ヤンデレロリコン先生の大好物はちょっとここでは言えない
ギャグ回。
ストックが尽きたので更新速度が落ちるかも。
例によって例の如く、補習。
教室に向かうと先生は何故だか弁当をむしゃむしゃと食っていた。横に杜山くんが倒れている所を見ると、この弁当は杜山くんの物らしい。っていうか、杜山くんが生きてて安心した。毎年わざわざバームクーヘンを買いに行くなんて面倒だし。
「ん、児囃さん」
無防備な先生をこのまま始末しようかとも考えたが、次の瞬間に私は弁当の中のある物を発見してしまった。
ちくわきゅうりだ……!!
ああっ、ちくわきゅうり! 愛しのちくわきゅうり! 妹の次の次の次に好きなちくわきゅうり……!!
海の恵みを練り混ぜて焼き上げられた、その穴に無限のロマンを秘めしちくわと、大地の恵みを受けた畑で育てられた、固くて力強いきゅうり。その二つの食材が合わさる事によって生まれる、壮大なる地球のハーモニー……っ!
「児囃さん、どうかなさいましたか?」
はっ、私とした事が我を忘れていたようだ。体中に残る感動の余韻を噛み締めつつ、私は先生の前に立ち、右手を差し出した。
「先生、ちくわきゅうり下さい」
「……は?」
「ほら、早く」
「えらく横柄ですね」
先生は箸でちくわきゅうりを優しくつまむと、私の顔の高さまで持ちあげた。
「ほら、あーん」
「先生、普通に右手に乗せて下さい」
「あーん」
「……」
優しくてイケメンな眼鏡の教師にあーんしてもらったので、お礼に箸を噛み砕いて差し上げた。
「おや……いいんですか、杜山さんの箸なのに」
「後で弁償しますし」
うん、美味しい! ちくわきゅうり最高!
「美味しそうに食べますね」
「そりゃあね! 最近野菜とか高いですし、きゅうりは夏野菜ですから手に入らないんですよ」
「……ふふ」
先生が笑う。
「ところで先生、どうして今、弁当食べてるんですか」
「あー……僕の担当クラスの女子生徒が昼食代を忘れてしまいましてね。まるごと弁当をあげてしまったんです」
「わぁ先生って意外と優しい」
補習常習犯からは弁当ぶん取ってるけどね。
「あらかさまな棒読みですね。じゃあ、これもお願い出来ますかね」
差し出されたのはプチトマト。
「僕の好物代わりです」
「代わり?」
「ええ、流石に糾子ちゃんを食べるだなんてそんな」
「今ので食べる気失せました」
確かに赤いし人間に見たてる事も出来なくはない。しかし私にはそんな趣味など無いので、ここで食べるのは人間(鬼の末裔)のプライドが許さない。っていうか今更だけど鬼の末裔だからって怪力以外には特に普通の人間と変わらないよな、私と糾子。
「食べて下さいよ。ビタミンCが豊富ですし、美容にいいですよ?」
「嫌です。自分で食べて下さい」
「それは無理ですよ……口内炎が出来てしまったので」
いい事聞いちゃった。
私はプチトマトをつまみあげると、音速で先生の口に叩き込んだ。一瞬遅れて強烈に歪んだ先生の顔へ、私はさっき買ってきた炭酸ドリンクをぶっかける。阿鼻叫喚。先生は断末魔を響かせ、死んだカメムシみたいにひっくり返って倒れた。
「ははっ、ざまみろ変態教師! そんなに糾子が食べたいなら、もっといっぱい買ってきますよ?」
「っぐ……このっ、生意気な……」
「今更だけど苦しそうな先生って素敵だよね! 糾子の次の次の次の次に好きだよ!」
「……そうですか」
先生の懐から顔を出す、本日のビックリドッキリ武器はモリだ。ほら、あの海で魚捕る道具。
「仕方ありませんね、そんなに僕が好きだというのなら、特別に思い切り丹精込めていたぶってから殺して差し上げましょう」
「ならば私も先生に地獄の苦しみを味わせるまで!」
さあ、今日もいつもの補習が始まる。
先生と一対一の、絶対に負けられない補習が。
「……ああ、俺の弁当が……ぐふっ」