛軍の軍服を着た男は言う。しかし吉永達が戦った新しいタイプでは無く、吉永達が戦地に居た時のような古いタイプの制服……。
ㅤ彼の名は稲葉周平、吉永の親友であり、共に戦い──最後は高橋の撃った弾丸によりその命を散らした、男であった。
ㅤ──彼は死後、ずっと吉永を見守っていたのだ。理由は……彼が未来へ進む事を見守る為。
ㅤそしてその目的は……達成された。
ㅤ「……良かったな。吉永も……彼等も。」
ㅤふと、そんな声がして彼は振り返る、するとそこに居たのは──かつての自分の上官、中津総一郎だった。
ㅤ「ええ、本当に……良かったです。……あ、そろそろ行かなくちゃ……。」
ㅤ次第に薄くなる稲葉の身体。それを見ながら中津は彼に尋ねた。
ㅤ「……逝くのかね?ㅤ」
ㅤすると彼は笑顔で答えた。
ㅤ「はい、もう思い残す事はありませんから。……そういえば基地長は、どうするんですか?ㅤ」
ㅤすると中津は、
ㅤ「私はもう少し……この国の行く末を見守り、逝こうと思っている。」
ㅤと、答えた。
ㅤ「……それじゃ、あの世で会いましょう。」
ㅤ「ああ……達者でな。」
ㅤその言葉を最期に、稲葉は消えた。
ㅤ中津は暫く、その場所に立っていた。そして……誰に言うでもなく、こう言った。
ㅤ「……ありがとう。」
ㅤと。
ㅤその声は誰にも聞こえる事は無い。
ㅤそしてやがて中津も……消えたのであった。
Fin