対偶
「助けて」
◆
その言葉が頭の中で何回も繰り返し再生される。
昔、よく何度も人々から言われたことがある言葉だ。
昔の俺なら二つ返事でその願いを受け取れたが、今現在俺の方が助けてほしいくらいだ。
おい、ちょっと待ってくれ。
先ほどから、思っていたのだが、
この子はなぜパンツ一丁の俺を見ても驚かないのか。
少しもそういう素振りをしていない。
もしかしてだけど、この子、、、 俺のこと好きなんじゃね?
そういうことだろ!そうとしか考えれない!
彼女以内歴年齢の俺にもとうとう春が来た!
と、いつも通りの馬鹿な想像はやめてちゃんと話を聞こう。
「助けてって、どういうこと?」
「その通りの意味です。この村を、私達を助けてください!」
村を見る限り、特に損壊は見られない。
村自体、そうおかしな所は別にない、ただ一点をのぞけば。
「この村やけに人が少ない気がするんだけど、それも関係ある?」
人が少ない村や集落は、そう珍しくはない。
しかし、いくら人が少ないと言っても、この子を除いて誰一人外に出てきてないというのは、俺からしたら異常な光景だった。
「はい、、、実はこの村には、
魔物が住み着いているんです」
何!?村に魔物が住み着く!?
そんな事、聞いたことは一度もない。
さすがにこれには、ただならぬ違和感を感じずにはいられなかった。
もしかして、村ぐるみで俺を騙そうとしてる?
いや、こんなパンツ一丁の俺から取れる物なんて、ただのちんけなひのきぼうしかない。
この子、俺のひのきぼうを狙ってんのか、やっぱり俺のこと好きなのかな。
「あの、、、」
「信じてくれないと思うんですけど本当の話なんです」
「信じたいけど、そもそも村に魔物が入って来るっていうのは、聞いたことがない」
そうなのだ、村には魔物が入ってはこれない。
理由は未だに解明されていない。
まぁ多分、神のご加護的なもんだろう(小並感)
「どうしたら信じていただけますか?」
「実際に見て見ないと、わから、、、」
俺の言葉は、突如起きた爆音と爆風で遮られることになった。
あまりにも強い風で服が飛ばされそうになる。
あ!俺パンツしか履いてなかったから、飛ばされるもくそもないわ。
黒い巨影が村全体を包み込む。
天空から、何かが急降下してきている。
その影から作りだされるシルエットには何度か見覚えがある。
その影がだんだんと近くなる、遂にはその影の主は華麗に俺達のいる村へ着陸した。
深い赤に染まる体躯それと対照的に写る研ぎ澄まされた青い瞳。
際限なく広がっている翼には嫉妬すら抱く。
口からはみ出ている大きな牙。地面に深く突き刺さっている鋭い爪。
何故コイツがこんな所にいるんだ、、、
しかも、村の中に入ってきている。
目の前には確かにドラゴンがいた。
「ね、言いましたでしょう!」